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【世田谷一家殺害事件】犯人は「30代の人物」で捜査振り出しに…「いままでの捜査は何だったのか」関係者も憤慨する裏事情

世田谷一家殺害事件の現場となった宮沢さんの自宅(2025年8月、写真・梅基展央)
7月24日、かつて世田谷区内で焼き肉店を経営していたAさん(60代)のもとに、1本の電話がかかってきた。電話をかけてきたのは警視庁成城警察署の捜査員だった。
「世田谷一家殺害事件の件で電話がかかってきたんです。『これまで犯人の年齢は15歳から20代と言ってきましたが、最新の技術で犯人の年齢が30代だということがわかりました。
なので、改めて当時30代だった人物で心当たりがあるか、お会いして話を聞きたいです』というのです。いきなり犯人像が30代になったので、驚きましたよ」(Aさん)
Aさんが驚くのも無理はなかった。Aさんは2021年、捜査一課の捜査員から連絡をもらい、自身の焼き肉店でアルバイトとして働いていた当時20代の人物が「犯人の可能性がある」として事情を聴かれていたからだ。
「アルバイトの人物には捜査員が接触したようで、シロだということがわかったようでした。それが今回は30代だというでしょ。じゃあ、いままでの捜査は何だったのかと思いましたよ」(同)
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世田谷一家殺害事件とは、2000年12月30日深夜、世田谷区上祖師谷の一戸建てで、会社員の宮沢みきおさん(当時44)、妻の泰子さん(同41)、長女のにいなちゃん(同8)、長男の礼くん(同6)の4人が殺害され、翌日の午前中に発見された事件だ。
泰子さんやにいなちゃんは死後も滅多刺しにされた形跡があるほか、4人を躊躇なく殺害しており、年末に起こった凶悪事件に世間は震撼した。
しかも、犯人は殺害後に長時間現場にとどまり、冷蔵庫にあったアイスクリームやメロンを食べ、家にあったパソコンを操作するなどの異常行動も確認されている。
現場には、犯人の血痕や指紋などのほか、トレーナーやバッグなど遺留品も多く、DNAも特定されている。しかし、25年めを迎える現在も犯人は逮捕されておらず、警視庁が抱える未解決事件のなかでも最重要事件といっていい。
前出のAさんは、成城署でこんなことを聞かれたという。
「成城署では、いままでの情報を全部ひとつずつ潰していったけれど、お手上げ状態だったと。新たに犯人が30代だとわかったので、またひとりひとり再確認することになりそうだというのです。そこで、当時の焼き肉店の客などで気になる人はいませんかと聞かれました」
殺人事件被害者遺族の会である「宙の会」の特別参与で、元成城警察署署長の土田猛氏も憤りを隠せない様子でこう話す。
「犯人が30代だということは、いままで知りませんでした。警視庁には何をいまさら言っているんだと言いたいですね。これで捜査は振り出しに戻ったと言っていい。しかも、振り出しに戻ったということを警視庁が明らかにしなければ、次の情報を得ることはできませんよ」
そのうえで、土田氏は一刻も早くDNA捜査をすべきだと言う。
「犯人が30代だということは、DNAの解析で明らかになったはずです。いままで警視庁は、表向きはDNA捜査をしないと言っていた。法整備が進んでいないからです。
でも、その裏ではDNA捜査を進めていた。だから、今回も30代だとわかった。じつは、10年以上前からDNA解析の結果が明らかになっており、犯人の父親はアジア系民族で、母親のルーツはアドリア海周辺国である可能性が高いとみられてきた。
そうした人物で、当時30代だった人物が現場周辺にいないかと情報を求めたら、もっと具体的な話が集まってくるかもしれない。一刻も早くそうした状況を明らかにすべきです」
事件の犯人像が15歳から20代だったこれまでと一変して、30代だと判明したなら、警視庁はなぜそのことを公表しないのか。警視庁に聞くと「個別の案件については回答を差し控えます」とのことだった。
今年の12月30日には、25年の節目を迎える事件だが、そのときまでに、はたして進展はあるのだろうか。