社会・政治
「男女トラブルは日常茶飯事」最上あいさん刺殺事件 知人のライバーが語る「ふわっち」特有の“文化”とは

バーで1日店長をやるほど人気だった最上あいさん(写真・ギリギリ配信者BARのXより)
3月11日、人気女性ライバーの尊い命が、リスナーの手によって奪われた。
「午前9時50分ごろ東京・高田馬場で事件は起きました。『ふわっち』というライブ配信アプリで『最上あい』として活動する彼女は、配信中に突然サバイバルナイフで首や頭部などを数十回滅多刺しにされ、病院に搬送された後に死亡が確認されました。
最上さんを刺したのは、栃木県小山市の職業不詳の高野健一容疑者です。駆け付けた警察官によって取り押さえられましたが、ライブ配信中だったため、犯行時の助けを求める声や、けたたましい救急車のサイレン音など、事件の様子がそのまま視聴者に伝わり、高野容疑者が血まみれで倒れている最上さんを映す姿も流れていたようです。高野容疑者は殺意は否定しており、最上さんに貸したとされる200万円以上が返済されないことが動機とみられています」(社会部記者)
白昼堂々、犯行に及んだ高野容疑者。そもそも、彼らが出会うきっかけとなった「ふわっち」とはどのようなアプリなのか。「いつかは悲惨な事件が起きると思っていた」と語るのは、最上さんの知人で、同じ「ふわっち」の配信者であるY氏だ。
「私はもう6年ほど配信しています。有名なライブ配信アプリで『Pococha』などがありますが、断トツで『ふわっち』は“治安が悪い”ことが特徴ですよね。私が実際に見たのは、泥酔して何度も車の前に飛び出しながら配信を行う男性や、過度な下ネタ。さらには、実際に自殺行為を配信しようとする人もいます。
こうした規約に違反した内容を配信した場合、多くの配信アプリでは『垢バン』と言ってアカウントが使用できなくなり、悪質な場合は永久的に凍結されます。しかし、これは配信者仲間の間での常識となっているのですが、『ふわっち』の場合は、垢バンされても翌日には解除されるなど比較的“緩い”。2024年の10月には、永久的にバンされたはずの数百人が解除され、何ごともなかったかのように配信を復活させました。過激な内容のほうが視聴者を獲得しやすく、規制をかけなければ配信はどんどん過激になる。本来は運営側が事前に止めなければいけないのですが、“金のなる木”として手放したくなかったのではないでしょうか」(以下、すべてY氏)
ポイントとなるのは“投げ銭”機能だという。投げ銭とは、運営に手数料を支払ったうえで、応援するライブ配信者に金銭を渡すことができる機能。この金額によって配信者のランクが決まるため、応援するライブ配信者のランクをあげるために、身銭を切るファンが続出しているという。
【関連記事:「刺されそうな配信者筆頭なので震える」最上あいさん刺殺事件、過激発言で炎上した女性ライバーもコメント】
「配信者のランクは10段階で細かく分類されていて、ホワイトというランクから始まり、最高級のプラチナプラスになると、運営に50%支払った後でも、最低で月150万円の手取りが見込めます。最上さんは私と同じ最高ランクでした。なので、普通に暮らす分には金銭的に困ることはないはずですよ。ただ、最高ランクを維持するうえで重要となるのが“投げ師”と呼ばれる、投げ銭を多く出すファン。そのなかでも、平気で数十万円の投げ銭をする人は“爆投げ師”と呼ばれています。こうした固定の“投げ師”をいかに獲得するかが配信者の収入にとって重要なのです」
ファンは“推し”の配信者から注目されようと、投げ銭の金額を争うようになる中で金銭トラブルが頻発するという。
「“爆投げ師”は、会社経営者や裕福な方を想像するかと思いますが、今回の事件の容疑者のように、借金をしてまで注ぎ込み、無理をしてでも注目されたい人も多いのです。若い女性配信者の場合、男性が本気で恋愛感情を抱いて貢ぐ“ガチ恋”と呼ばれる存在もいて、ある意味“洗脳状態”ですよね」
投げ銭機能だけでは飽き足らず、今回の事件のように直接金銭を“貢ぐ”ようになるファンもいるという。
「直接会えば、運営側に支払う50%分もすべて手に入りますからね。例えば私の知り合いの20代前半の女性リスナーは、プラチナプラスランクの有名な男性配信者に多額の投げ銭をしていたところ、直接連絡を取るようになり、徐々に『お金がないから振り込んでほしい』と金の無心をされるようになり、結局その子は50万円ほど振り込んでしまいました。その女性は両親が開業医で裕福だったこともあり、『騙されたけど、勉強代として諦める』などとあっけらかんと話していましたが、借金までしていたら状況は変わっていたでしょう」
リスナーだけでなく、配信者同士の金銭トラブルも多いという。
「最上さんはリスナーのほかに、配信者にもお金を借りていたようです。実際、200万円〜300万円ほどの貸し借りはよくあることなんです。新宿にある配信者たちが毎週集まる飲み屋では、貸し借りの様子をライブ配信して、視聴者を獲得するための“ネタ”にすることが日常になっています。
YouTubeも同じですが過激なサムネイルの方がウケが良く、『税金の差し押さえが来ました』『生活保護の不正受給しました』のように、わざと困窮したふりをしたがる配信者も多い。稼いでいる現実を知ったファンの恨みが募るのは間違いないです」
固定ファンを抱える配信者の収入はかなりのものと思われるが、その稼ぎはどこへ行っているのだろうか。
「高級ブランドで散財する人などもいますが、私の知っている例で多いケースは、別の“推し”に金を使うパターンが多いですね。自身が配信者として活動しているので、推される側の気持ちが分かるのでしょう。ジャンルは問わず“推し活”につぎ込み、クビがまわらなくなるという状態です」
ほとんどの配信者が事務所などに所属していないため、止めてくれる“大人”も存在しない。
「トラブルになっても守ってくれる後ろ盾がないんですよね。ほんの一例ですが、30代の女性配信者は、自身の住む北海道に会いに来た男性リスナーにホテルに連れ込まれたこともありました。最上さんが亡くなったことは本当に残念ですが、特殊なトラブルだとは決して思えません。男女関係のもつれは日常茶飯事です。この環境が続く限り、似たような事件が起きる可能性がありますよ」
事件を防ぐための環境整備が必要なのは間違いない。