社会・政治
「愛人旅行に競走馬、バニーガールまで」老人ホーム運営法人で巨額横領疑惑…元理事長「8億5000万円」驚愕のカネの使い道

女性3人と豪華な旅行にも繰り出していた深瀬容疑者
「元理事長は、法人のお金を10数億円使い込んでいました。元理事長だけではなく、元理事長の妻も、車両や燃料代、親の葬儀代、家のリフォームまで全部法人のカネでやっていた。
元理事長は愛人のマンションから、愛人と旅行に行ったときの費用も出させていた。その愛人は法人の従業員扱いにして、給与も払っていました。
さらに競走馬の購入、キャバクラ代、韓国クラブ、バニーガールのお店、大学OB会のカネなど、ありとあらゆる出費を法人から引き出していました」
神奈川県警は5月8日、社会福祉法人「母子育成会」の資金を横領したとして、元理事長・深瀬亮一容疑者(68)を業務上横領容疑で逮捕した。5月14日、逮捕を受けて記者会見をおこなった横田明彦現理事長は、冒頭のとおり苦々しい表情で被害状況を語った。
「深瀬元理事長が、20年にわたり私的に流用していた法人のお金は8億5000万円で、そのうち2億3500万円について業務上横領の告訴状を出しました。
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ただ、300件以上の横領案件があり、警察が一つ一つ捜査するのは大変です。そのため、今回は法人の口座から200万円を引き出したとして、横領容疑で逮捕したわけです。これから順次、再逮捕されていくのではないでしょうか」(横田現理事長)
『母子育成会』は、全国で2万以上ある社会福祉法人のひとつ。川崎市や横浜市で認可保育園や特別養護老人ホームなどを運営していた。深瀬容疑者の私的流用が始まったのは、同法人の副理事長に就任した2000年ごろと見られ、以来2024年3月に理事長職を退任するまで続いていた。
社会福祉法人をめぐっては、公益法人であることを隠れ蓑にして、私的流用や私物化が問題になるケースが全国で後を絶たない。だが、今回は、金額の多さと悪質さで群を抜いている。
川崎市は、2018年から2023年度まで、介護給付費や補助金などとして、毎年20億円を同法人に払っていた。しかも、法人の建物が建つ土地は、川崎市から市有地の無償貸与をうけた土地だ。まさに深瀬容疑者は、税金をも私的に流用していたと言われても仕方ない。
なぜ、そんなでたらめがまかり通ってきたのか。少なくとも川崎市から介護給付費や補助金を受け取っている法人ならば、市の監査がおこなわれる。ところが、その監査すら骨抜きになっていたとの指摘がある。
もともと深瀬容疑者の父親は川崎市の助役だった。そのため、法人には、川崎市からの天下りの職員もいた。
「市から監査が来たときは、帳簿類を見せます。職員の一人は、『監査法人は会計処理の仕方や指導が中心で、会計の中身については話されなかった』と明かしています。
市からは、こう修正すれば監査が通ると指南するガイダンスが送られてきました。川崎市は、法人の監査で問題を指摘する気がなかったのではないか」(母子育成会関係者)
この杜撰な監査については、市議会でも問題になり、2024年9月に検証チームを作って検証作業が進められた。しかし、『市のOBから監査への働きかけや圧力はなかった』と結論づけ、それ以上の追及はされなかった。
本誌は改めて川崎市に質問したが、「監査を実施した全ての法人に対し、現地で公表した内容についてメモを作成し、確認していただいております」との回答だった。
現在の法人は解散する意向で、法人が運営していた特別養護老人ホームや認可保育園は別の法人に移管されている。横田現理事長が、改めてこう話す。
「深瀬容疑者は、200万円については流用を認めているようですが、まったく反省していないようです。そればかりか、『法人が乗っ取られた』と言っているそうです。
われわれとしては、使い込まれたお金は、深瀬容疑者が所有する家などを差し押さえて弁済に充てるつもりですが、本人は反発しているようです」
母子育成会は、5月14日、深瀬容疑者に対して8億4690万円の損害賠償を求め、提訴する意向を明らかにした。
社会福祉の名のもとに、法人を私物化して好き放題をおこなった元理事長の行為が許されていいはずはない。