石破茂首相「楽しい日本」施政方針に永田町あきれ…“フジテレビ的センス” 指摘する声も

 

　1月24日、通常国会が召集され、石破茂首相は衆参両院の本会議で施政方針演説に臨んだ。そのなかで注目を集めているキーワードがある。「楽しい日本」だ。

 

　石破首相は演説のなかで「楽しい日本」について、「新しい日本を創るうえで、『sustainable（サステナブル）』で『independent（インディペンデント）』であること、すなわち持続可能で自立することを重視しなければなりません。そのため、価値観の転換が必要だと考えております」と前置きし、こう話した。

 

「故・堺屋太一先生の著書によれば、わが国は、明治維新の中央集権国家体制において、『強い日本』を目指し、戦後の復興や高度経済成長の下で『豊かな日本』を目指しました。そして、これからは『楽しい日本』を目指すべきだと述べられております」

 

　堺屋氏の考えに共感するという石破首相。そして、「楽しい日本」の説明は、こうだった。

 

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「『楽しい日本』とは、すべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、『今日より明日はよくなる』と実感できる。多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い、自己実現を図っていける。そうした活力のある国家です。

 

　外交・安全保障体制、防災立国、感染症対策など危機管理を確立し、賃上げと投資がけん引する成長型経済を実現するとともに、人財尊重を基軸として、楽しさを実現できる、バランスの取れた国づくりを目指します」

 

　政治部記者がこう解説する。

 

「『楽しい日本』の元ネタは、2019年に出版された元経済企画庁長官で作家、経済評論家の堺屋太一氏の著書『三度目の日本 幕末、敗戦、平成を越えて』（祥伝社新書）の記述です。

 

　堺屋氏は、同書のなかで、過去の『強い日本』『豊かな日本』の次にこれからの日本が目指すべきステージを『楽しい日本』と位置づけ、提唱していました。

 

　石破氏はこの『楽しい日本』を実現するための政策の核心となるものを『地方創生2.0』として、『令和の日本列島改造』を強力に進めると宣言しました。都市も地方もその魅力を高め、一極集中を是正し、多極分散型の経済社会を構築していくというものです。

 

　堺屋氏は通商産業省時代（現・経済産業省）、1970年の大阪万博の企画・実施に携わり、沖縄開発庁（現・沖縄振興局）へ出向した際は、沖縄海洋博（1975〜1976年）にも携わりました。地方発の国際プロジェクト実現に貢献したこともあり、地方創生を唱える石破氏は共感する点が多いのだと思います」

 

　ところが、この演説に永田町からは苦言が上がっている。

 

　まず、最新の共同通信世論調査（1月25・26日）で、政党支持率が自民党29.6％に次ぐ14.4％となった国民民主党の榛葉賀津也幹事長だ。

 

　24日の国民民主党の公式YouTubeチャンネル「Go!Go!こくみんライブ」の生配信で、

 

「今日も所信表明演説で『楽しい日本』って、言ったよね。国民のみなさん、楽しみたいよ。楽しみたいほど、いま生活、楽じゃないし、もっと苦しんでいるんですよ。

 

　言葉で『楽しい日本』とか『令和の日本列島改造』じゃなくて、地域を大事にしたい、地方を大切にしたいってことを言いたいんでしょう、石破総理は。だったら減税して、ガソリン税を下げてよって話」

 

　と話し、同党の伊藤孝恵参院議員もこう続けた。

 

「この世相を見ながら『楽しい日本』を連発する、こういった国務大臣の姿って、かなり空虚でしたね、今日ね」

 

　また、自民党のベテラン秘書は、

 

「堺屋さんの言葉ではなくて、なぜ自分の言葉で語れないのか。一国の総理大臣として、なぜそういう引用をするのかと党内ではあきれた声があがっています。

 

　心に響かなかったという声も出ています。言っている内容については個人個人の判断があり、受け止め方はさまざまだと思いますが、演説の中身について、石破さんの心がこもっていないと感じました。話し方は下手でもいいから、もっと心を込めてと」

 

　と苦言を呈する。

 

　X上でもこの「楽しい日本」については、《楽しい…楽しいより生活を助けて！》《楽しいじゃなく、強く豊かじゃないと楽しめるものも楽しめない》《苦しんでる日本国民を、楽しんでる人に見える》といった批判もあがっている。

 

　前出の記者が言う。

 

「1981年に生まれた『楽しくなければテレビじゃない』というフジテレビのスローガンを思い出し、石破総理の演説を重ね合わせ、Xでは《「楽しい日本」「楽しいフジテレビ」“楽しい”ってなんだ？》と石破氏のセンスを疑う声も出ています。

 

　国民が日々の生活に苦しんでいるなか、“楽しい” を堂々と掲げる能天気さにはフジテレビ的センスも漂っています」

 

　すべての人が「楽しい日本」と思える日はやってくるのだろうか。