
会見会場に入ろうとする寺澤有氏らの前に、バリケードを築く青潮会メンバー
7月22日、参政党が神谷宗幣代表らの記者会見から「神奈川新聞」の石橋学記者を排除し、問題となっている。
翌23日、「神奈川新聞」は石橋記者の署名記事で、「受け付けで名刺を渡した記者が着席するなり、複数のスタッフが『事前登録していないと駄目。退席を』と声をかけてきた。登録を求める連絡はなく、(中略)『決まりがある』とうそをつき通した」と批判した。
24日、参政党はホームページで、石橋記者が「本党の街頭演説で大声による誹謗中傷などの妨害行為に関与していたことが確認されています」とし、「こうした経緯から、今回の会見でも混乱が生じるおそれがあると判断し、主催者として入場をお断りしました」と説明。
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これに対し、25日、「神奈川新聞」は「街頭演説の場で記者が取材の一環で行ったのは、『外国人は優遇されている』など事実と異なり外国人差別につながる候補者の主張に対する指摘と反論です」との声明を発表した。
記者クラブメディア(通信社や新聞社、テレビ局など)は、「記者会見から恣意的に記者を排除することは許されない。国民の知る権利の侵害だ」と「神奈川新聞」を支持する報道を続けている。
しかし5年前、「事前登録していない」ことを口実に、記者クラブメディアにより首長の記者会見から排除された私(寺澤)からすれば、またマスゴミが得意のダブルスタンダードを発動しているとしか見えない。
■知事会見の主催者は記者クラブであるわけがない
2020年7月28日、フリーランスの私と三宅勝久氏は、塩田康一鹿児島県知事の就任記者会見を取材するため、鹿児島県庁6階の大会議室に入ろうとした。すると、鹿児島県政記者クラブ青潮会(せいちょうかい 以下、青潮会)のメンバーが入口の前に立ちふさがり、我々を実力で記者会見から排除したのである。
この排除に鹿児島県は一切関与していない。同年7月12日投開票の鹿児島県知事選挙で塩田候補(当時)が初当選し、直後の記者会見で、地元フリーランスの有村眞由美氏の質問に答え、「知事の記者会見でフリーランスが質問してもかまわない」と明言しているからだ。
青潮会は「知事の記者会見の主催者は自分たちである」と言う。そのうえで、私と三宅氏が「青潮会の決まりに従い、事前登録していない」として記者会見から排除した。
しかし、知事の記者会見は鹿児島県の本来業務だ。主催者が青潮会であるわけがない。しかも、記者クラブはサークルなどと同じく法人格がない任意団体。法律上、権利や義務の主体となり得ない。つまり、記者会見の主催権を持つことはできないのだ。
2012年、有村氏は鹿児島県と青潮会と交渉し、伊藤祐一郎知事(当時)の記者会見にフリーランスとして初めて参加(ただし、質問が禁止されたオブザーバー参加)が認められた。その際、青潮会はフリーランスに事前登録を求める決まりを作成している。ところが、この決まりは鹿児島県のホームページをはじめとして、どこにも公表されていない。
事前登録の内容もひどいものである。身分証明書のコピーのほか、メディアが発行する源泉徴収票や契約書などのコピーも添付しなければならない。あえてプライバシーや営業の秘密を侵害する条件をつけて、フリーランスが事前登録、ひいては記者会見への参加を断念するよう仕向けているとみられる。
有村氏が事前登録を申請したときのこと。やむを得ず源泉徴収票のコピーを添付した。ところが、青潮会は「偽造の疑いがある」と言いがかりをつけて、所得税の申告書類のコピーを追加で提出するよう求めた。さすがに有村氏が反発し、所得税の申告書類を持参して青潮会の幹事社の記者に見せることで、事前登録が認められた。
2016年7月28日、三反園訓知事(みたぞのさとし、当時)の就任記者会見で、有村氏は青潮会のメンバーの質問が途絶えたので、オブザーバー参加ではあったものの、質問を試みた。これが青潮会内部で「会見が混乱した」「知事の不興を買った」と問題となり、有村氏を記者会見から排除する動きが出てくる。
4年後の塩田知事の就任記者会見。会場の入口で、有村氏は私と三宅氏と一緒に入場を阻止された。「青潮会の決まりに従わない」などが理由だった。
2023年7月27日、私と三宅氏は、塩田知事の就任記者会見のときに青潮会の幹事社だった共同通信社と同社の社員2人を相手取り、「取材の自由が侵害された」などとして、それぞれ110万円の損害賠償を請求する訴訟を東京地裁に提起した。前述のように、青潮会は法人格がない任意団体であるため、被告とすることができない。
訴訟の審理で、被告の社員が私と三宅氏を「従前、記者クラブをたびたび批判してきた人物」と敵視していたり、有村氏から青潮会の決まりを私と三宅氏へメールするよう依頼されていながら、メールしていなかったりという事実が明らかとなった。なお、後者の事実について、社員は最後まで否定していたが、有村氏とのショートメールのやり取りを証拠で突きつけられ、万事休すだった。
■記者クラブとドップリ癒着した裁判所が出した判決
2025年6月30日、東京地裁(衣斐瑞穂裁判長)は原告の請求を棄却する判決を言い渡した。「青潮会も鹿児島県も『知事の記者会見の主催者は青潮会である』と主張している。だから、事前登録していない原告が記者会見から排除されても違憲違法ではない」という理由だった。青潮会がなんの権利にも基づかず、記者会見から恣意的に私と三宅氏、有村氏を排除したことは十分に立証できたと考えていたので、意外な判決であった(7月10日、控訴)。
このような判決が言い渡されるのも、裁判所内部に記者クラブが設置され、ドップリ癒着しているからだ。数々の冤罪が明らかとなっても、いっこうに裁判所の責任を追及するキャンペーンが始まらないのは、そういうカラクリである。最高裁長官以下の記者会見では、いまだにフリーランスの参加が認められていない。
文・寺澤 有(ジャーナリスト)