社会・政治
兵庫県議死去で「百条委員会委員長」が明かした無念…N国・立花孝志氏の“デマ”と斎藤元彦知事の“我、関せず”に覚える強い憤り
斎藤元彦知事のパワハラ問題などの解明に取り組む兵庫県議会特別調査委員会(百条委員会)の元委員だった竹内英明前県議が、1月18日夜に亡くなった。自殺とみられている。
社会部記者はこう話す。
「竹内氏は立憲民主党系の『ひょうご県民連合』会派に所属し、百条委員会委員として地道に調査を重ねるなどし、仕事をこなしていました。ところが、『斎藤知事はハメられた』と主張する人たちからの攻撃対象にされ、2024年11月17日の兵庫県知事選で斎藤氏が再選された翌日の18日に辞職願を出し、議員を辞めました。
斎藤支援者と思われる人たちからの誹謗中傷に自身と家族がともに悩まされていたようです。竹内氏の訃報が伝えられた1月19日、NHKから国民を守る党党首の立花孝志氏はYouTubeチャンネルで『竹内元県会議員、明日逮捕される予定だったそうです。竹内元県議は明らかに犯罪をしていた可能性が高くて、警察に捕まるのがいやで自ら命を絶った』などと主張していました」
ただ、その立花氏の発言について、兵庫県警の村井紀之本部長は1月20日の県議会で「竹内元議員につきましては、被疑者として任意の調べをしたこともありませんし、ましてや逮捕するといったようなお話はまったくございません」と全否定。それを受け立花氏は動画を削除し、謝罪した。
命を絶った竹内氏とともに、立花氏や斎藤知事の支援者らからの“攻撃対象”になったのが、百条委員会の委員長を務める奥谷謙一県議(自民党会派)だ。
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立花氏は自らも立候補した県知事選期間中、奥谷氏の自宅兼事務所の前で街頭演説をおこない、「これ以上脅して、奥谷が自殺しても困るのでこれくらいにしておく」などと発言。これについて、奥谷氏は脅迫に当たるとして県警に被害届を提出した。
さらに、立花氏が「奥谷氏は悪人であり、告発文書を作成した県の元幹部が死亡した原因を隠蔽した」などとSNSに投稿したことを受け、2024年11月22日、奥谷氏は名誉を棄損されたとして立花氏を刑事告訴し、受理されている。
これらは現在、兵庫県警捜査2課が捜査を続けている。
奥谷氏に立花氏らの“デマ”について尋ねると、竹内氏の死に対する無念の思いを打ち明けた。
「ただただショックですし、竹内先生には申し訳ないですけど、悲しみを通り越して、怒りというか、悔しいという思いのほうが今は強くて、気持ちの整理がなんとなくできていない状況です。
立花氏の刑事告訴については、3、4回警察に出向き、『百条委員会のいろいろな疑惑が出ていますけど、このときはこうだった』という具合いに逐一、議事録とかを提出しながら、説明をさせていただきました。
1月22日にも県警に行くのですが、私自身の調書が取りまとめられることになるので、それと立花氏の言い分とを合わせて、検察官が起訴するかどうかの判断になっていくと思います。一応、骨子は作成していただいているみたいなので、それに間違いがないかなど最終的な確認をするということです」
あらためて、立花氏の言動についてこう語る。
「今、手続きが進んでいますので、あまり多くは話せませんが、今回も『竹内氏が逮捕される』などと嘘を言いました。そういうことは本当にやめてほしいし、今回の件は謝罪されましたけど、私のことも事実無根ですので、そこは混乱を起こしたことについて反省していただきたいなと思っています」(以下、断わりのない発言は奥谷氏)
斎藤知事の支援者と思われる人々からも、奥谷氏は中傷されていた。斎藤知事や立花氏を熱烈に支持するインターネット上の“ムーブメント”について、奥谷氏はどのように感じているのか。
「難しいのですが、冷静になってほしいというか……何を根拠に皆さんそういう発信をされているのかわかりませんけど、やっぱり事実を元にいろいろなことを発信してほしいと思います。
百条委員会についてもいろんな批判があって、たとえば、アンケートの発表の仕方とか、そういう批判というのはもちろん健全というか、あってしかるべきだと思うのですが、『奥谷も○○という女性と不倫をしている』だとか『親族の会社が県庁の仕事に関わっていて』とか、事実と違うでたらめなことを発信するのは本当にやめてほしいです。
特に竹内さんのことについては、私は生きているんで反論できますけど、竹内さんは反論もできないし、今、ご家族はすごくしんどい思いをされていると思うので、本当に亡くなられた方に鞭打つようなことはいっさいやめてほしいということは強く言いたいですね」
記者会見で「関係者への誹謗中傷はやめて、となぜ言わないのか」と聞かれた斎藤知事は、「メリットとしていい面もありますから、そういったところを気を付けながらSNSを使っていこうということは私は大事だということは申しあげています」と言い、支援者たちにそうしたメッセージを出そうとしていない。
こうした斎藤知事の対応についてはどう捉えているのか。
「知事自身もいろいろな誹謗中傷で苦しんだというところはもちろんあるかと思いますが、今、兵庫県知事にもう一度就任されて、兵庫のリーダーという立場ですので、やはりこういう状況を鑑みて、斎藤知事から“斎藤派”と呼ばれる人たちと“反斎藤派”と呼ばれる人たちのどちらにも『そういった誹謗中傷はやめましょう』ということは、強く言うべきだと思います。
あと気になっているのが、斎藤知事は今後、SNSにまつわる条例を制定すると言う一方で、『立花さんの発信を見ていない』、『どういった誹謗中傷があったか存じていない』などとおっしゃっていること。
我々、政治家は現場の状況などを見て、条例を作ったり、政策を作ったりというのが仕事だと思うので、斎藤知事が現状を何も把握せずに条例を制定すると話していることに対して、『そんなことで本当に条例が作れるのか』と思います。
やはり今、兵庫やSNS上でどういう問題があって、どういう誹謗中傷が飛び交っているのかということをしっかり知事自身も把握しないと本当に県民の皆さんの安心、安全を守れるような条例を私は作れないと思うので、そういう意味でも、まず現状をしっかり把握して、そして、お互いにやめましょうと、冷静になりましょうというメッセージを発するべきだと思います」
百条委員会は現在も継続している。
「1月27日に委員会を開くにあたり、事務局と調整しているところですが、委員長として一定程度の私案を示し、それについていろんな委員から意見をもらって、報告書をまとめていくという形になろうかと思います。
委員さんの間でも意見の相違はあり、もちろん議論を重ねていきますが、意見が平行線でまとまらなかったときはまた、考えないといけないなと思っています。ただ、いずれにしても年度内には結論を出したい、報告書をまとめたいと思っています」
いまだに混乱が収まらない兵庫県政。県政関係者そして県民に平穏が訪れる日はいつになるのだろうか。
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