社会・政治
小泉農水相、赤字でコメ放出してようやく米価下落傾向も…「輸送の目詰まり」「精米所不足」直面する難路

5月27日、参院農水委員会に登壇した小泉進次郎氏。もみあげに白い毛が混じっていた(写真・長谷川 新)
6月30日、農林水産省はコメ5キログラムあたりの平均価格が、前週より119円値下がりして3801円になったと発表した。これは6月16日から22日に全国約1000店のスーパーの販売データを分析したもので、5週連続の値下がりとなる。
「安価な備蓄米やブレンド米の流通比率が、前週より4ポイント増加して、54%になったことが大きな理由です。
5月末から随意契約で流通している備蓄米は、同期間(6月16〜22日)の平均店頭価格で2077円でした。一方で『銘柄米』と呼ばれるブランド米の価格はほぼ変わっていませんが、小泉農水相は記者団に『下げトレンドに入ってきた』と語りました」(経済担当記者)
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備蓄米の随意契約効果が出てきたとも言えるが、そうしたなか、7月2日に日本経済新聞が報じた記事が物議を醸している。
《入札備蓄米、373億円「黒字」》と題した記事によると、政府が3月から4月にかけておこなった「一般競争入札」で、放出された23年産の備蓄米の売り渡し価格が60kgあたり2万302円となり、政府の買い入れ額1万2829円より7473円高かったことから、大幅な黒字になったという。
「自民党の小野寺五典政務調査会長が『国が儲けてどうすんだ』と指摘していましたが、まさかここまで巨額だとは驚きました」(自民党関係者)
一方、小泉進次郎氏が農林水産大臣に就任してからおこなった「随意契約」はどうだったか。5月からの売り渡しについて、同紙は《44億円の「赤字」》と報じている。
21年産米の当時の買い入れ額は1万2885円。対して売り渡し額は1万80円なので、60kgあたり2805円の赤字だったという。赤字になっても備蓄米を安く放出したことで、米価の値下がりに寄与した形だ。
とはいえ、永田町では「この赤字額だったらありがたい」という声が聞こえてくる。そもそも21年産米は、5年経過すれば家畜用のエサとして格安処分されるもの。その際の買い入れ費用と売り渡し費用の差額を、政府は450億円の「赤字」と見込んでいた。つまり、44億円なら、赤字がおよそ10分の1に圧縮されたということになる。
「一方で、一般競争入札にしても随意契約にしても、課題は多いままです。JA全農は3月と4月に落札した備蓄米およそ30万トンのうち、出荷できたのは7割としています。輸送の目詰まりなどで滞留したのです。
随意契約で販売業者が購入した米も、精米が追いつかないために『8月末までに販売する』という条件を満たすことが難しくなっています。
そのような状況で、随意契約での購入を控える販売業者が増えています。小泉大臣は『余力がある精米所と販売業者をマッチングさせる』としていますが、両社が遠距離だったら輸送も難題です」(前出・経済担当記者)
コメ問題が落ち着くのは、まだまだ先のようだ。