社会・政治
石破首相、麻生氏が中止助言の「戦後80年談話」発出を断念…目に見える弱体化で「最高顧問」の傀儡化か

石破茂首相と麻生太郎・自民党最高顧問(写真・長谷川 新)
3月27日、石破茂首相が発出に意欲を見せていた「戦後80年談話」を見送る方向であることがわかった。新聞各紙が報じた。
「首相談話」は、政府としての基本的な態度や方針について、閣議決定を経て、首相が発表する声明のことだ。
戦後50年の1995年に出された社会党の村山富市首相による「村山談話」では、《植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました》などと、日本がアジア諸国に植民地支配と侵略をしたことを明言。
2005年、戦後60年の小泉純一郎首相による「小泉談話」も村山談話を踏襲し、アジア諸国に謝罪。さらに踏み込んで「中国や韓国」と具体的な国名が盛り込まれた。
一方、2015年の安倍晋三首相による戦後70年の「安倍談話」では、「植民地支配」や「侵略」という文言は盛り込まれたが、野党からはこれらの文言が「日本がおこなったと言っているのかはっきりしない」と批判を浴びた面もあった。だが、「謝罪外交に終止符を打つ意思を示した」として、保守派からは評価する声があがった。
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こういった談話は、おもに終戦記念日の8月15日に発表(2015年の安倍談話は8月14日)されるが、その内容は国内外に大きな影響を及ぼすため、これまでも物議を醸してきた。
石破氏は、1月31日の衆院予算委員会で「なぜあの戦争を始めたのか、なぜ避けることができなかったか。検証するのは80年の今年がきわめて大事だ」と話しており、第2次世界大戦の検証に踏み込むことに意気込みを見せていた。
政治部デスクがこう言う。
「広島県出身の公明党・斉藤鉄夫代表も『戦後80年、被爆80年という節目に談話は出すべき』と、石破氏を後押ししていました。
しかし、この首相談話について、自民党の麻生太郎最高顧問は、石破氏に対して『絶対出さないほうがいい。自民党の “左右” の意見対立が目立ちすぎて、参院選にもお前の求心力にもよくない』と助言していました。
麻生氏にとって、石破氏は仇敵でしたが、最近は定期的に石破氏にアドバイスしているようです。
党内でもいわゆる “タカ派” である小林鷹之元経済安全保障相は『(談話は)出す必要はまったくない。そのための70年談話だ』と反対。『安倍談話』で終止符を打った謝罪外交に逆戻りすることを心配する声があがっていて、『首相談話』は党内の新たな火種になりかねない状況でした」
首相談話を見送った一方で、石破氏は4月にも有識者会議を設置し、なぜ日本が第2次大戦へ突入していったかを検証し、8月に公表を目指す方向で検討しているという。
石破氏は麻生氏の助言どおり、首相談話を見送ったわけだが、そのことで、首相としての “センスのなさ” がさらに露呈したことは間違いない。
自民党関係者が言う。
「石破氏が新人議員に10万円分の商品券を配った問題では、党の政治とカネの問題を野党から追及されている最中に発覚したというタイミングの悪さから、政治センスのなさが党内から指摘されています。
高額医療費制度の負担上限額の引き上げにしても、患者団体や野党から批判を受けるなどして、二転三転した後に見送るなど、石破氏の判断力のなさには呆れ声が止まりません。
さらに、3月25日、公明党・斉藤代表と首相官邸で面会した際に、現在審議中の2025年度予算案成立後に、強力な物価高対策を検討する考えを見せたことが漏れ、野党からは『参院軽視だ』と猛批判を浴び、27日の参院予算員会で陳謝する破目になりました。
こうも謝罪続きでは、石破氏に先を見通す能力がまったくないのではないかと思わざるを得ないですね」
石破政権が日に日に弱体化していくなかで、党内の混乱を見据えたうえで「首相談話」を中止するよう助言した麻生氏の存在がにわかにクローズアップされている。
「麻生氏は全盛期ほどの求心力はないものの、石破氏にアドバイスする以外に、永田町の個人事務所で高市早苗元経済安全保障相らと面会を繰り返す日々だと聞いています。
また、最近は茂木敏充前幹事長の仲介で、昨年の自民党総裁選以来疎遠だった岸田文雄前首相とも会食し、『三頭政治』の復活も印象づけています」(前出・デスク)
石破政権は “党最高顧問” の傀儡と化してしまうのか。