社会・政治社会・政治

【石破首相「失敗」の研究】どこでなにを間違えたのか…識者2人が指摘する「らしさ」を失った理由とは

社会・政治
記事投稿日:2025.09.05 18:15 最終更新日:2025.09.05 18:21
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
【石破首相「失敗」の研究】どこでなにを間違えたのか…識者2人が指摘する「らしさ」を失った理由とは

石破茂首相(写真・JMPA)

 

 自民党総裁選の前倒しを要求する書面の提出日、9月8日が迫るなか、党内の動きが活発になっている。

 

 9月2日には森山裕幹事長、鈴木俊一総務会長、小野寺五典政調会長、木原誠二選対委員長の党4役が参院選の大敗を総括した自民党の両院議員総会で辞意を表明。

 

 また、副大臣、大臣政務官などからも総裁選の前倒し要求が相次ぐなか、9月5日には麻生派に所属する鈴木馨祐法相が自身のブログで前倒しを要求する意向を明らかにした。閣僚では初めてとなった一方で、平将明デジタル相や阿部俊子文部科学相が前倒しを求めないことを表明するなど、閣内でも意見が分かれている。

 

 

 首相就任から11カ月。石破首相は「続投」の方針を明らかにしているものの、まさか自身の進退をめぐってこのような光景が広がるとは想像もできなかっただろう。

 

 土俵際に追い込まれつつあるとも見える石破首相は、どこで、なにを間違えたのだろうか。ジャーナリストの鈴木哲夫氏と政治アナリストの伊藤惇夫氏に聞いた。

 

 まず鈴木氏、伊藤氏がともに指摘したのは、首相就任直後の2024年10月におこなわれた衆院選だ。

 

「石破首相は『与野党でしっかり議論をしてから解散総選挙で信を問う』と言っていましたが、森山裕幹事長や党の事務方が『政治とカネ、旧統一教会問題などで支持が低い。早く選挙を打った方が傷は浅い』と進言。これを受けて解散しました。しかし、国会での熟議を期待していた国民からは『えっ』と驚きの声があがりました」(鈴木氏)

 

「9月2日の両院議員総会で、『石破らしさというものを失ってしまった』と語りましたが、まさにこれがポイント。首相になった途端に『らしさ』が封印されました。

 

 たとえば本気で『らしさ』を出すなら、衆院選で裏金議員を全員非公認にすればよかった。小泉純一郎元首相は、郵政解散のとき、党内に味方がいなかったので、民営化反対議員を公認せず、刺客を送り、世論や国民を援軍につけました。

 

 石破首相もその手法を取るべきだったのに、きわめて中途半端な対応だったことから国民の信頼を失いました」(伊藤氏)

 

 この石破首相の「らしさ」という発言について、鈴木氏はこう解説する。

 

「石破首相ご本人から聞きましたが、総会で『らしさ』を失ったと語ったのは、自民党議員だけではなく、国民に向けての謝罪だったそうです。今後、石破首相続投ということになれば、国民から求められるのは『らしさ』を出すことでしょう。これだけ追い込まれたのですから、出せるとは思いますが」

 

 次に岐路として指摘されるのは、やはり自民党が衆参両院で少数与党に転落することとなった、7月の参院選挙だった。

 

 鈴木氏は「3月、石破さんは物価高対策として消費税減税が頭にありました。もし参院選で『食品は5%に減税』と表明していたら、消費税減税を公約にしていた野党とは争点がなくなり、結果は違っていたかもしれません」と振り返る。「らしさ」が出せるチャンスを、財務省と財務省寄りの議員の抵抗で逃してしまったという。

 

 故・安倍晋三元首相のように、「チーム安倍」が組めなかったことも、今日のゴタゴタを招いた遠因と言えそうだ。

 

「石破首相は官房長官や副長官など首相官邸の役職に就いたことがありません。いってみれば『官邸経験ゼロ』。首相になるための、本当の意味での準備ができていませんでした。そのため、首相になった途端に何をしていいのかわからなくなったのです。

 

 そうしたことから、ベテランの森山幹事長に頼るほかなかったのですが、森山幹事長は世論より党内の秩序を優先する『永田町の論理で動く人』です。そのため、『石破首相を守る』よりは『自民党政権を守る』という意識が強いのです。石破首相は『羽交い締め』にされ、やりたいことをやらせてもらえなかったのでしょう。ただし、『らしさ』を出せなかったのは石破首相ご本人の責任です」(伊藤氏)

 

 鈴木氏も「安倍政権は菅義偉官房長官、二階俊博幹事長、今井尚哉秘書官などベテランが支えてくれました。石破首相は中谷元防衛大臣、岩屋毅外相、村上誠一郎総務相など閣僚には仲よしを据えたものの、裏で交渉ができるような方はいませんでした」と語る。

 

 そして最後に鈴木氏は、戦後80年談話を見送ったことも失策だったという。

 

「安倍元首相の70年談話は、海外に向けた謝罪メッセージでした。一方で石破首相は、国内問題として『なぜシビリアンコントロール・文民統制がきかなかったのか』『なぜ戦争に突き進んでしまったのか』を総括して国民に向けて語りたいと考えていたはずです。

 

 石破首相は、9月後半の国連総会に出席すると聞いていますが、総裁選の前倒しが決まっても、国連総会には『首相』として出席します。その場で、見送られた80年談話に代わり、『世界平和』『安全保障』についての演説がおこなわれるのではないでしょうか」

 

 はたして、総裁選は前倒しされるのか。9月8日の決定が注目される。

続きを見る
12

今、あなたにおすすめの記事

社会・政治一覧をもっと見る