社会・政治
麻生太郎氏が「絶対やめたほうがいい」没交渉だった石破首相に忠告した “新たな火種” 行為…求心力に大きなマイナス影響が

党内の権力をふたたび高めつつある麻生太郎氏(写真・長谷川 新)
3月21日、国会では参院予算委員会の集中審議が開かれ、石破茂首相が、昨年秋の衆院選で当選した新人議員15人に対し、1人10万円の商品券を配った問題をめぐり、野党からの厳しい追及が続いた。
この問題は、3月13日に「朝日新聞」がスクープしたもので、石破氏はすぐさま「純粋に個人的なねぎらいとしておこなったもの。政治活動とは違うものであるという認識を持っているので、政治資金規正法には抵触しない」などと弁明した。
19日の参院予算委員会でも同様の追及を受けたが、配布した理由について「人付き合いが悪いだの、ケチだのと散々言われ、気にする部分が相当にあった」と本音を吐露していた。
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政治部記者が言う。
「岸田文雄前首相も首相在任中に政務官に10万円の商品券を渡していたことが明らかになっていますが、この『商品券問題』が大きく影響したため、石破内閣の支持率は急落しています」
3月15〜16日に実施された各紙の世論調査では、内閣支持率はいずれも「支持」が大幅に減り、「不支持」はその幅以上に増加しており、惨憺たる結果となった。
「自民党内からは『石破さんでは夏の参院選を戦えない』という悲鳴が漏れてきます。かといって、石破さんの首をすげかえれば、野党が結束して自民党が政権与党から転落してしまう危険性もあるため、まさにジレンマの状況に陥っているのです。
衆参ダブル選挙の可能性も噂されますが、衆議院を解散して選挙に突入すれば、自民党は衆院での議席を大きく減らし、野党に転落しかねません。
野党としても、石破首相のまま参院選を戦ったほうが有利と見ているため、しばらくは石破政権が続くのではないでしょうか」(前出・政治部記者)
こうした状況のなかで、時折、石破氏にアドバイスしているのが、麻生太郎自民党最高顧問だという。
麻生氏は、2024年9月30日、石破新総裁のもとで、中曽根康弘元首相が1994年に退任して以来、30年ぶりに党最高顧問に就任した。
そして、2025年3月9日の自民党大会では、党最高顧問の役職を30年ぶりに明記する党則改正を了承し、最高顧問の役割を「総裁の諮問に応じて意見を述べる」などと規定したばかり。
最近の麻生氏と石破氏との関係変化について、政治部デスクがこう言う。
「麻生氏にとって石破氏は仇敵で、これまで没交渉でしたが、最近は定期的にアドバイスしているようです。
2025年2月の石破氏の訪米前には『結論を先に言え。理屈を先に言ったらトランプは聞かない』などと、具体的なアドバイスをしていましたし、トランプ大統領との面会直後の2月14日には、国会内の総裁室で30分近く直接向き合い、会談内容を詳細に聞き取りしていました。
麻生氏は、少なくとも7月の参院選までは石破首相が下りる気配がないことをうすうす察知していて、官邸側とひんぱんに連絡を取るようになっています。
また、石破氏が今夏の発出に意欲をみせている『戦後80年談話』についても、『絶対出さないほうがいい。自民党の “左右” の意見対立が目立ちすぎて、参院選にもお前の求心力にもよくない』と助言したそうです」
石破氏は2月末、戦後80年談話を出す検討に入っていた。
「首相談話」は、政府としての基本的態度や方針について、閣議決定を経て、首相が発表する声明のことだ。
戦後50年の1995年に出された、社会党の村山富市首相による「村山談話」では、『植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました』などと、日本がアジア諸国に植民地支配と侵略をしたことを明言。
2005年の戦後60年の小泉純一郎首相による「小泉談話」も村山談話を踏襲し、アジア諸国に謝罪。さらに踏み込んで「中国や韓国」と具体的な国名が盛り込まれた。
一方、2015年の安倍晋三首相による戦後70年の「安倍談話」では、『植民地支配』や『侵略』という文言は盛り込まれたが、野党からはこれらの文言が『日本がおこなったと言っているのかはっきりしない』と批判を浴びた面もあった。だが、「謝罪外交に終止符を打つ意思を示した」として、保守派からは評価する声があがった。
談話は、おもに終戦記念日の8月15日に発表(2015年の安倍談話は8月14日)されるが、その内容は国内外に大きな影響を及ぼすため、これまでも物議を醸してきた。
前出のデスクが言う。
「石破氏は、1月31日の衆院予算委員会で『なぜあの戦争を始めたのか、なぜ避けることができなかったか。検証するのは80年の今年がきわめて大事だ』と話しており、第2次世界大戦の検証に踏み込むことに意気込みを見せていました。
広島県出身の公明党の斉藤鉄夫代表も、『戦後80年、被爆80年という節目に談話は出すべき』と石破氏を後押ししています。
ただ、党内のいわゆるタカ派である小林鷹之元経済安全保障相は『(談話は)出す必要はまったくない。そのための70年談話だ』と反対するなど、党内で足並みが揃っていません。
反対派は、安倍談話が石破氏によって更新されて、前の村山談話のようになることを恐れているのだと思います。麻生氏は石破氏に『新たな火種を作るな』と忠告しているわけです」
80年談話に意欲を見せる石破氏だが……。はたして8月15日まで首相でいられるのかどうか。