社会・政治
公明党・斉藤代表「自公連立」解消匂わせの裏を読む…集票パワー減少「起死回生の一手」は野党連立政権の立ち上げ
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公明党の斉藤鉄夫代表(写真・JMPA)
公明党・斉藤鉄夫代表が放った発言が永田町で波紋を広げている。1月29日、朝日新聞の単独インタビューで、斉藤代表は以下のように述べた。
「『何があっても自公連立は崩しません』ということはない。我が党が譲れないもので意見が対立し、合意が得られなかった場合に連立離脱というのはあり得る。そういう緊張感をもって自民もやってくれていると思うし、我々も緊張感をもってやっている」
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あくまで可能性について言及したとはいえ、約25年間続いている自民党と公明党の連立体制が解消すれば、政界全体が大激震となるのは間違いない。
かつては「全国に800万票を持つ」と評された公明党。ピークの2005年の衆院選では、全国で898万票を獲得。しかし、その後は徐々に票を減らし、2022年の参院選は618万票。2024年10月の衆院選ではついに600万票を割り、596万票まで集票パワーが落ちている。
「2023年11月に池田大作名誉会長が逝去したことが、集票力の大きな低下原因のひとつです。また、公明党の支持母体である創価学会の高齢化も深刻で、今後も党勢が復活する見通しは描けていません。
2024年9月には、公明党を15年率いてきた山口那津男代表が退任。石井啓一氏が代表を引き継ぐも、就任直後の衆院選で落選するという散々な結果となりました。
代わって就任したのが斉藤代表ですが、すでに退任した山口氏とほぼ同い年で、いま73歳なんです。公明党は “顔” になる若い政治家が見当たらないという大きな問題を抱えています」(政治担当記者)
世代交代が喫緊の課題となっている公明党だが、今回の斉藤代表の「連立解消」匂わせは、いったいどのような意図があるのか。元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏が、その背景を深読みする。
「斉藤代表は、『国民民主党が要求している(所得税の壁)178万円への引き上げは厳しいが、自民党案の123万円よりさらに引き上げるのは問題ない。維新の高校無償化の方向性は理解できるので建設的に議論したい』という意味の発言をしています。これは野党、とくに維新と自民党との “仲介役” を買って出ようということでしょうね。
斉藤代表は、もともと各党との人脈に強みがあるんです。1994年の政界再編で新進党に加わっていますが、新進党には石破茂首相も立憲民主党の野田佳彦代表もいたんです。
維新の前原誠司共同代表とも密接な関係を築いてきましたし、都政では連合や国民民主党とともに、小池百合子都知事を支えてきました。
このような各党に広がる人脈を生かして、当面は自民党と野党各党のつなぎ役として公明党の存在感を増してゆくのが、斉藤代表の狙いだと言えます」(以下、「」内は鮫島氏)
そして、この人脈が政局につながってゆく可能性があるという。引き金となるのが、選択的夫婦別姓問題だ。
「国会終盤の最大の焦点と言われているのが選択的夫婦別姓問題です。主要野党も公明党も賛成の立場ですが、自民党では高市早苗氏をはじめ反対論が非常に根強い。
斉藤代表は、今回の朝日のインタビューで、『選択的夫婦別姓に自民党が賛成でまとまらなければ連立離脱もあり得るのか』と聞かれ、『あり得る』と答えたのです。連立離脱をちらつかせて、自民党に公明党の主張を飲ませようとしていると解釈できます」
最終的に、自民党が公明党の意見を突っぱねた場合、袂をわかつことはあるのだろうか?
「折衷案が見つからなかった場合、与党連立にひびが入るでしょう。それがトリガーとなって、7月の参院選で自民党が惨敗でもしたら、一挙に離脱の可能性があります。
ただ、公明党としても与党の座をみすみす手放すことはないでしょう。その場合は、新たに野党連立政権を立ち上げるかもしれません。このとき威力を発揮するのが、各党との人脈です。
もちろん、野党が簡単にまとまるとは考えにくいので、いまのところ実現性は50%もないでしょう。しかし、落ちてきたとはいえ、公明党は依然として500万、600万の組織票を持っています。
その動向が政局全体の行方を左右することは間違いありません。それは自民党の力が弱まっていることの裏返しでもあります」
公明党の手練手管に、石破首相が頭を悩ませているのは間違いなさそうだ。