関東連合“最後の大物”に迫る捜査　カンボジア特殊詐欺事件、逮捕された“弁当屋”の元同級生・見立真一容疑者の潜伏先とは

 

「弁当を運んでいただけです。（詐欺事件の）首謀者じゃない」

 

　カンボジアを拠点に特殊詐欺を繰り返していた犯罪グループのトップだったとされる山口哲哉容疑者が8日、タイから羽田空港に移送される機内で逮捕された。移送前のタイの空港で当局職員に抱えられ、引きずられるように連行されていた山口容疑者は、日本のメディアの直撃取材に、うつ向いたまま息も絶え絶えにこう答えたのだ。大手紙の社会部担当記者が山口容疑者について解説する。

 

「埼玉県警によれば、山口容疑者の逮捕容疑は3年前、大阪市の70歳代の女性に嘘の電話をかけて、ATMで振り込ませた現金30万円を引き出した電子計算機使用詐欺容疑です。カンボジアを拠点とした詐欺事件では、2023年に日本人25人が現地警察によって身柄を拘束され、日本で逮捕起訴されていました。この大規模な詐欺事件への関係などから捜査線上にあがっていたのが山口容疑者です。日本の警察が逮捕状を取って国際手配をしていたところタイ警察がバンコク市内で発見し、身柄を拘束していました。

 

　カンボジアの首都プノンペンで日本料理屋を経営していたという山口容疑者ですが、じつは、先に逮捕された被告らの供述で、グループのトップとされる人物が『弁当屋』と呼ばれていたことが分かっています。山口容疑者の自らの発言で、図らずも容疑を裏付けてしまった形ですね」（社会部記者）

 

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　また、山口容疑者は、ニューヨークやアムステルダムにも法人を設立。美術品などの取引もしていたという。その目的は、詐欺で得た資金を美術品取引の過程で洗浄するためだったとされる。

 

　警察は山口容疑者の逮捕で海外を拠点にした特殊詐欺グループの実態解明を進める方針。しかし、「じつはもう一つ、大きな目的がある」と語るのは、山口容疑者とも交友があったというカンボジアの現地関係者だ。

 

「かの有名な見立真一容疑者の逮捕です。六本木にあったクラブ『フラワー』内で敵対関係にあった人間と間違えて飲食店経営者を集団で暴行、死亡させた『フラワー事件』の主犯で、犯行後にフィリピンに入国した後は消息が分かっていません。国際手配され、もう12年以上も逃亡しています。事件にかかわった人間は暴走族『関東連合』のメンバーで、見立容疑者はリーダー格のひとり。山口容疑者もメンバーです。ほとんどのメンバーが世田谷区や杉並区、目黒区、練馬区の中学校出身者で占められる中、山口容疑者は静岡県焼津市の中学校の出身。見立容疑者も練馬区内の中学校とされていましたが、じつは一時、山口容疑者と同じ焼津市内の中学校に通っていた時期があるんです。つまり、見立容疑者が山口容疑者を『関東連合』に引き入れたわけですね。カンボジアでも見立容疑者が山口容疑者を呼び寄せて名代としていたわけです。関東連合のメンバーで、事件を起こしたにもかかわらず最後まで逃げ続けているのは見立容疑者だけ。逮捕されれば、非常に大きいですね」

 

　じつは数年前、SNSに載った数枚の写真が捜査関係者の関心を集めた。カンボジアで撮影されたとみられるキャンプ写真には、山口容疑者や事件現場「フラワー」の元関係者と一緒に見立容疑者らしき人物が妻とおぼしき女性、さらに子供と一緒に写っていたのだ。山口容疑者を追及することで、見立容疑者の潜伏先も分かるのではないかと警察が考える根拠の一つだ。

 

「特殊詐欺の拠点になっていたKKパークは、現地の警察高官が実質的なオーナーです。それゆえ、逮捕はないと山口容疑者らは踏んでいました。ところが、中国系のギャングが似たような特殊詐欺を、出稼ぎや拉致した中国人を使い中国人をターゲットに始めたことで、まず中国の捜査当局が動きました。カンボジアで現在、特殊詐欺を行ったことで身柄拘束されているのは主に中国人とマレーシア人、それにフィリピン人でその数は2000人以上。中国政府はカンボジアとタイの両政府に厳しい取り締まりを強く求め、両国政府はこれを忠実に実行しています。じつは山口容疑者もバンコク市内に潜伏した直後からタイ当局によって、事実上の軟禁状態に置かれていたようです。賄賂を渡して見逃してもらおうとしたところ、『馬鹿にしているのか』と、尻と大腿部を警棒でしこたま叩かれたそうです。空港で歩きにくそうにしていたのは足のけがのためです」

 

　フラワー事件で実刑判決を受けた中にはすでに出所した人間もいる。動機など未だに謎の多いこの事件だが、見立容疑者の逮捕による全容究明が待たれる。