
2018年9月、「日産ブランドアンバサダー就任発表会」に登壇した大坂なおみ(左)
8月26日、日本のスポーツカーの象徴でもあった、日産自動車の「GT-R」が生産を終えることになり、栃木県の工場で最後の1台が完成した。
「日産のすべての技術を積み込んだ車と認知され、世界でも人気モデルになりました。これまでにおよそ4万8000台が生産され、国内では1万7000台あまりを販売したとされています。しかし、開発コストが膨らみ、登場時のもっとも安いモデルが777万円だったのに対し、現行モデルはもっとも安いもので1444万円と、倍近い値段に高騰しています。そうしたことも含め、長い歴史に幕を閉じることとなりました」(モータージャーナリスト)
その歴史は、時代の流行とともにあった。
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「1970年代は『ハコスカ』や『ケンメリ』の愛称で呼ばれた『スカイライン』が、若者の心を鷲づかみに。そのスポーツモデルが『スカイラインGT-R』でした。車のみならず『ケンメリ』の曲も大ヒットしたほどでした。ドラマや映画に登場することもしばしば。最近では南勝久氏原作の漫画『ザ・ファブル』の実写版で、真黒組の海老原組長が所有し、主人公の佐藤アキラに貸し出した車が『スカイライン・ハコスカGT-R』でした。
1980年代から1990年代にかけてモデルチェンジが発表された後、その後継車種として、カルロス・ゴーンCEO(当時)のもとで開発がスタートし、2007年に登場したのが新たな『GT-R』でした。強力なV6ターボエンジンと四輪駆動により、日常での移動だけでなく、サーキットでも高い性能を発揮。その速さは圧倒的でした」(同前)
著名人でも愛好家は多く、日本の女子テニス界の第一人者・大坂なおみもそのひとりだった。
2018年8月、日本女子として初となる、テニスの4大大会のひとつである全米オープンを制した大坂。日本中がわくなか、彼女の知名度は日に日に上がっていき、当然、企業からも注目される存在になっていく。そして、6社めのスポンサーとなったのが、日本を代表する大企業のひとつだった日産自動車だ。
翌月、凱旋帰国となった大坂が、その足で向かったのが、日産との契約を祝うイベント会場だった。
「車好きで知られる大坂さんですが、その理由のひとつは、父・レオナルドさんが昔から日産車に乗っていたことで、スポンサー筋を大いに喜ばせたものでした(笑)。会場内では時間とともに“大坂節”がヒートアップし、好きな車を聞かれると、待ってましたとばかりに『GT-R。速いから』と即答。さらに『白いのがほしい』と、たたみかけていました。しかも、その場でプレゼントが発表されたので、驚きでした」(スポーツ記者)
あれから7年の月日が流れた。大坂は翌年、日本女子としては初となる世界ランク1位を達成し、全米と全豪でそれぞれ2回ずつ優勝した。しかし、その後はたび重なる怪我などから、現在の世界ランクは24位となっている。
日産のイヴァン・エスピノーサ社長兼CEOは「現時点で正確な計画は確定していないが、GT-Rは進化し、再び登場する」と復活を示唆した。GT-Rも大坂も、新たな局面を迎えようとしている。