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ABEMA「女性にAED使ったら性被害で訴えられた」報道を削除…出演した防災アドバイザーが明かす番組への“違和感”

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記事投稿日:2025.03.03 15:10 最終更新日:2025.03.03 15:10
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
ABEMA「女性にAED使ったら性被害で訴えられた」報道を削除…出演した防災アドバイザーが明かす番組への“違和感”

謝罪する平石直之アナウンサー(『ABEMA Prime』より)

 

 学校や駅などの公共施設では、いまや当たり前に見かけるようになったAED(自動体外式除細動器)。誰かが心停止をした際、この器械を使用することで自動的に心電図を解析し、電気を流すことで、心臓を再び正常に機能させられるようになる優れものだ。

 

 緊急時には、文字どおり命を救うことになるAEDだが、ネット上では使用を避けたくなるようなある言説が流れている。

 

「AEDを使用する際は、パッドを肌に直接、貼りつける必要があるため、服を一部、脱がせる必要があります。こうした事情から、SNSでは『AEDで助けた女性から強制わいせつの疑いで被害届が出された』と主張する投稿が流れているのです。

 

 

 さらに、1月20日に放送されたインターネット報道番組ABEMA Prime』で、『「女性にAEDを使わないで」男性が恐れる“社会的制裁”とは?分断の向かう先は?』と題して、この投稿が取り上げられました。

 

 番組では、この投稿を体験したという男性を取材。男性によると、路上にひとりで倒れていた女性を発見し、AEDを装着して救急に連絡し、搬送先まで付き添い、名刺を看護婦に渡して帰宅したところ、1週間後に女性から性被害の訴えがあったとして事情聴取を受けたとのことです。被害届は女性の親が出していたことから、女性が親を説得して被害届が取り下げられ、その後、和解したというものでした」(社会部記者)

 

 だが番組終了後、男性の“体験談”に疑問の声が続々と寄せられる事態となった。番組の出演者のひとりでもある「RESCUE HOUSE」代表で消防防災アドバイザーの兼平豪氏もまた“違和感”を抱いていたという。

 

「心肺停止状態の女性が、現場にいた民間の方が装着したAEDによって心拍を再開したというなら、これだけで市長表彰や消防長表彰されるぐらいの大ニュースです。おそらく、全国で報じられる価値のあるニュースなんですよ。SNSでこのことが拡散されたころから、じつは、番組出演前に救急救命をする医療関係者に、こうした事実はあるのかと問い合わせました。しかし、誰も知らないし、聞いたことがないというんです。大阪府警にも、AEDを装着したことで性加害の被害届が出た事案はあるかと尋ねました。しかし、そうした事案はないということでした」

 

 番組のプロデューサーも、無責任な回答に終始していたという。

 

「番組から出演依頼があったときに、警察の取り調べを受けたと主張する男性に取材をしていると、担当プロデュサーから聞いていました。ただ、男性の話以外で、なにか事実関係の裏づけは取っているのか尋ねたのですが、『取材班ではないので詳しくはわからない』と言われてしまいました」(兼平氏)

 

 男性の証言に対し疑問の声が増すなか、男性は何ら釈明のないままXのアカウントを鍵アカウントとし、過去のポストを閲覧できないようにしてしまった。

 

「そこで、ABEMAサイドの取材に対しても、疑惑の目が向けられるようになりました。ABEMAは男性の証言が本当なのか、事件発生の日時や、警察への確認など、いわゆる“裏どり”をおこなっていたのかという点です。男性の体験談の影響で、実際に女性へのAEDの使用をはばかるような風潮が生まれた場合、まさに命が失われる可能性があります」(社会部記者)

 

 当初はメディアの取材に対し「番組制作の過程については、回答を差し控えさせていただきます」と“知らぬ存ぜぬ”の姿勢を貫いていたABEMAだったが、本誌が質問状を送付した翌日、公式ホームページを更新し、番組の取材不足を認めた。

 

 番組の発表によると、

 

「番組としては、投稿した男性に事前にお話をうかがったうえで紹介しておりましたが、10年ほど前の事案につき、事実関係の詳細の確認が十分とはいえないまま放送してしまいました。なお、当局への取材を含め事実関係について再取材を進めており、今後、番組で適切に対応する方針です」

 

 と釈明。さらに、番組はAEDの使用についての注意点などを紹介することで、利用の促進を目的としていたと強調した。「下着を外さずに救命する方法の専門家による実演や、『AEDで女性を助けても、事件になる可能性は低い』という弁護士の見解を紹介させていただいております」

 

 とつけ加えた。さらに、同日の番組の冒頭でもほぼ同じ内容のコメントを、番組の司会であるテレビ朝日の平石直之アナウンサーが読み上げた。加えて、現状では、男性の証言について事実確認が困難だと結論したため、それにともない、アーカイブ配信分を削除したことも明らかにした。

 

 兼平氏も、番組から謝罪を受けたという。

 

「番組の担当者から『ご迷惑をおかけしました』と連絡をいただきましたよ。私としては、あらためて証言をした男性の方にいきさつを丁寧に説明してほしいと思います。

 

 疑問を持ちつつも、私が番組に出演したのは、AEDの使用について『一歩踏み出す勇気を持ってほしい』と主張するためでした。実際、救急車が現場に到着するまでの時間は年々、伸びています。2022年の場合、平均が10.3分でした。心停止から1分経過するごとに生存率は7〜10%も低下します。つまり、10分たてば、ほぼゼロになってしまいます。

 

 現場に居合わせた人がAEDを使用した場合の、1カ月後の生存率は54.2%もあります。一方、救急隊の到着を待った場合は7.3%。女性に対して救命措置をすることにリスクを感じるなら、居合わせた人に声をかけるなどすれば、目撃者も増えるし、救命措置の担い手も増えます。とにかく、一刻も早く声を上げて、まわりに人を集めてほしいです。

 

 救命措置をおこなったことで、刑事事件の被告になったなんていう事実は、知る限りありません。“架空かもしれないリスク”のために、人命が損なわれる国になってしまうのはおかしいですよ。騒動の元となったポストをおこなった男性には、きちんと説明してほしいと思います」(兼平氏)

 

 人命を最優先という考えが、間違いだと思われてはならない。

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