社会・政治
春闘、並ぶ「満額回答」に石破首相ほくそ笑みも…実質賃金3年連続マイナスで参院選に暗雲

2025年の「春季労使交渉(春闘)」の集中回答日となった3月12日、各企業の回答が示されるボードには「満額」の文字が並んだ。
「5%以上の賃上げが相次ぎ、主要製造業のおよそ6割で労働組合の要求に『満額回答』をしました。トヨタは5年連続の満額回答で過去最高水準の金額です。なかには、組合の要求以上の回答をした会社もありました。今後は、中小企業への波及が注目点になります」(経済担当記者)
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高額療養費制度改正の不手際に不満を持つ議員から公然と「石破下ろし」の声が沸き起こっている石破茂首相だが、この結果には気をよくしているようだ。
「石破首相は、国会でもたびたび『賃上げこそ成長戦略の要』と強調してきました。
そのため今回の回答結果を受けて『賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現に向けた機運が高まった』と胸を張っています。
少数与党で党内基盤も弱く、今夏の都議会選と参院選で大苦戦が予想されますから、これを数少ない成果のひとつとして、国民に訴えていく戦略です」(政治記者)
しかし、石破首相の思惑通りに行きそうもない。いまだ、賃上げ以上に物価上昇の波が大きいのだ。
「厚生労働省は2月5日、2024年に労働者が実際に受け取った『名目賃金』は2.9%増の月額34万8182円であることを発表しました。これは33年ぶりの高い伸びです。
しかし、物価上昇を考慮した実質賃金は3年連続のマイナスに総務省が発表した消費者物価指数が3.2%増だったため、実質賃金は差し引きするとマイナス。家計は赤字になりました」(前出・経済担当記者)
この傾向は2025年も変わらないようだ。1月の実質賃金が前年同月比で1.8%減だったことが発表されたばかりである。
「今後はガソリン補助金の縮小、コメや生鮮食品の価格高止まりなどが予想され、物価上昇は続きそうです。トランプ政権の関税政策によるインフレも懸念されます。参院選では『実質賃金』が論争になりそうです」(自民党議員秘書)
国民生活はいつ、楽になるのだろうか。