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コメ高騰で出回る「転売米」に“コクゾウムシ発生”の恐怖…識者が語る「味と品質への心配」「価格低下の時期」
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埼玉県内に保管されている備蓄米にははっきりとわかる表示がなされている(写真・共同通信)
2月28日、総務省が、東京都区部の2月の小売物価統計で、コシヒカリ(5kg)の価格が前月より4%高い4363円になったと発表した。
「農林水産省が2月7日、備蓄米の放出を決定し、14日にはその量が21万tになることを発表しました。今回の調査は、2月12日から14日の小売店での価格になるため、備蓄米放出が決まった後も、市場のコメの価格は下がっていないことになります。今後、入札などを経て、3月末ごろに備蓄米がスーパーなどの店頭に並ぶと見られています」(社会部記者)
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コメの価格高騰が収束する気配が見られないなか、インターネット上ではフリーマーケットサイトなどでの“転売米”の存在について、指摘が出始めている。
フリマサイトでは、「訳あり」などと称した30kgのコメが18000円で販売されるなどが見られている。ただ、転売されたコメに関して、気になる指摘もある。
「2月下旬、SNSで『転売ヤーから買うコメはコクゾウムシ発生のリスクがある』といった投稿が拡散されたのです。転売業者の管理がきちんとされていないため、害虫が発生する恐れがあるというものでした。コクゾウムシがコメにびっしりついた写真もアップされ、注目を集めています」(同前)
こうした投稿を受けて、Xでは
《素人が管理する米とか怖すぎでしょう…コクゾウムシ湧いてそう》
《コクゾウムシよりカビのが身体に悪い影響あるから、どっちにしても転売ヤーからは買ってはいけない》
《転売ヤーの管理環境にもよるんだろうけど、彼らは暖かくなるにつれてコクゾウムシと暮らすリスクが上がるんでは……》
など、転売米の品質に疑問を抱く声が聞こえている。
転売されたコメの味や品質に関して、農業ジャーナリストの松平尚也氏は、こんな疑問を呈する。
「通常、市場で販売されるコメは、産地、品種、産年などの証明を受ける『農産物検査法』の検査を受け、品質が保証されています。しかし、転売されるコメのなかには、検査を受けていないものが出品される事例があります。転売業者が農家から買い入れする際、きちんと説明を受けずに未検査のコメを購入し、異物が混入している恐れもあります」
3月になり、少しずつ暖かい日も増えていく。こうした環境下で、転売米ではコクゾウムシが繁殖する恐れがあるという。
「コクゾウムシは、コメの粒のなかに卵を産みつけるため、精米では除去できません。20℃以上の気温になると、約1カ月でふ化するため、通常、コメは10〜15℃以下になるよう冷蔵庫で保管し、虫がわかない対策をしています。その点、冷蔵庫を持っていない転売業者のコメは、コクゾウムシが生まれやすくなります。また、気温によってコメも劣化するため、味にも影響すると思われます」(松平氏)
備蓄米は3月下旬から店頭に並ぶと見られている。備蓄米が販売されることで、すぐにコメの価格は下がるのだろうか。
「備蓄米は3月に店頭に並んで、4月、5月とコメ価格が段階的に下がっていくと思われます。コメ価格が落ち着くには、6月にどれだけコメの在庫が残っているかがポイントになるでしょう。コメは9月以降にしか収穫できないため、7月、8月は新米が出回る前の『端境(はざかい)期』にあたります。6月末にコメの在庫が残っていなければ、転売業者は減らないでしょうし、コメを保管できる倉庫を持った転売業者も出てくるかもしれません」(松平氏)
安易な気持ちで、品質の保証されていない転売米に手を出すのは避けたほうがよさそうだ。