社会・政治
石破首相、“少数与党” 転落でも続投…麻生氏が責任追及もトランプ関税で “石破おろし” の機運高まらず

参院選の開票結果を待つ石破茂首相(写真・JMPA)
7月20日におこなわれた参院選で、石破茂首相は目標としていた自民党と公明党あわせて50議席を獲得できなかった。
自民党は選挙区で27議席、比例代表で12議席の計39議席。公明党は選挙区、比例代表ともに4議席ずつの計8議席。自公で47議席しか獲得できず、非改選自民62議席、公明13議席の計75議席と足しても122議席にとどまり、過半数となる125議席まで3議席不足する結果となった。
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一方の野党は、国民民主党と参政党がともに13議席増と大躍進する結果となった。
選挙結果は確定していなかったものの、自公での過半数が難しくなったという情勢が伝えられるなか、20日夜、NHKの開票速報番組に出演した石破氏は「厳しい情勢であり、謙虚に真摯に受け止めなければならない」と述べた。
さらに、過半数割れでの進退について問われると「比較第1党の責任、そして私どもが国家のために、果たしていかないといけない責任がある」と、続投への意欲を見せた。
ところが、この石破続投に “待った” をかけたのが、麻生太郎自民党最高顧問だ。
政治担当記者が言う。
「20日夜の『選挙ステーション2025』(テレビ朝日系)が、麻生氏が周囲に『続投は認めないと話している』と報じたのです。2009年の麻生政権末期に、農水相として入閣していた石破氏が “麻生おろし” に加担し、麻生氏に首相退陣を要請したということもあり、2人は因縁の関係です。
麻生氏が真っ先に “石破おろし” に動いているのはそうした過去の因縁のほかに、ポスト石破に向け、党内でキャスティングボートを握りたいという思いからでしょう。
今年に入り、麻生氏は高市早苗前経済安全保障担当相と何度も接触を重ねており、高市氏を担ぎあげるのではないかともみられています。
また、野党各党は、石破政権との連立に入らないと明言していて、石破氏としては、衆参とも少数与党としての政権運営になるため、続投するにしてもかなり困難な政権運営になりそうです」
麻生氏が石破続投に異を唱えるなかで、アメリカのトランプ大統領が日本からの輸入品に25%の関税を課すとしている関税交渉の期限が8月1日に迫っている。21日午前、赤澤亮正経済再生担当相は交渉のため、ワシントンに向けて羽田空港を出発。8回めの訪米となる。
同日、午後2時から石破氏は会見を開き、「もっとも重要なことは、国政に停滞を招かないこと。一刻の停滞も許さない」などと語り、首相を続投する意思をあらためて表明した。
さらに、野党との連立については「現時点で連立の枠組みを拡大する考えは持っていない」と否定。そして、森山裕幹事長や木原誠二選対委員長ら党執行部の責任問題としての人事について「現時点で人事について考えを持っているわけではない」と話した。
石破首相続投の一報が伝えられると、Xでは
《責任感じてるなら石破さん続投はないやろ》
《これでもまだ続けられると思ってるのか…》
などと否定的な意見が相次いでいる。自民党ベテラン秘書が言う。
「8月1日の関税の結果がどうなるかを見届けるまで、政局は動きようがないと思います。関税決定後も交渉は続けられるでしょうし、その後はすぐにお盆休みに入りますから、8月いっぱいは自民党も野党も静観する状況になるとみられます。
ただ、8月1日以降は、森山幹事長と木原選対委員長は参院選敗北の責任を取る形で辞任する可能性が高いでしょう。誰も責任を取らないというわけにはいきませんからね。
そして、その後、党内から石破さんではやはりだめだという機運が高まれば、総裁選の可能性が出てくると思います。ただ、自民党の支持率が最悪のなかで、『我こそは』と手をあげて、泥をかぶる候補者がはたしているのかどうか疑問です」
先の総裁選で、石破氏と争った高市早苗氏はどうか。この自民党ベテラン秘書が続ける。
「高市さんは手をあげるかもしれませんが、岸田文雄前首相は最近『多少まずくても石破にやってもらうしかない。高市なんかにするわけにいかない』と周囲に話していますから、麻生さんが高市を推したとしても、高市総裁実現のハードルは高い気がします。
また、小林鷹之元経済安全保障担当相や小泉進次郎農水相では、経験がなさすぎてまともな組閣ができるとは思えませんし、外交問題にも対応できるとは思えません。
いま党内で有力なシナリオは、総裁選になった場合、次の衆院選までの “選挙管理内閣” として、林芳正官房長官をポスト石破として総裁・首相にするのが、無難だという考えです。
石破首相退陣後の首相指名選挙において、現時点では野党も立憲民主党の野田佳彦代表または国民民主党の玉木雄一郎代表のどちらかでまとまるのは困難だと、我々はみています。野党がまとまればまた別の話になり、そのときは、最悪、下野するしかなくなりますが……」
衆参ともに自公政権が少数与党に転落したとはいえ、石破内閣はしばらく続きそうな気配だ。