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石原さとみが演じる「解剖医」給料はトップレベルに低い?

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2018.02.13 16:00 最終更新日:2018.02.13 16:00

石原さとみが演じる「解剖医」給料はトップレベルに低い?

 

「不自然な死は許さない」

 

 2018年1月に始まった連続テレビドラマ『アンナチュラル』(TBS系)。石原さとみが演じるのが、遺体を解剖し、死因を究明する専門家・法医解剖医だ。死体と語り合う、知られざる職業の10の秘密に迫る。

 

(1)依頼がないと解剖できない

 

 法医解剖医の任務はあくまでも死因を明らかにすること。警察などの公的な機関からの依頼のみで解剖はおこなわれ、法医学者の判断による解剖はほとんどおこなわれない。

 

(2)生きている人間も診察する

 

 法医解剖医は遺体のみを診るわけではない。虐待の疑いのある子供など、児童相談所からの依頼で生体診察をおこなうこともある。年々増加傾向にある、重要な任務だ。

 

(3)CTスキャンは限界がある

 

 CTスキャンでは20%程度は死因を示唆する所見が得られる。だが、たとえばCTスキャンによって死因が「脳出血」だと判明しても、それが「覚醒剤中毒に起因する脳出血」だと判定するには、解剖とそれに続く薬物検査が必要だ。

 

(4)死因はこうして明らかにする

 

 法医解剖ではあらゆる可能性を考えて全身を解剖し、骨や血液を使った薬物検査やDNA検査などをおこなう。映画やドラマのように、解剖結果だけから死因を特定してしまう“名医”は存在しない。

 

(5)慢性的な人手不足……鑑定書を書くヒマがない!

 

 解剖の結果は鑑定書にまとめるのが原則だが、県によっては多くの事例で鑑定書が作成されていない。鑑定書作成を補助する人手がないため、裁判にならない解剖は、鑑定書が作成されない場合が多いのだ。

 

(6)多くの地域では開業医が検案している

 

 多くの地域では、警察の依頼を受けた開業医が遺体外表の検案のみをおこなう。解剖されないまま心不全とされることが多く、法医解剖の結果「腹を蹴られるなどして、内臓破裂で死亡」と判明した例もあった。

 

(7)兵庫34%、広島1%……解剖率に大きな差

 

 解剖率には人口や死亡者数で地域ごとに大きな差がある。兵庫県では34%、沖縄県では29%の遺体が法医解剖されるが、広島県では1.3%、大分県では2%しか解剖されていない。

 

(8)一般人が依頼しても解剖してくれる?

 

 法医解剖は一般人からの依頼は受け付けていない。ただ、「警察や医師から下された死因に納得がいかない遺族が、個人的に大学に解剖を依頼してくる例はある。なかなか受けられませんが……」(千葉大学大学院教授 岩瀬博太郎氏、以下同)

 

(9)テレビドラマのここがヘン

 

「ドラマでは、法医解剖医は事件を解明したり、格好よく描かれるけど、2003年に千葉大に赴任したら、解剖に台所にあるような出刃包丁とまな板を使っていた(笑)。東大の設備も貧相だし、華やかさとはほど遠いですよ」

 

(10)給料は業界でもかなり安いが……

 

 給料は医師のなかでは「トップレベルに安い」。解剖にあたって「1体5万〜8万円」の謝金が出るが、千葉大と東大では個人が受け取ることはない。
「それでも、社会貢献を真面目に考えている人が志望してくれます。若手のためにポストを増やすことが急務です」

 

いわせひろたろう 

1967年生まれ 千葉県出身 法医解剖医 東京大学医学部卒業。同大法医学教室を経て、2003年より千葉大学教授、2014年より東京大学教授を兼務。日本法医学会理事

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