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羽田空港・保安検査所で職員が現金窃盗「ファーストクラスには気をつけて」識者が指摘するベテラン客の“油断”

写真はイメージ。記事の内容とは関係ありません(写真・AC)
羽田空港の保安検査所で、乗客から現金を盗んだ疑いで、9月15日に逮捕された、保安検査員の松本龍容疑者。その手口はじつに、簡単なものだった。取材した社会部担当記者が明かす。
「事件があったのは、13日朝6時半ごろです。第1ターミナルの保安検査所を通過した30代の男性が、封筒に入れた現金11万円から9万円がなくなっていることに気がつき、被害を申し立てました。防犯カメラの映像などから松本容疑者の犯行が明確になり、通報を受けた警察官に、空港警察から引き渡されたようです。松本容疑者は犯行を認めていて、8月ごろから70~80回、150万円ほど乗客の金を盗んだと供述しています」
保安所は、旅客機内に危険物などを持ち込ませないため、乗客が手荷物検査や身体検査を受ける最終地点。手荷物はベルトコンベアに乗せ、乗客はX線ゲートに向かうため、どうしても自分の手荷物から目が外れることになる。松本容疑者はそのすきを狙って、トレー内を整理するふりをして、財布などから現金を抜き取っていたと思われる。「じつは、保安検査所で乗客の現金や荷物がなくなる事件は頻繁に起きています」と語るのは、空港に勤務する現役職員だ。
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「荷物と一緒にトレーに乗せたはずの携帯電話がなくなっていても、乗客は検査かなと思い、一瞬、待ってしまうんです。携帯電話は電源を切られてしまうと、位置情報も大まかにしかわかりません。間違えてほかの乗客が持って行ってしまうこともありますが、だいたいは、意図的に持ち去られています。
今回のケースがそうだとはわかりませんが、たとえば、上級クラスのラウンジへ続く保安検査所は、レーンが1本しか稼働していない場合が多く、検査員がひとりのことも多いんです。照明も暗く、ほかの検査員の目がないので、盗もうと思えば乗客のカバンのなかから盗むことだって可能なんです」
同じく「上級クラスでの窃盗には注意が必要だ」というのは、桜美林大学の戸崎肇教授だ。国土交通省の「保安検査に関する有識者会議」などにも出席する戸崎教授は、こう注意喚起する。
「ファーストクラスなどの場合、グレードが高いということで、特別扱いを求める乗客も多く、飛行機に乗り慣れている人が多いので、油断もあるでしょう」
また、今回の事件の背景には警備会社の不備もあるようだ。戸崎教授が続ける。
「そもそも人手不足のところにインバウンドの急増のため、人員の確保がさらに困難となり、その結果、教育が行き届かず、こうした事件につながったのでしょう。実際、伊丹空港では、保安検査で刃物が引っかからず、機内に持ち込まれてしまった例もありました。
身近でできる対策というと、なかなかありませんが、まずは油断せず、身のまわりのものがなくなっていないかに、気をめぐらすしかなさそうです」
安全な空の旅を保障するはずの保安検査所が信じられない場所になっては、たまったものではない。