社会・政治
公選法違反?『マネーの虎』南原竜樹氏「ランチ代おごります」ポストが物議…背景に日本維新の会の “教育不足”

日本維新の会から出馬予定の南原竜樹氏(写真・時事通信)
「ノーマネーでフィニッシュです」
ビジネスプランを携え、“虎” である社長たちの前で熱心にプレゼンする志願者たち。しかし、“虎” からは容赦のない言葉を投げつけられるーー。
2000年代前半に、熱狂的な支持を集めたリアリティ番組『¥マネーの虎』(日本テレビ系)。同番組に “虎” として出演していた南原竜樹氏は、現在、まったく別のフィールドに挑戦しようとしている。
【関連記事:「あまりに早すぎる」がん公表から1カ月半『令和の虎』岩井良明氏が死去…目標の「生前葬」叶わず無念】
「7月に予定されている参院選に、日本維新の会から全国比例の公認候補として立候補が決まっているんです。“虎” として出演していた当時は、オートトレーティングルフトジャパン株式会社の社長として、自動車の輸入販売業者として活躍していました。
ただ、正規輸入元のひとつ、MGローバーが破綻した影響で、2005年に20億円の特別損失を出し、従業員をほぼ全員解雇するなど事業を縮小することになりました。その後、事業の多角化などをおこうなうことで、業績をみごとV字回復させました。
現在は、事業経営からは一線を引き、経営者に向けた助言やコンサルタントをメインに活動しています。
大声をあげるなど過激な社長が多かった『¥マネーの虎』のなかでは、いつも落ち着いていて理知的なタイプ。政治家としても確かに活躍できそうですね」(芸能記者)
実業家としての経験を生かし、低迷する日本そのものを “V字回復” させてくれるなら、これ幸い。ところが、ある致命的な問題が浮上した。
発端となったのは、南原氏が2月17日に自身のXに投稿した内容だ。南原氏は、
《全員のランチ代奢ります フォロー、いいね、リポストしてくれた中から当選率1%で抽選します 詳細はコメント欄に書いてあります》
と投稿。さらにコメント欄では、2月24日まで応募期間があり、上限参加人数は3人と案内されており、2月26日に会員制の東京アメリカンクラブで昼食会を開催すると記されていた。参加者の費用は交通費のみとなっている。
「要するに、フォロワー数を増やすためのSNSの典型的なマーケティング手法ですが、南原さんがこれを実施した場合、公職選挙法違反に当たる可能性があります。
というのも、“ランチ代奢ります” と書いてあるとおり、南原さんが参加者の食事代を負担するつもりだったのは明らかですが、公職選挙法では政治家による寄付行為を禁じています。
最近でも、鈴木馨祐法務大臣が職員に配った月餅が、寄付行為に当たるのでは、との指摘を受けたばかりです。鈴木大臣は先の総選挙で神奈川7区から立候補したものの、選挙区で敗れました。
そのため、重複立候補していた比例南関東ブロック(千葉、神奈川、山梨)から選出されましたが、もし月餅を受け取った職員のなかにこの3県に居住する者がいた場合、問題になりますね」(政治ジャーナリスト)
だが、南原氏はあくまで選挙に出馬することを宣言しているだけ。それでも “政治家” として公職選挙法に問われる可能性があるのか。総務省自治行政局選挙課に尋ねたところ、担当者はこう語る。
「公職選挙法199条では、政治家は時期を問わず、どのような理由をもってしても、当該の選挙区内にある者に対する寄付を厳しく禁止すると規定しています。
また、現職の政治家でなくても、候補者になろうとする者もこれに含まれます。国政政党の支部長、公認候補は政治家に含まれます」
と、本誌に回答した。そして、南原氏の場合、全国比例の公認候補者であるため、当然、当該の選挙区とは全国・全国民になる。抽選で選ばれた人間がどこに住んでいようと、有権者である場合、禁じられた寄付行為に当たる可能性があるとわけだ。
「当然、南原氏が投稿した直後から『公選法違反になるのではないか』という指摘が相次ぎました。これを受け、南原氏は投稿を削除しています」(同)
なぜ公選法違反となりかねないポストをおこなったのか。南原氏の事務所に問い合わせたところ、
「確かに、選挙違反になる可能性があるという指摘が外部からあり、削除をしました。これまで選挙違反になる寄付について、講習なども含めて、党からの注意はありませんでした。ランチ会を開くかは現在、未定です。お騒がせをしました」(事務所担当者)
と、公選法に無知だったことを明かした。政治ジャーナリストの安積明子氏が、こうため息をつく。
「南原さんのケースは、もちろん買収目的ということではなかったと思います。それでもこうして責任追及が候補者本人に行くわけです。政治の世界と一般社会は常識がまったく違います。
政治とカネの問題では有権者の目が厳しくなっており、政治資金はもちろん、お金の使い方全般について、政党は新人候補者に厳しく教育する必要があると思います。南原さんについては、日本維新の会が無責任だったと思いますね」
実際、候補者の “質の低下” は深刻だ。安積氏が続ける。
「日本維新の会が、一時期の勢いからここまで落ちたのも、候補者や議員の質が低いことが露呈したからです。国政選挙はまだしも、地方選挙なんて、理念もなにもなく議員報酬だけが目当てとしか思えないような人物がぞろぞろ応募してくる状況です。
その点、やはり自民党はしっかりしていて、新人の議員にカネの問題を教えるベテランの事務職員がそれなりにいるわけです。日本維新の会は、人材がいないにしても、もう少し教育システムを整えるべきでしょう」
このまま “フィニッシュ” になりかねないーー。