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「参院選が戦えぬ」予算案成立で本格化する自民党“石破おろし”識者が読む「岸田前首相再登板」のシナリオ

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記事投稿日:2025.02.27 18:13 最終更新日:2025.02.27 18:13
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
「参院選が戦えぬ」予算案成立で本格化する自民党“石破おろし”識者が読む「岸田前首相再登板」のシナリオ

2月25日、2025年度予算案修正をめぐる合意文書に署名した(左から)日本維新の会の吉村洋文代表、自民党総裁の石破茂首相、公明党の斉藤鉄夫代表(写真・長谷川 新)

 

 2月25日、自民、公明両党と日本維新の会の3党首は、維新が主張する「高校無償化」などの実施に向けて、2025年度当初予算案の修正で合意した。これで予算案の成立が確実となった。

 

石破茂首相は最初のヤマ場を乗り越えたわけですが、今後も“試練”は続きます。自民党内で『石破首相では7月の参院選は戦えない』との声が大勢を占めていることに変わりはありません。予算成立までは、石破首相を野党の追及の矢面に立たせ、成立後に首相を差し替えて、新しい顔で7月の参院選に挑むというのが反主流派の戦略です。予算成立が確実となり、これから“石破おろし“が加速することになるでしょう」(政治担当記者)

 

 

 気になるのは“ポスト石破”の行方だ。候補として必ず名の上がるのが、林芳正、茂木敏充、高市早苗の各氏だが……。

 

「林氏は石破内閣の主流派で、安定感が評価されていますが、人気や知名度はまだまだです。反主流派の茂木氏も、意欲は十分ですが、とにかく人気がありません。高市氏は、右寄りの姿勢が党内で“高市アレルギー”を生んでいるうえ、頼みの保守派から自民党を離れる議員が現れ『高市』一本でまとまらなくなっています。いずれも、7月の参院選の顔としては物足りないでしょう」(同前)

 

 そんななかで、意外な人物が注目されている。元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏があげるのは、岸田文雄前首相の名だ。

 

「岸田氏が再登板を狙っているのは間違いないですね。『資産運用立国』『アジア・ゼロエミッション共同体』など、さまざまな議員連盟や勉強会を立ち上げ、解散したはずの旧岸田派の再結集の動きがあるのも“意欲”のあらわれです。が、私が注目しているのは、岸田氏がYouTubeに力を入れていることです」

 

 岸田氏は「今日のふみお」というYouTube動画を配信している。地元のクリスマス会や餅つき大会への参加など、日常の活動報告がおもな内容だが、政治や経済のテーマも頻繁に取り上げられている。

 

「『増税メガネ?』というタイトルで、自分が首相時代、批判に使われたワードをわざわざ持ち出して、いかに岸田内閣の経済政策が間違っていなかったと自賛していますが、これは明らかに“バズり”を狙ったものでしょう。実際、再生回数が100万回を超える人気動画となっています。

 

 また、ウクライナを電撃訪問したときの裏話を、側近と呼ばれた元内閣官房副長官の木原誠二氏と語り合ったりもしています。最近、岸田氏はマスコミにもよく出ていますが、出演した際の動画を切り取って、自分のYouTubeに投稿したりもしています」(鮫島氏・以下同)

 

 やる気満々の岸田氏が、人気の回復を目指し、SNSを利用しているというのだ。

 

「総裁選で石破氏を応援し、石破政権誕生の立役者でもある岸田氏は、いまやキングメーカーにもっとも近い人物です。実際、麻生太郎氏や菅義偉(よしひで)氏などが、高齢や健康不安説を取りざたされるなか、“元首相”としてキングメーカーになれそうな人物は岸田氏以外にあまり見当たりません。

 

 しかし、岸田氏はそれだけでは物足りないようです。内閣支持率が上がらないまま、首相を辞めざるを得なくなったことが、よっぽど腹立たしかったんでしょう。本人は『オレにはまだチャンスがある』と思っているはずです。そこで、人気を回復するため、YouTubeに本腰を入れ始めたんですよ」

 

 岸田氏の再登板。それが決して荒唐無稽ではない証として、鮫島氏は“石破おろし”の急先鋒である麻生氏の思惑を、こう読む。

 

「“石破おろし”のためには、アンチ石破の反主流派を束ねる必要がありますが、茂木氏や高市氏ではもの足りない、という思いが、麻生氏にはあるのではないでしょうか。そこで麻生氏が『岸田氏なら主流派に対抗できるんじゃないか』と考えたとしても、不思議ではありません。そもそも石破首相は、総裁選の最後に旧岸田派の票が乗ったことで勝てたわけですから、その票を石破首相から引きはがせば、総裁選に勝てるという戦略です」

 

 一方、主流派の候補として名のあがる林氏はどうか。

 

「林氏が出れば、総裁選は『林VS.高市VS.茂木』という構図になって、林氏が勝つ確率が高いでしょうが、麻生氏にとっては最悪のシナリオです。そうなれば、宏池会(旧岸田派)は事実上、林氏のものになりますから、岸田氏にとってもおもしろくないはずです。宏池会は解散しましたが、岸田氏がいまもグループを仕切っています。林氏が総裁選に出たいと言っても、岸田氏が『うん』と言わなければ出ることはできないのです。

 

 岸田氏が林氏を抑え、自ら総裁選に立つことによって、麻生氏と茂木氏の間で、旧岸田派、麻生派、旧茂木派と、かつて岸田内閣を支えた3派連合が復活する可能性があります。麻生氏の狙いはそこにあると考えられます。岸田氏と麻生氏が、それぞれ双方の思惑で手を組むのです。

 

 問題は、1回、首相の座を降りた岸田氏で参院選を戦えるのかということですが、岸田氏は『石破首相よりはましだ』と考えているのではないでしょうか」

 

 さらに、鮫島氏はこんな“ウルトラC”の可能性を指摘する。

 

「ずばり、玉木雄一郎首相の誕生です。自民党の総裁候補は、いずれも選挙の顔としてはもの足りません。自公で過半数を割っている状況に変わりはなく、このままでは参院選に勝てない自民党は、当然、野党との連立を視野に入れているはずです。その相手は、今回、予算案で合意した日本維新の会ではなく、国民民主党だと思います。国民民主は『年収の壁』協議で自公と決裂しましたが、石破政権が倒れれば、“ポスト石破”が誰になっても、石破首相の政策に縛られずに済むわけです。

 

 とくに、茂木氏が総裁になれば、麻生-茂木ラインで国民民主を連立に引き込むというシナリオも描けます。そもそも、麻生氏は国民民主の榛葉(しんば)賀津也幹事長と関係が深いといわれています。そして、3党連立内閣で『年収の壁』を178万円にすると公約に掲げ、首班指名で玉木首相を誕生させるのです。国民民主も、玉木首相が実現するなら連立に乗るでしょう。それで参院選、場合によっては衆参ダブル選に臨めば、圧勝する可能性が高いと思います。いちおう警戒しておいたほうがいいシナリオですね」

 

 少数与党である限り、そして石破内閣の低支持率が続く限り、いまの自民党には何があってもおかしくないということだ。

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