社会・政治
トランプ大統領 「暴走はすべて計算ずく」「イーロンは都合のいいピエロ」…識者が見抜く“狂乱を装ったパフォーマンス”の中身

2025年3月4日、米上下両院合同会議で施政方針演説をするドナルド・トランプ大統領(写真・共同通信)
「ゼレンスキーは独裁者」「カナダ、メキシコに25%の関税をかける」
2025年1月に2度めの就任をして以来、「アメリカ・ファースト」という名のもとに嘘、脅迫、暴走にも見える強引な外交政策をおこなうドナルド・トランプ大統領。
だが、上智大学総合グローバル学部の前嶋和弘教授は「“トランプの暴走”はすべて計算ずくです。公約をどうやって実行するか、自分の支持者にどうアピールできるかを計算して動いているんです」と分析。トランプ大統領の関税に関する言動も、論理的に説明できるという。
「関税は、トランプにとってディール(取引)のカードにすぎません。あれはカナダ、メキシコに対して公約に掲げた『移民対策』をちゃんとしろというメッセージです。だから、2月4日からの発動に1カ月間猶予を置き、その間に交渉したんです。
たとえ交渉がうまくいかなくても、トランプ支持者には『関税がアメリカを守る』とアピールできているので痛くもないのです」(前嶋教授、以下同)
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3月5日に、関税品目から自動車を急遽外したこともディールの一環だ。
「ディールなので、うまくいかなくなったから少し修正したんです。自動車業界のロビィ活動もありますが、関税で自動車の価格が上がると支持者の生活に影響が出そうだから例外にしたんですね。
支持者を大切にするのは、トランプ自身が大統領選に圧勝したわけではないとわかっているからです。就任間もない大統領としては、支持率も最低です。だけど、支持層からは熱狂的な支持があるので、その人たちに向けて政策を動かしているんです」
トランプ大統領は「ウクライナ戦争」では、終始ウクライナ側に否定的だ。これも支持者が関係している。
「トランプ支持者はロシアが好きなんです。支持者には熱心なキリスト教徒である福音派が多いのですが、その人たちにとってロシア=キリスト教を守る国家であって、親近感を持っているんです。彼らにとって、バイデン政権が進めた、多様性や包括性、中絶の自由は潰すべきもので、ロシア正教絶対のロシアのほうが同じ考えに見えるのです。
だから、支持者に忠実なトランプは、ロシアが侵攻したときに『プーチン、あいつは天才だ』なんてSNSに書くし、『犠牲が増えるのは問題だ』とは言っても『戦争を仕掛けたのはウクライナだ』などウクライナ批判を続けています」
政権には首脳会談中に口を出し、トランプ大統領とゼレンスキー大統領が口論するきっかけを作ったヴァンス副大統領のように、“トランプ以上にトランプ”といわれる過激な人物が多い。「これらの取り巻きが大統領を操っているのでは?」という向きもある。
「トランプ政権に入りたい共和党支持者は山ほどいます。そういう人たちが、トランプ以上にトランプ的な政策を持ち込んでいるんです。ただ、操るというよりも、政権で仕事をまかされたらそれをPRして出世しようと考える人ばかり。トランプのほうが、そんな人たちをどう利用するか考えています」
その代表格が、政府効率化省(DOGE)担当のイーロン・マスクだという。
「まず、議会が承認していませんから、政府効率化省という省は存在しません。イーロンの実際の仕事は、トランプのアドバイザーです。彼はトランプにとって、自分以上のヒールになってくれる使い勝手のいいピエロみたいなものです。習近平と話せたり、イランにも接触可能で莫大な資金を持っている。ウクライナのドローン兵器システムを支えるスターリンクもイーロンの会社のものですから、ディールのいいカードです。いざとなったら、自分の身代わりになると考えていると思います。ほかの人もそうではないでしょうか」
すべて「トランプファースト」なのだ。