社会・政治
【自民党総裁選】高市早苗氏「フルスペック型」で有利の見立てに“不穏な影”ささやかれる「党員党友減」問題

高市早苗衆院議員
「前回の総裁選の投票数から、自民党の党員党友は、全国で約108万人とされています。大型選挙の連敗を受けた『解党的出直し』を掲げているだけに、『国会議員だけでなく党員、党友の声を重んじるべきだ』という意見が、旧安倍派や高市早苗前経済安保担当相の周辺以外からも幅広く党内にはありました。
党員投票は約2週間かけて、郵送で各都道府県連に送られて集計されますが、短期間で主張や政策を党員党友に浸透させるのは難しく、やはり、この方式では知名度の高い高市さんや小泉進次郎農水相が圧倒的に有利です」(政治担当記者)
自民党総裁である石破茂首相の退陣表明に伴い、9月22日告示、10月4日投開票となった総裁選。国会議員票と同数の党員党友票295票が割り当てられる、いわゆる「フルスペック型」でおこなわれることが決まった。「フルスペック型」では、もうひとつの方式である「簡易型」に比べて、党員党友の票の反映度が高いとされる。
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石破政権では、事実上の非主流派になっていた旧安倍派議員や高市氏の周辺は、石破首相の退陣表明の前からこの「フルスペック型」での総裁選を強く求めていた。
「前回の総裁選の第1回投票では、高市さんが党員党友票でトップの209票を獲得。石破首相が208票で続きました。議員票を足しても高市さんがトップを占めましたが、過半数を得られなかったため、石破首相と高市氏の決選投票になり、議員票を多く獲得した石破首相が当選した、という経緯です。
今回も第1回投票では決まらず、決選投票にもつれ込むと見られていますが、やはり高市さんが、第1回投票では1位になるだろうと見られています。
前回の総裁選で大失速した小泉農水相が今回も総裁選出馬の意向を見せていますが、石破首相が後継指名でもしない限りは、彼の票数の積み上げには限界があります。
さらに、石破内閣で官房長官を務めた林芳正さんにも、旧岸田派などから相当数が流れると予想されることから、やはり、今回の総裁選で党員党友票のトップが高市氏になるのは揺るがないと思われます」(同前)
「フルスペック型」の総裁選が決まったことで、高市氏の陣営がまずは、初手で有利な展開を勝ち取ったともいえる。しかし、この勝算に不穏な影がちらついているのだという。先の政治担当記者がこう続けた。
「森山裕幹事長は、総裁選の前倒しが決まる前から『総裁選はフルスペック型になる』と断言していたんです。党員党友が投票権を持てば、高市さんの陣営が勢いづくのは明らか。しかし、石破さんの側近である森山さんが、石破さんと関係の悪い高市さんを支持しているわけがありません。森山さんは森山さんで『フルスペック型』で総裁選をおこなうことに何か勝算があるのではないか、とささやかれているんです」
党員党友の獲得数で1位を続ける参議院議員の青山繁晴氏など、高市氏を支持することが予想される議員は、党員党友の勧誘に熱心なことで知られる。前回の総裁選では、高市氏らが勧誘した党員党友は、もちろん高市氏に投票したと思われる。つまり、前回総裁選での高市氏の党員党友票の躍進は、こうした獲得運動が結実した結果なのだが……。
「しかし、高市さんは総裁選で敗北。続く石破内閣では冷遇されました。その後の2回の国政選挙では、国民民主党や参政党など、高市さんの主張に近い政策の政党が大躍進しています。
安倍内閣を支えた岩盤支持層の一角が、こうした新党に支持政党を移動させたと思われていますが、この移動した支持層には、高市さんの獲得した支持層もかぶります。そのため、自民党内でささやかれているのが、高市さんの支持者の一部が、他党支持に転んだことで、2024年分の党費を払っていないのではないか、という推測です。
自民党の党規によれば、党員党友の投票資格は前2年間の党費の完納が条件。だとすれば、党費未納の党員には総裁選への投票資格がなくなるわけですから、推測どおりであれば、前回よりも高市さんが票を落とす可能性が出てくるのです。
森山さんは幹事長で、党の責任者。当然、党員数は把握していますから、高市さんの票が前回よりも大きく目減りすることを、こうした党費未払いのデータを見て分析しているのではないかというわけです」(同前)
水面下での票の読み合いが、いまも続いているのだ――。