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【独自算出】東京の53自治体「災害に強い地盤」ランキング…武蔵野と三鷹「隣接2市」で大差がついたワケとは?

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記事投稿日:2025.03.08 06:00 最終更新日:2025.03.08 06:00
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
【独自算出】東京の53自治体「災害に強い地盤」ランキング…武蔵野と三鷹「隣接2市」で大差がついたワケとは?

南口に出れば三鷹市。北口に出れば武蔵野市になるJR三鷹駅(写真・AC)

 

 2011年3月11日に発生した東日本大震災から、丸14年が経とうとしている。

 

 震災による死者・行方不明者は2万2325人(2024年3月1日現在)。40万戸を超える建築物が全壊、または半壊するという、日本国内史上、類をみない被害をもたらした。

 

 そんな災害のリスクと背中合わせの日常生活のなか、家選びは、その「土地」から選びたくなるものだ。

 

 

 そこで本誌は、住宅地盤の調査・解析・補償などを手がける「地盤ネット株式会社(以下、地盤ネット)」の協力により、東京都の62市区町村のうち、島しょ部2町7村を除く53市区町村のなかでのランキングを作成した。

 

 地盤ネットは、住所を入力するだけで地盤や災害の影響に関するレポートを閲覧が可能な「地盤カルテ」のサービスを無料提供している。そこで、今回は同社が作成してきた「地盤データ」をもとに、地域別の「災害リスク」をスコア化。

 

 スコアは、地盤ネットの独自基準によるものだが、5項目の地盤・災害リスク(地震による揺れやすさ、液状化リスク、土砂災害リスク、浸水リスク、津波リスク)の評価スコアを点数化している。全国平均スコアは、70.3点だという。

 

「今回は、区・市役所の所在地のほかに、面積に合わせて所在地のバランスを見ながら、駅や病院、学校などの住所を指定して、平均値としてスコア化しました。そのため、その地域の平均値とうたっても問題ないという認識です」(地盤ネット広報)

 

 同社の「地盤インスペクター(R)」で「国連GCNJ DRR(防災減災)分科会」共同幹事の齋藤一彦氏が解説する。

 

「当社では、国土地理院や国土交通省などのデータをもとにシステムを作成し、データ化しています。まず、災害リスクの低いエリアですが、地盤の固さが、関係する要素のひとつとしてあります。ざっくりした考え方でいうと、台地は安全で低地は危ないというのが、前提としてあります」(齋藤氏、以下同)

 

 災害リスクが低いエリアには、共通点があるという。

 

「共通しているのは、やはり『武蔵野台地(関東平野のある荒川・多摩川・京浜東北線・入間川に挟まれた面積700平方kmの地域)』だという点です。ランキング上位に入っていなくても、武蔵野台地のところは比較的、安全。たとえば、リスクの高いエリアでも、武蔵野台地が入っている区もありますが、台地側はいいものの、そのほかで圧倒的に低地が多いため、残念ながら区としてのランキングだと下がっている形です。また、台地では土砂災害リスク、浸水リスク、津波リスクが比較的、低い数値になっています」

 

 台地が比較的安全で、低地が危ないとされる理由について、こう話す。

 

「『縄文海進(1万9000年前から始まった、温暖化に伴う海水準上昇。日本では縄文時代の始まり=1万6000年前ごろで、海水準は約120mにおよんだ)』という言葉があるのですが、要は縄文時代のある時期、いまより海水面が高くなり、現在の陸地の一部も海のなかにあったということです。そのため現在は陸地でも、その昔、海だったという場所が多いのです。

 

 逆にいえば、縄文海進のとき、海に浸からない高さがあった、縄文時代の人々が住んでいた場所は、高台ということになります。そうするとやはり、東京湾の近くはだいたい海のなかだったわけで、軟弱な地盤であることが多いです。また、江戸時代から埋め立てをけっこうしてきている影響で、災害に弱いこともあります。

 

 ほかにも、荒川や多摩川といった大きい河川は、これまでに何回も“川筋”を変えているんです。つまり、大きな川の近くでは、意外にも昔は川が通っていたところに家が建っている、ということも多いんです。そういった地域もスコアは低くなっていますね」

 

 もちろん、台地でも「谷」の部分は浸水リスクが高くなる。そういったように、同じような地域でもスコアに大きな差が出た例が、今回のランキングでも見受けられた。

 

 まず代表的なのは、武蔵野市(6位、スコア・81.66)と三鷹市(25位、スコア・70.71)という、隣接する2つの市だろう。

 

「武蔵野市のほうが三鷹市より災害リスクが低いのは、台地が均一に広がり、谷底低地が少ないことで地盤が安定していることがひとつ。そして、河川や水系の影響を受けにくい地域だというのが、もうひとつです。反対に三鷹市は河川が多く、台地の一部には谷底低地が入り込んでいたので、局所的な地盤の弱さや水害リスクを考慮しました」

 

 こういったように、市区町村内でも大きな差がある。港区(43位、スコア・57.66)内では、「六本木ヒルズ」と「地下鉄 麻布十番駅」の住所で、地盤ネットが独自算出するスコアを見比べると、40点もの差(六本木ヒルズ90点、麻布十番駅50点)が出ているのだ。

 

「六本木ヒルズは『火山灰台地』です。それに対し、麻布十番駅は『扇状地性低地』で、川や谷地を埋め立てた歴史的背景があります。そのため、この2カ所においては地震リスク、浸水リスク、液状化リスクはそれぞれ大きな差が出ているんです。

 

 いまでは、歩いていてもどこが台地で、どこが谷底平野かはわかりにくいですが、じつは同じような地域でも、まるで土地の“成り立ち”が違う場所があるんです」

 

 そして、齋藤氏は最後にこうアドバイスする。

 

「私どもの災害リスク判定には、各自治体が公表している浸水や土砂災害、液状化などのハザードマップの情報も落とし込まれていますので、そちらも参考にされるといいでしょう。

 

 また、事前にどこの避難所に避難するか、家族と決めておくのも重要です。地震のときに適している避難所や水害のときの避難所など、避難所でも種類が分かれています。最寄りの避難所がどういう分類かを調べておいたほうがいいと思います」

 

 もちろん「地盤」だけで、身の安全を守れるわけではない。現状を認識したうえで、適切な準備をするべきだ。

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