社会・政治
二階俊博の三男・伸康氏 参院選立候補で思わぬ神風 和歌山県に“パンダを取り戻す”父の中国パイプ活用へ

“パンダ奪還公約”の可能性が浮上する伸康氏(写真・共同通信)
「親父の背中を見て、育ってまいりました」
先の総選挙で引退した元自民党幹事長の二階俊博氏。その後継候補として自民党公認で立候補し、比例区復活当選もできずに落選した三男の伸康氏は、選挙戦終盤の街宣でこのフレーズを繰り返していたという。地元紙記者がこう語る。
「事実上、参議院議員からくら替えした世耕弘成さんとの一騎打ちでした。裏金問題で党から離党勧告を受けて離党中の身とはいえ、旧安倍派幹部であり参議院幹事長だった世耕さんが相手では、さすがに“新人”が勝つのは厳しかった。裏金問題は旧二階派でも発覚していたので、批判も出来ない。せめて世襲批判は受けないようにと、俊博さんのことは極力、触れずに選挙戦を戦っていました。俊博さんも体調の悪さもあって、選挙区入りしても事務所に顔を出す程度。ただ、これが裏目に出たという形になりましたね。世耕さんとの知名度の差が歴然となり、比例復活も厳しい状況になりました。選挙最終盤になって、焦ったかのように父の名前を出すようになりましたが、時すでに遅しという状況でした」(芸能記者)
【関連記事:二階俊博氏の3男「参院選」立候補で「紀州戦争」第2ラウンド勃発…「世耕一派」は再び「二階王国」を倒すのか】
その伸康氏が、今度は7月の参議院選挙に打って出ることになった。自民党和歌山県連は伸康氏を和歌山選挙区の公認候補として決定。党本部も公認を決めた。世耕氏が後ろ盾になっているという、やはり和歌山選挙区の公認を求めていた前有田市長の望月良男氏は、伸康氏の公認が決まるや無所属で立候補することを表明している。自民党は総選挙に続き分裂選挙になることが決定的になった。先の記者がこう続けた。
「同選挙区からは、世耕氏が支援する前有田市長である望月良男氏も立候補することが決まっています。つまり、二階vs.世耕の対決が再び勃発するというわけですね。県政への影響力が強い町村長会はあくまで“二階家”支持です。しかし、どこまで県民の間で伸康氏への支持が広がるかはわからないですね」
巷では望月氏リードの報もあるというが、伸康氏の陣営には思わぬ神風が吹いているという。何かといえば、“パンダ外交”だ。
「和歌山県の白浜町のアドベンチャーワールドで飼育されている4頭のジャイアントパンダが貸与期限を迎えるということで、6月に返還されることになったんですよ。国内には上野動物園に2頭がまだ残っていますが、これも来年3月に返還時期を迎えます。このままでは国内からパンダの姿が消えるかもしれません」(外務省関係者)
アドベンチャーワールドへのレンタル契約「ジャイアントパンダ保護共同プロジェクト」で貸与が開始されたのは1994年から。以来、17頭のパンダが同施設で誕生している。パンダの繁殖は極めて困難とされ、国内ではほかに上野動物園で一例あるだけ。世界的にも本国中国を除けばメキシコなど数えるほどしかない快挙をはたしている。
「それゆえ、現在ではパンダの繁殖研究は日中による共同研究とされてきました。まさか期限を過ぎたから契約を更新せずに返還とは、厳しい対応ですよね。そもそも2024年に中国を訪れた二階俊博さんが、王毅外相との会談で『(アドベンチャーワールドにいるのは)メスしかいない。オスのパンダを派遣してほしい』と直接要請しており、王毅外相も前向きに応じると答えていたんです。
やはりトランプ政権の誕生により、各方面で中国への圧力が強まる中、中国としても“パンダ外交”を復活させ、各国に揺さぶりをかける狙いがあるとみられます」
そこで白羽の矢が立っているのが、伸康氏だ。
「もともとアドベンチャーワールドへの貸与は、父・俊博氏と中国政府の信頼関係の結果とされていました。つまり今回の返還は、二階氏の引退にともなう中国政府の対日政策の方針転換の現れの一つと、外務省内ですら大真面目に語られています。
実際、2017年に中国が提唱した『一帯一路』の国際協力首脳会議では、二階氏は出席に後ろ向きだった安倍晋三元首相を説き伏せ今井尚哉秘書官を同行させて北京入りさせました。この時、習近平主席は二階氏を『老朋友』(親しい旧友)と呼び、最大級の謝意を述べています。二階氏とその息子である伸康氏が直接交渉すれば、“パンダを取り戻す”ことも可能かもしれません」(冒頭の記者)
和歌山県でもパンダを失うことは避けたい。
「この30年間、パンダは和歌山県最大の観光資源といっていい存在ですからね。アドベンチャーワールドのある白浜は、まさにパンダの恩恵を受けて、関西屈指の温泉地の地位を取り戻しました。後継者である伸康氏が、『パンダを取り戻す』と公約すれば、インパクトは大きいですよ」
父の威光とパンダの可愛さにすがるというわけだ。