社会・政治
石破首相“疑惑の商品券”は「5000円券」20枚…議員たちの“非常識”な金銭感覚と仲間がささやく“同情”の理由

疲れた表情を見せる石破茂首相(写真・長谷川 新)
「私費でおこなっております。議員を40年近くやると、それなりに自由に使えるお金はございます」
石破茂首相が公邸で開いた自民党の初当選議員との懇談について、事前にひとり10万円の商品券を配った問題。3月14日、石破首相は国会で追及を受けると、“私費”だと強調した。
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「問題は、今回の商品券が政治資金規正法で禁止されている、個人から政治家への寄付に当たるのではないかという点です。ひとりにつき10万円で、15人に合計150万円。多くの国民からすれば“大金”であり、寄付にあたると批判が殺到しています。石破首相は、『お土産代わり、本人、家族へのねぎらい』だったとして、政治活動ではないから違法性はないと再三、主張していますが、理解が得られることはなく、各社の調査による内閣支持率は、軒並み落ちている状況です」(政治担当記者)
裏金事件で揺れた自民党を立て直すために選ばれたのが、“クリーン”なイメージの石破首相だった。なぜ、わざわざ怪しげなカネを配ったのだろうか。自民党の中堅議員はこう明かす。
「石破さんが長らく領袖を務めていた派閥・水月会は、会合で食事すら出ないことがあるほど“ケチ”な組織でした。ただ、やはり派閥の人間が内閣や党の役職についたときは、お祝いが渡されることがありました。今回の商品券もこうした慣例のひとつです。
石破さんの政治の師は故・田中角栄元首相。田中元首相は他派閥の議員にすら『当選祝い金』を包むこともあった人です。石破さんからすると、今回の商品券が問題化するとは思っていなかったのだと思います」
そのうえで国会議員の“非常識な感覚”をこう明かす。
「選挙というのは『負ければ無職』。まさに人生を賭けた挑戦なんです。みごと勝ち抜いた新人議員を、内閣総理大臣で党総裁という立場の人間がお祝いするのは、当然とされています。10万円という金額も、甥や姪の結婚式に親族として出すなら、当然、ありうる金額でしょう。まさに政治の世界の“親”として、これぐらいは当たり前と考えているんです。それが世間からどう見えるのかと考えれば、不注意だったとは言えるかもしれませんが……」
さらに3月15日には、石破首相が代表を務める自民党鳥取県第1選挙支部で、2021年に受けた個人献金のうち14件、計132万円について、寄付者の勤める企業や団体の住所が、住所欄に記載されていたことも報じられた。虚偽記載の疑いもあり、自民党内でも商品券よりも深刻な問題だと噂されている。
「企業献金の上限は決まっているので、それ以上も額を寄付する際、個人名義で寄付しつつ、住所欄は所属企業にする、というのは慣例なんですよ。虚偽といえば虚偽ですが、野党もふくめて、ほかの議員も調べれば続々と出てくるのではないでしょうか。
党内でよく聞く商品券は、『お仕立券』と『靴券』です。こうした商品券は、額面が10万円以上と高額なものがあるんです。こうした高額な券は、換金を前提としたもの。一方、今回、石破さんは1枚5000円の商品券を20枚、渡したそうです。つまり換金を前提にせず、本当に日常の買い物に使ってね、という趣旨のものだったのです。良心的なのにかわいそうだと、同情する議員仲間もいるようです」(同前)
これほど国民との感覚とずれていても、自民党議員が“能天気”にとらえているのは、一連の問題が“政局”に発展しないからだ。政治ジャーナリストがこう語る。
「一部の旧安倍派議員が、なんとか石破さんを退陣させようと、一連の問題について騒いでいるようですが、もし本当に退陣した場合、次に誰がいるのか、という問題が残ります。現状では総裁になれるような議員がいないんですよ。高市早苗さんや小林鷹之さんあたりが担がれる可能性もありますが、彼らには“政敵”も多く、またぞろ党内で批判の声が出てくるでしょう。いまの自民党は、石破首相を残すしかないんですよ」
消去法で権力を維持するというのも、情けないがーー。