社会・政治
「彼はいわばミニ田中です」日大、再びの金銭不祥事にちらつく“ドン”との蜜月関係…5000万円詐取の重量挙げ部監督の素顔

送検される難波謙二容疑者(写真・共同通信)
入学金や授業料が免除になる学生に対して、虚偽の説明をして金銭をだまし取ったとして詐欺罪の疑いで6月10日、日本大学の重量挙げ部元監督の難波謙二容疑者が逮捕された。難波容疑者は、2024年7月まで20年以上にわたって同部の監督を務めた。大手紙の警視庁担当の記者は、「難波容疑者は、『納得して支払われたもの』と供述しており、容疑を認めていません」と語る。では実際に、どのような被害があったのか。警視庁担当記者が続ける。
「難波容疑者と重量挙げ部幹部は、少なくとも2023年12月までの10年間、奨学金制度の対象である学生の保護者に対して、『免除の対象は2年次からである』とした虚偽の案内書などを送付していました。保護者に請求書を送付し、重量挙げ部の口座に振り込ませていたのです。
【関連記事:“1億円いただき男子” 三山凌輝、BE:FIRSTメンバーが「復帰宣言」もファン猛反発…ツアー中に「女性問題3回」の “チーム乱し”】
騙しとった金額は5000万円以上になるといいますが、難波容疑者は専用車や貴金属などの購入代金、遊興費などにほとんど一人で使っていたようです。重量挙げ部については、2024年7月に大学HPで、『重量挙部で発覚した金銭不祥事のお詫びと部員への被害回復に向けての手続き開始について』とし、難波容疑者の更迭とコーチなど部幹部の降格を公表しています」
被害弁済は日本大学がすでに済ませているというが、日大は2018年に起きたアメフト部のタックル問題、2023年には同部で違法薬物使用事件が発覚した。その間には2021年、“日大のドン”とよばれ十数年間も学内で大きな地位を獲得していた田中英壽前理事長による脱税事件が起こるなど、ここ数年は不祥事が続いている。国の助成金も、田中前理事長の事件が発覚した2021年から全額交付しない決定がなされている。
実は、今回の難波容疑者についても、こうした「日大の負の歴史」とは無関係ではないという。取材を進めると、難波容疑者と“日大のドン”の蜜月関係が明らかになってきた。
「難波さんも田中さんと同じく、日大OBから職員になり監督にまでなりあがった人物。難波さんは、2011年からは生物資源科学部教授にもなりました。難波さんは田中さんと違って、朴訥な話し方をする地味な印象の人でした。指導には定評があり、学生重量挙げ界では中位校に過ぎなかった日大を明治、法政、早稲田といった強豪校の一角に押し上げました」(日大関係者)
部を躍進させた傍らで犯行にも手を染めていたようだ。彼の“異変”を、日大関係者が続ける。
「職員から助教授になった2005年ごろから急に金回りがよくなった印象があります。時計も250万円は下らないホワイトゴールドのカルティエ、専用車もBMWの最高級車の7シリーズ、しかも新車で約1500万円する仕様で、驚いたことがあります。運動部監督の仕事とはそこまで“金の生る木”なのかと思ったものです」
コーチなど重量挙げ部幹部の一部は、再三、難波容疑者に不正徴収は止めるように進言していたというが、まったく聞く耳を持たなかったという。保護者らからの申告で不正請求が発覚。日大本部が調査に乗り出しても、重量挙げ部のある世田谷区内の施設に立てこもりし、当初は事情説明をすることすら拒んだという。
そんな難波容疑者もやはり、田中前理事長への忠誠心は強かった。田中前理事長が監督を務めた、相撲部関係者がこう明かすのだ。
「難波さんは、一介の職員から教授にまでなった、まさに“ミニ田中”。そのためか、田中さんへの気の使いようは相当なもので、例えば専用車がBMWに乗るのは田中さんがメルセデス・ベンツを愛用していたから。
それに、相撲部では年に2回、全国大会に合わせて大会のパンフレットを作るんですが、難波さんは必ず個人で広告を出していました。名刺広告ですが、田中さんにはこうした気遣いが一番刺さるし、覚えもめでたくなる。壮行会にも必ず顔を出していましたし、結構な厚さのある祝儀袋も手渡していました」
日大は重量挙げ部OBらに2024年秋から一連の事件の説明と、返金などの大学の対応、さらに、今後の新体制について記した文書を2回、送っているという。不正徴収は陸上部とスケート部でも確認され、それへの対応も求められる。信用の失墜と回復の鼬ごっこは、いつまで続くのか。