社会・政治
プーチンがトランプを籠絡して狙う「米ロ軍事同盟」の絶望展開…「日本がウクライナのようになる」最悪シナリオとは

プーチン大統領(左)とトランプ大統領(写真・アフロ)
3月18日、ロシアのプーチン大統領は、アメリカのトランプ大統領と、ウクライナのインフラ施設に対する攻撃を30日間制限することで合意した。しかし、アメリカが求めていた停戦には同意を示さなかった。
「先月、サウジアラビアでおこなわれた米ロ高官協議では、多少意見の相違がありましたが、今回、ようやく停戦に向けての第一歩となったと言えるでしょう。
ロシア側は、ウクライナでの大統領選の実施やウクライナのNATO加盟禁止、自国に対する経済制裁の緩和を訴えたとされています。トランプ大統領は停戦を主張していますが、結末がどう転ぶかはまだわかりませんね。
また、当事者でありながら協議に招かれなかったウクライナのゼレンスキー大統領は、『ウクライナ抜きでの戦闘終結の決定はありえない』と強く批判しています」(政治担当記者)
今後、協議が進むことで停戦の可能性はあるのか? 筑波大学の中村逸郎名誉教授に詳しい話を聞いた。
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「停戦の可能性は十分あるでしょう。おそらく、5月9日に控えているロシアの対独戦勝記念日に向けて交渉しているのでしょうね。ロシアは、最終的に米ロ軍事同盟を狙っているはずです。
停戦後のロシアにとって、目下の課題は『NATOからどうロシアを守るか』ということです。NATOからアメリカが抜けたいと言っているなかで、プーチンとしてはこうした考えを持つトランプの任期中に米ロ軍事同盟を結びたい。それで、対NATO、対ヨーロッパの安全保障を確立したいと考えているのでしょう」(以下、「」内は中村教授)
軍事同盟のほかに、ロシアが停戦を受け入れる条件がもう一つあるという。
「ゼレンスキー大統領の辞任です。辞任を発表するところで、本格的な停戦交渉がスタートします。そして、停戦中にウクライナ大統領選をやれば、親ロシア・親米政権になるのは間違いない。親米というのは親トランプということですが。
ゼレンスキーがいなくなると、ロシアがウクライナすべてを併合するかどうかはともかく、当然、ウクライナの領土は返ってきません。
しかし、世論調査によると、ゼレンスキーの支持率は30~40%台に落ちて人気がなくなっているんです。ロシアが侵攻した直後は80%台後半の高い支持率だったんですが、いまでは3人めに陥落しています。
実際、ゼレンスキーがやめることで戦闘が収まるなら、たとえ領土が失われてもそれを歓迎するという思いが、市民のなかに強まっているのは間違いないですね」
軍事同盟が締結されると、もちろん、ヨーロッパは黙っていない。
「ヨーロッパは米ロ軍事同盟を絶対認めません。そもそも、なぜヨーロッパがウクライナを守らないかというと、ロシアが恐いからなんです。また侵略してくるんじゃないかと不安なんです。だから、ウクライナを使ってロシアを弱体化させようとしていた。
今回、トランプがゼレンスキーに対して罵倒するような姿を見せたことで、反トランプ感情が大きく高まっています。ヨーロッパとアメリカの分断が進むことで、トランプはどんどんロシアのほうに近づいてしまう構図なんです。
もちろん、プーチンが停戦に応じないこともありえます。ロシアはどんどん巻き返しています。いまクルスク州を9割方ロシアが奪回したということで、このまま戦闘が続くと、もう首都キーウに対する集中攻撃となります。
いますぐということではないでしょうが、ゼレンスキーがやめなかったらキーウを潰す。首都陥落に向けて、もう1回、軍事展開することになるでしょう」
米ロが軍事同盟を結ぶと、日本を含むアジア圏にも大きな影響を及ぼすことになる。
「米ロ軍事同盟なら、中国が台湾侵攻を考えても、圧力をかけることができる。もちろん、日本に対しても、韓国に対してもさまざまな圧力がかかることになります。
これまでは日米韓の軍事協力がありましたが、トランプは日本にもっと軍事費を負担しろと言っています。実質的にどこまで影響があるかは、今後の交渉次第ですが……。
いちばん恐れるべきは、アメリカの軍事情報がロシアに流出することです。もしアメリカから日本の軍事機密が流出した場合、ロシアが日本にウクライナのような形で侵攻する可能性も十分あるでしょう」
Xデーと予想される5月9日の動向に関して、固唾を飲んで見守るしかないのか……。