社会・政治
【リニア中央新幹線】「水問題」ついに解決で着工へ大きく前進も…いまなお残る静岡県前知事の“負の遺産”

2025年6月2日、リニア中央新幹線の専門部会を終え、取材に応じる森下祐一部会長(写真・共同通信)
長年、混乱が続いてきた静岡県の「リニア問題」に大きな動きがあった。
6月2日に開かれた、リニア中央新幹線の影響について議論する静岡県の専門部会で、水資源に関する対話6項目のうち、残っていた2項目について、JR東海の案が了承された。これにより「水資源」に関する対話が終了、解決をみたのだ。
「静岡県でのリニアをめぐる最大の論点は、大井川の『水』の問題でした。まだ『生態系』『発生土』については未決着ですが、水問題の解決は、リニアの静岡工区の着工に向けて大きな前進といえるでしょう」(全国紙記者)
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この「水問題」の始まりは、11年前の2014年のことだった。JR東海の環境への影響評価で、大井川上流域において流量が最大で毎秒2t、減少するとの予測が示され、川勝平太県知事(当時)が「水の全量戻し」を要望。JR東海は導水路トンネルを建設するなどの代案を示し、県側と合意かと思われたが、2017年10月に川勝氏が突如、「JR東海から誠意ある回答」がないとして、着工にストップをかけたのだ。これで、事態は膠着状態に陥った。国土交通省は有識者会議を立ち上げ、大井川の流量は維持できると結論づけたものの、静岡県は「解決策が示されていない」などとして、工事の開始を認めなかった。
2023年2月には、地下水の状況を調べるため、山梨県側から静岡県に向かってボーリング調査が始まったが、川勝氏はこれに対してもストップをかけた。どのような影響があるかを調べるための調査さえも認めようとしない、この川勝氏の姿勢は、県内外から批難を浴びた。
その川勝氏だが、自らの失言問題などもあり、任期途中の2024年5月に辞任。後任の鈴木康友知事になって、ようやく建設的な議論が進みつつあるところだ。
「専門部会ではまだ、『生態系』で14項目、『発生土』で4項目の対話が残っています。しかしこの2つの課題は、川勝知事が水問題に加えて後から出してきたもの。問題がないとはいえませんが、住民の生活に大きな影響を与えることはありません。
そもそもこの専門部会は、川勝知事が設置したもの。国の有識者会議が検証し、問題なしとしたものを、さらに別に検証せよというのです。専門部会ですべての検証が終わらないと着工はできませんが、鈴木知事に変わっても議論の進展は遅く、関係者からは不満の声が聞かれています」(同前)
リニアは、品川〜名古屋間の286kmを約40分で結ぶ巨大プロジェクト。静岡県の工区は8.9kmだが、その区間が着工できていないことで、開業は大きく遅れている。
「南アルプスの真下を通る静岡工区は、着工から完成まで10年かかるといわれています。いますぐ着手したとしても、開業は2035年。しかし、まだ静岡県が着工を認めていないため、開業はまだまだ先延ばしになりそうです」(同前)
前知事の“負の遺産”は、いまもまだ重くのしかかっているのだ。