社会・政治
「被害者に向き合ってない」ジャニー氏の性加害被害者が声をあげた! 実名で旧ジャニーズ事務所を提訴する理由とは

「ジャニーズ性加害問題被害者の会」の堀田美貴男氏
故ジャニー喜多川氏による性加害問題で、SMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)は、5月30日付で最新の被害補償状況を発表した。
それによると、補償申告をした人は1027人で、連絡が取れない234人を除き、これまで553人に補償金を払ったという。一方で、222人に対しては、補償をおこなわない旨を通知したとしている。
つまり、性被害を受けたことを申告したにもかかわらず、認められなかった被害者もいるのだ。なぜこんなにも多くの被害者が涙を飲んでいるのか。
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被害を申告したのに認められなかった堀田美貴男さん(52)は、あえて名前を公表し、2025年3月にSMILE-UP.を提訴した。
「2023年の秋から冬にかけて、SMILE-UP.社や被害者救済委員会の窓口に被害の申告をおこないましたが、いまだに被害を認定されず、補償も受けていません。
被害申告をして以降、返事や返信もなく長時間待たされ、そのあげく、ひとこと『補償しません』という通知が届いただけです。なので、提訴することにしました。補償を請求できる地位にあることの確認なども求めています」(以下「」内は堀田さん)
もともと堀田さんが性被害にあったのは、1987年、中学3年の15歳のときだという。
「それまでジャニー喜多川さんのことをうわさでは聞いていました。でも、私はジャニーズに入りたくて、履歴書を送っていました。ちょうど男闘呼組のコンサートが地元・広島であったので、私は熱心なジャニーズファンの姉と一緒に行き、広島駅に到着する光GENJIを待っていた。
すると、ジャニーさんを見つけたのです。私はジャニーさんに声をかけ、歩きながら話すことができた。そして、ジャニーズに入りたいと懇願しました。
そうしたらジャニーさんからメモを渡されたので、そこに住所と名前と電話番号を書きました。『帰ったら履歴書を見るから』と言ってくれたのです。
でも、驚いたのが、そこから急に私の体をジャニーさんが触り始めたのです。駅の構内で、窓のある壁に向かって身を寄せてきて、肩から下腹部に手を這わせ、下半身を触ってきました。同時に耳たぶにキスをした後、舐められました。
『ええっ!ああ』と驚きましたよ。こんなところで本当に触ってくるのかと。そして、『広島の子は難しい。地方の子は難しいんだよね』と言われたのです」
堀田氏は驚いて体も動かせなかったという。
「芸能界とは本当にこういう世界なんだ、こんなことが当たり前なんだと思ったのです。野球でいえば、こういうことを乗り越えなければ甲子園には行けないんだなと思いました」
その後、堀田さんは、高校1年生のときに1カ月ほど上京し、テレビ朝日のリハーサル室でおこなわれたジャニーズJr.のレッスンに参加。それから数回レッスンに参加したものの、ジャニー喜多川氏に会うことはできなかった。結局、堀田さんはジャニーズに入ることをあきらめたという。
堀田氏は、高校卒業後、広島県内の大手企業に就職し、現在は管理職を務めている。経済的に困窮しているわけでもない。
「私は、あのときの性被害で心身の不調がありました。フラッシュバックに襲われ、寝られないから酒におぼれて肝臓を悪くしたりした。
いまでもジャニーさんと同じような人を見たら不安になってしまう。結婚もして、子供も大きくなったけれど、それでもやはり被害者だったことを認めてもらいたいのです」
堀田さんの周囲は、ジャニーズを訴えることについて一斉に反対したという。
「会社は驚きましたよ。私が被害者だったことなんか知りませんでしたから。妻は怒っているし、息子もやめてほしいと。それでも、性加害はいけないと、ここで声をあげないといけないと思いました」
裁判は、1回目の口頭弁論が6月2日に東京地裁でおこなわれた。
「代理人弁護士を立てていないので、相手の弁護士4人に対して私は1人でした。最初は証拠を提示しただけで終わりました。今後審理がおこなわれますが、まずは第一歩を踏み出せた。提訴してよかったと痛感しています」
堀田氏は、なぜSMILE-UP.が性被害を認めないのか、理由をこう分析していた。
「SMILE-UP.側は、性加害のあった場所を合宿所などに限定しています。また、まず在籍確認できることが前提で、補償の固定化を図ろうとしています。そこから外れると、被害を受けても認めようとしません。
真摯に丁寧に寄り添って、被害者に向き合うといった文言を繰り返していましたが、その実態はかけ離れていると言わざるを得ません」
堀田氏と同じように、被害を申告しても認められない別の男性もすでにSMILE-UP.を提訴している。その裁判は6月17日に初公判を迎える予定だ。
ジャニー喜多川氏による性加害問題は、解決する日が来るのだろうか──。