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【東京23区「火葬料9万円」の衝撃】都内6カ所「区民葬」中止で価格高騰が止まらない! 業界団体はどう考える?

東京博善が運営する四ツ木斎場(写真・共同通信)
東京都内で6カ所の火葬場・斎場を運営する東京博善が、8月1日、2026年3月末で「区民葬」の取扱いを終了すると発表した。東京博善は終了の理由について、《制度設立時の低所得者の負担軽減という本来の趣旨と異なるものになっている》《区民葬を扱える葬儀社が限られており、不公平な制度である》などとしている。
区民葬はもともと低所得者のために始められた制度で、東京23区在住の人なら誰でも利用可能。料金は大人で5万9600円(非課税)となっている。東京博善はこの区民葬をやめ、現在9万円(普通炉)の火葬料金を3000円値下げする。実質2万7400円の値上げになる計算だ。
東京23区内にある火葬場は9カ所。そのうち東京博善が運営するのは「四ツ木、町屋、落合、堀ノ内、代々幡、桐ケ谷」の6カ所。残る3カ所のうち、「瑞江」は東京都、「臨海」は港区など5区が運営する公営施設だが、区民葬は取り扱っていない。残りの「戸田」は民営で、株式会社戸田葬祭場の運営となっている。
「火葬料金は地域によって異なりますが、全国的にはおよそ1万円から2万円程度で、無料のところもあります。横浜市の市営斎場では、市民であれば1万2000円(10歳以上)。千葉市は6000円です。全国的な料金を鑑みても、東京の火葬料は突出して高額です。全国平均を5万円以上も上回りますから」(社会部記者)
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東京博善の火葬料は、2021年、5万9000円から7万5000円になり、2024年6月から9万円となっている。同社は1887年に創業。1985年ごろまでは宗教的・社会的使命から宗教家による運営がおこなわれていたが、その後、運営は広済堂に移る。
広済堂ホールディングスの代表取締役会長を務めるのは、中国人実業家の羅怡文氏だ。火葬料の値上げは、中国資本の参入の過程とあわせるように続いてきた。
都内のほかの葬儀所は、公営の「瑞江」は区民葬と同じ5万9600円。「臨海」は港区など5区の住民であれば4万4000円。民営の「戸田」は8万円となっている。
今回の東京博善の区民葬取扱い中止について、ほかの施設はどう考えるのか。
「うちはそもそも区民葬より火葬料金が低いので、区民葬の取扱いはない。東京博善については、公営と民間の違いもあり、特にお話しする立場にない」(臨海)
東京都が運営する瑞江も「立場が違うので、お話しすることはない」とのことだった。民営の戸田は「取材対応はしていない」と、取材に応じなかった。
本誌が、区民葬を扱う業者が加盟する「東京都葬祭業協同組合」に問い合わせたところ、同組合の鳥居充理事長と、上部組織「全東京葬祭業協同組合連合会」の濵名雅一会長が、連名で見解を文書で示した。
東京博善については《昨今の物価高により葬儀全般にかかる費用が増加している中、公共性が求められる民営火葬場が区民葬儀の取扱いを終了することは誠に遺憾ではありますが、区民葬儀の運営は我々葬儀専門業者を含め、任意の協力によって成り立っているものであり、東京博善の区民葬儀取扱い終了の決定に抗う術はありません》とのこと。
区民葬については、葬儀業者や民営火葬場、霊柩自動車会社は、助成金や補助金を得ておらず、あくまでも任意の協力においてサービスを提供しているという。
そして、東京博善が区民葬からの撤退理由に「区民葬を扱える葬儀社が限られていて不公平」としたことについては、葬儀業には新規参入も多く、料金トラブルが多発している現状で、《取扱い業者を限定せずに区民葬を扱えるようにした場合、例えば区民葬に関する葬儀料金トラブルが発生した時に、誰も責任を取ったり指導をしたりしないことになります》と、取扱い業者を限定する必要性を示す。
そのうえで、《区民葬を行う毎に当連合会員が補助金を頂戴するような仕組みであれば不公平かもしれませんが、(補助金もなく)批判には当たらないと考えております》としている。
東京23区中心部の火葬場はすべて東京博善の運営で、23区の約7割の火葬を寡占状態で担っている。だが、民営火葬場の運営を監理する法律は存在せず、火葬料金を自由に決められる状況にあると説明。
《問題の根源は、東京23区内に公営火葬場が不足している事だと考えます》として、今回の件が《行政が公営火葬サービスを23区全域で提供することを真剣に検討するきっかけになれば良いと思います》としている。
その行政は、東京23区の区長団体「特別区長会」が、東京博善の区民葬撤退に対し、新たな助成制度を創設すると発表した。助成額などは、2026年度予算編成で検討するとしている。
誰しもが、いつかはお世話になる火葬だけに、他人事では済まされない話だ。