社会・政治
石破政権、命運決める総裁選の是非は記名方式の“踏み絵”執行部の日程引き伸ばし、国民の政局への嫌気でしぼむ“おろし”の空気

APECに出席した石破茂首相(写真・JMPA)
自民党が石破茂総裁(首相)を引きずりおろすのか、おろさないのかを決める総裁選。党総裁選挙管理委員会の初会合が8月19日に開かれ、党の国会議員と都道府県連の代表に書面で意思確認する方針を申し合わせた。逢沢一郎選挙管理委員長は、総裁選の前倒しに賛成か、反対かの意思表示については、記名方式となる見通しを示した。
政治部記者が言う。
「総裁選管理委では、自民党の党則6条4項に則って、総裁選をするかどうかを判断することが両院議員総会で確認されています。これは、党所属国会議員295人と各都道府県連の代表47人をあわせた342人のうち、過半数の172人以上が賛成すれば、石破総裁の任期(2027年9月)よりも前に総裁選を実施することになります。記名方式に決まれば、誰が“石破おろし”に賛成したのか、また反対したのかが明確となりますから、いわゆる“踏み絵”ということになります。
石破おろしを主導している旧安倍派、麻生派、旧茂木派らの、100人超の国会議員は初志を貫徹するでしょうから気にしないと思いますが、それ以外の、まだ態度を決めていない議員はかなり悩んでいると聞いています」
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この、記名方式の見通しになることが報じられると、Xでは《保身に走るやつが出て来そう》と指摘する声があがっていた。
こうした指摘について、ある自民党関係者も「政権トップを引きずりおろすというのは、相当な覚悟がいります。賛成しても過半数に達せずに総裁選の前倒しが実現できず、石破総裁続投となった場合、賛成派は徹底的に干されますから。ですから、心のなかでは石破総裁退陣に賛成していても、いざ記名方式の意思表示となると腰が引けてしまう議員も出てくるでしょう」と話す。
政治ジャーナリストの田﨑史郎氏は、8月22日放送の情報ワイド番組『ひるおび』(TBS系)で「賛成する人もたいへんですが、反対したら、『あなたは石破さんの続投を支持するんですね、参院選の責任を取らなくてもいいんですね』という話になってしまう。僕は記名投票には賛成ですが、反対してる人たちもかなり追いつめられますよ」と話した。
しかし、前出の自民党関係者は「総裁選の前倒しに反対する勢力のほうが、優勢になってきた可能性がある」とし、こう続ける。
「8月末に出す予定だった参院選の総括が、首相の外交日程などの関係で9月にずれ込みました。日程引き延ばしは執行部の主導ですから、先延ばしすることで、石破さんの責任論を主張する声が小さくなっていくことに期待しているはずです。自民党では代々、執行部を握っているほうが圧倒的に有利です。実際に、世論は石破さんが辞任する必要がないという声のほうが大きいですし、自民党支持層に限っては、『辞任しなくていい』が圧倒的に多数派です。石破さんが外交日程をこなすうちに、辞任は必要ないという声がさらに大きくなる可能性があります。
そもそも石破さんに退陣を要求しているのは、旧安倍派など、自らの裏金問題で冷や飯を食わされてきた人たちで、国民はそのことをよく分かっている感じがしますし、自民党内の政局には嫌気がさしていると感じます」
また、別の自民党ベテラン秘書は「石破総裁の早期退陣に賛成」という立場でこう話す。
「記名方式になることで、石破おろしに怖気づく議員が出てくるとは思いますが、それは賛成派、反対派のどちら側にも同じようなことが言えます。とにかく石破おろしのスピード感が圧倒的に足りないと思っています。
お盆で選挙区に帰っていることを差し引いても、何をモタモタしているのかと歯がゆい思いです。先生たちはなぜこんなにのんびり構えているのかと思ってしまいます。党を再生させるのならば、もっと早く石破おろしをやらないと。このままでは、執行部の思うままになってしまうのではないかと危惧しています」
現在、参院選の敗因を分析する「総括員会」が、9月頭の発表に向けて報告書を作成中だという。
前出の自民党関係者は「委員長が森山裕幹事長ということもあり、報告書では結局のところ、『石破総裁ひとりの責任ではない。党の体質が国民の理解を得られなかった』といった内容になるのではないかとの憶測も出ています。総裁選前倒しに関する意思確認は、報告書が出てからという予定ですから、そうした内容になった場合、石破おろしは一気にしぼむ可能性もあります」
8月27日に総裁選管理委員会の2回めの会合が開かれる。党則第6条第4項の今後の対応についての協議が続けられるが、国民は自民党内の権力争いをどう見ているのだろうか。