社会・政治
自民、参院選の大敗「総括」で石破首相の責任には触れず「解党的出直し」うたうも幹事長“裏技”画策か

石破茂首相(写真・JMPA)
自民党の参議院議員通常選挙総括委員会がまとめた報告書の内容の一部が明らかになり、SNS上では批判の声があがっている。
9月2日朝、NHKは総括委員会の報告書の内容について、《「解党的出直しに取り組み、真の国民政党に生まれ変わる」などと明記する方向で詰めの調整を進めています。》などと報じた。
自民党は2日午後の両院議員総会で報告書の内容を発表する。
自民党関係者が言う。
「報告書では『党再生への誓い』として、最後にこう記しています。《今回、国民から突きつけられた「現状からの脱却」という至上命題を真摯に受け止め、わが党は党を一から作り直す覚悟で解党的出直しに取り組み、再び国民に信頼され負託に応えられる真の国民政党に生まれ変わることをここに誓う。》と」
関連記事:【参院選敗北】自民・森山幹事長「辞任の意向」表明するも後任不在! 石破首相、命運尽きる「9月」の党役員人事
このNHK報道に対して、Xでは自民党がまとめた報告書の「解党的出直し」という部分について、批判的な声が続々と寄せられたのだ。
《自民党が解党的出直しするらしいが 地盤だけ受け継ぎたい怪盗的出直しだろ》
《解党的出直しの前に、トップが解任されるべきだべな》
《自民総括に「解党的出直し」明記も手遅れだ。》
《解党的出直し→解党して出直せ》
《「解党的出直し」へ…本当に生まれ変わるのか。》
総括では、《支持率・投票動向・選挙結果からみる敗戦の主な要因》と《自民党離れを招いたと考えられる経緯と要因》の大きく2つに分けて総括している。
政治部記者が言う。
「前者では、まず石破茂内閣の支持率低迷により党の基礎体力が低下、そして縮んだ自民党支持層を固めきれなかったこと。さらに無党派層への訴求力が不足していたことや、若年層と現役世代、そして一部保守層が他党へ流出したことを挙げています。
後者では、9つの要因を列挙しました。国民の暮らしの厳しい現状に寄り添えなかったこと。物価高対策において野党の主張する減税案に対抗できなかったこと。政治とカネをめぐる不祥事により信頼を喪失したこと。少数与党による政権運営で党の独自性を出せなかったこと。国民の声を聴く活動不足により国民との意識のズレが生じたこと。都議選の敗北と鶴保庸介参院議員の『運のいいことに能登で地震があった』という失言があったこと。若年層・現役世代と一部保守層が他党へ流出したこと。参政党や国民民主党が『日本人ファースト』『手取りを増やす』などのわかりやすいキャッチフレーズで有権者の関心を引きつけたが、国民の鬱積した閉塞感に対して十分な解決策を提示できなかったこと。最後に発信力の弱さとデジタル対応が遅れたことについて言及しました。
そして、参院選の敗因をひとことで言えば『国民に寄り添い、暮らしの安心を確実に届けることができなかったこと』と結論づけています」
そして、党は「生まれ変わる」と宣言した。
総括では、今後の改善策や取り組みについても記してあるが、首をかしげたくなるような取り組みもある。
「今後は『徹底して国民の声に耳を傾ける』としているのですが、そんな重要なこともやっていなかったのでしょうか。自民党は国民の生活のことなど気にもかけていなかったのでしょうか。『国民感覚とのズレを是正することが信頼回復の第一歩だ』ともしています。どれだけズレていたのでしょうか。気になります」(同前)
石破内閣の支持率が低迷したことには触れているが、石破首相個人の責任については触れていない。
前出の自民党関係者が言う。
「党執行部としては、石破首相続投を考えているのだと思います。ただし、2024年の衆院選、2025年の都議選、参院選で大敗した責任は誰かがとらなければなりません。石破首相を守るために、報告書発表の後、森山裕幹事長は辞意を示すとみられます。また、木原誠二選対委員長、鈴木俊一総務会長と小野寺五典政調会長も同調するとみられています。そして、8日に総裁選の前倒しが否決されれば、森山さんは幹事長代行または幹事長代理に就任して、実質的に石破政権の運営に関わるという“裏技”を使うのではないかとの憶測も出始めています」
両院議員総会後、森山幹事長は記者会見をおこない、総会の場で幹事長を退任することを表明し、石破首相に進退を預けると述べたことを明らかにした。
また、「毎日新聞」などの報道では、鈴木俊一総務会長、小野寺五典政調会長、木原誠二選対委員長も、退任する意向を石破首相に伝えたという。党運営の中心となり、石破政権を支える「党四役」全員が辞意を表明することとなった。
2日に開催された両院議員総会の冒頭で、自民党総裁でもある石破首相は「多くの同志を失ったことは、総裁たる私の責任だ。そのことから逃れることは決してできない。私の至らなさを幾重にもおわび申し上げる」と謝罪。そして、今後の自らの対応については「しかるべきときに、きちんとした決断をすることが、私が果たすべき責務」と語ったという。
今後は、自民党総裁選前倒しに賛成か否かの意思確認の手続きに入り、9月8日に集計結果が出る予定だ。今週、石破続投派と石破退陣派との間で暗闘が繰り広げられることになるが、石破首相の決断と進退はどうなるのだろうか。