社会・政治
経済移民に戦争特需…2025年「国策バブル」で日本中が躍る
昭和のバブル期。銀行が融資先をろくに審査せずに、役員の愛人、反社会勢力などに融資をしたおかげで、市民の大切な預金は、銀座の夜のシャンパン・タワーに化けた。
このように、文字通り泡となって消えた資金は銀行に返ってくるはずもない。融資基準に客観性がなければ、多くの貸出金は焦げつき、銀行には損失が発生することとなる。そして、その損失が銀行の資本を上回れば、銀行は倒産してしまう。
しかし、銀行が傾いたからといって、その損失穴埋めのために、何の罪もない一般市民の預金を没収するわけにはいかない。そのため、公的資金を一時注入して救済したのはご存じの通りだ。このような、バブル期の反省から生まれたのが、いまの金融庁(前・金融監督庁)の仕事だといっていい。
金融庁の仕事は融資のブレーキ役であったといえる。
バブル崩壊後、親玉である金融庁から見張られている金融機関の仕事は、さながら半官半民の様相だ。前向きな企画を推進するよりも、融資や投資の焦げつきや不正行為などを排し、過ちを犯さないことが最も重要な仕事となった。ブレーキ役たる金融庁の仕事は、ある意味では秀逸なものだったといえるだろう。
しかし、その深々と踏み下げられたブレーキにより、どの銀行も融資をしなくなったことは問題だ。平成デフレ日本を作り出した原因は何か。そんな議論があれば、この金融庁の監督方針は、必ずその一因として挙げられるだろう。
この監督ルールを規定していたマニュアルこそが「金融検査マニュアル」なのだ。
2017年、このマニュアル廃止が決定した。これは、金融庁がブレーキ役から、銀行融資の背中を押す役に変わることを意味する。金融検査マニュアルの廃止により、各金融機関は大盤振る舞いで、融資を加速することになるはずだ。
今後は、一般的な不動産融資に加えて、借り手の資産内容や資金使途により大きく金利が変わるローンなど、伝統的なローンとはことなる貸し方が主力になるだろう。
たとえば、金融市場動向や借り手の財務内容の変化に合わせて金利や融資条件が変わるなど「仕組み融資」も数多く登場し、融資市場は盛り上がりを見せる可能性がある。いうなれば、金融検査マニュアル廃止は、アベノミクス第一幕の総仕上げだ。
大げさな言い方をすれば、綿密に計画された国策バブルにより日本経済は絶好の立ち上がりで加速し、その後、景気は適度な速さで高揚を続ける。最終的には昭和バブル期の記録も更新することになる。
なぜそういえるのだろうか。もう少し詳しく説明しよう。
アベノミクスの第一幕では金融緩和で銀行融資を加速させることにより、街中にお金を行き渡らせ、株や不動産価格をつり上げることから始まった。そのような投資で利益を上げて蓄財する人が増えたところで、マイナス金利で貯蓄に対するペナルティを科せばどうだろう。大量に集めた現金を金庫に眠らせて罰金を払うわけにもいかず、次なる行き場を探さざるを得ない。
2018年の日本経済は、たとえるならば、銃弾を目一杯に充填したライフル銃が勢い良く火を噴く直前の状態だといえる。
資産バブルにより稼ぎ上げたお金はライフル銃に満充填されている。何かのきっかけで、「撃ち方始め」の号令がかかれば、その資金は、次なる事業や投資など前向きな目的に向けて集中砲火されるはずだ。
2018年現在では、この目論見がうまくいっているとはいいがたい。事業家たちが自信を持って新規投資できる有望な事業が、日本には少ないからだ。
しかし、アベノミクス第二幕として経済移民政策が始まるとすれば、アジア諸国からの買いに続く買いの波に影響され、日本でのビジネスや資産価値は見直されるだろう。日本人のデフレマインドはようやく解消され、再び「消費は美徳」とされる。過去最高の経済循環が生まれるはずだ。
それに加えて、北朝鮮、中国、トランプ政権などの関連で戦争が起き、戦争特需により日本経済が一時的に活性化する可能性もある。日本のビジネスパーソンで戦争を経験した者は誰もいない。そこが重要だ。前例のないイベントは「IT革命」などといわれたときと同様にバブル化しやすい。
──今回は、いままでとは違う。この波は本物だ。
このような正当化がしやすいこと、そして、誰も分からないがゆえに「となりがやればうちも」の連鎖が時間差で発生して、広範囲に伝播していく。これがバブルの構造だ。2025年、日本経済は国策バブルで再加速するだろう。
※
以上、玉川陽介氏の新刊『常勝投資家が予測する日本の未来』(光文社新書)より引用しました。これから起きる変化を予想し、課題に対する解決策を考える、日本への処方箋!