間もなく始まる韓国・平昌での冬季オリンピック。北朝鮮からの選手団や応援団の参加で話題には事欠かない。そんな「スポーツと平和の祭典」を成功させようと、韓国のオリンピック組織委員会が打ち出した「隠し玉」が、冬季五輪史上最多のコンドームの無料配布である。その数なんと11万個。これまでのバンクーバーやソチでの五輪大会より1万個も多い「大盤振る舞い」だ。
今回の冬季五輪に参加する選手の数は92カ国2925人である。選手だけに配られるわけではないが、もし選手だけに配ったとしたら、1人あたり37.6個となる。歴史を紐解けば、オリンピックで無料のコンドームを配布するサービスが始まったのは1988年のソウル夏季オリンピックから。韓国はコンドームへの思い入れが強い。実は、コンドームの製造販売に関していえば、韓国は世界のトップクラスにランクインしているのである。
組織委員会によれば、「選手が安全に競技に取り組めるようにする」ことが目的であり、「HIVなど性病の伝染、拡大を防止する狙いも込められている」とのこと。要は、「オリンピックの成功にはコンドームが欠かせない」というわけだ。
今回10万個のコンドームを無償提供したのは地元コンビニエンス社であり、残り1万個を提供したのは韓国AIDS防止協会である。金額にして1000万円ほど。オリンピックの公式スポンサー企業ではないが、世界中の有名アスリートに使ってもらい、メディアで話題となれば、効果的な宣伝になると判断した模様だ。
オリンピックに参加する選手は、おおむね若くて、エネルギーに溢れている。しかも、生涯最高の演技や記録を求められるため、そのストレスは半端ない。そのため、マスコミの立ち入りが禁止されている選手村では、選手同士の国際的な「夜のオリンピック」の花が咲く。
セックスが選手のパフォーマンスにどのように影響するかは議論が分かれるところであるが、専門家の間には「20〜30分の性交は軽いジョギング程度の効果がある」という意見と、「精神的に集中度を下げるマイナス効果がある」と相反する見方があるようだ。
とはいえ、過去のオリンピックにおいては、競技を終え、開放的な気分になった選手同士は言うに及ばず、こっそり押し掛けたファンとの間で「思い出作り」用のコンドームが必要になるケースが多かったという。開催地によっては、選手のために夜な夜な特殊サービスを提供する施設も準備されていたほど。
2016年のリオ夏季オリンピックでは1万500人の選手のために45万個のコンドームが無料で振る舞われているが、要は、夏でも冬でもオリンピックにコンドームは必需品なのだ。毎回、工夫を凝らしたコンドームが選手村やメディアセンターで配布されるため、収集家の間では人気が高い。そのため、使わずにお土産として持ち帰る選手も多い。
最近では北京オリンピックの際に配布された「より早く、より高く、より強く」の標語入りコンドームが高値を付けているという。2020年の東京オリンピックではどんなデザインが登場するのか。性能面でも世界最高と評価の高い日本製への期待が高まっている。(国際政治経済学者・浜田和幸)