
自民党新総裁に選出された高市早苗氏(写真・JMPA)
2025年10月4日、自民党の新総裁に高市早苗氏が選出された。党史上初の女性総裁の誕生は日本国内のみならず、世界でも話題を呼んでいる。
一方、高市氏がかねてより否定してきた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係に、あらためて関心が集まっている。
高市氏は9月30日、オリエンタルラジオ・中田敦彦のYouTube番組に出演し、「文鮮明氏の名前を知らない」「旧統一教会の教義を知らない」と発言。2022年の安倍晋三元首相の銃撃事件以降、選挙時の信者動員など自民党と教団の癒着関係が表面化したにもかかわらず、教団のことをよく知らないというのは、あまりに矛盾していると言わざるを得ない。しかも高市氏は、中田の番組で「(自民党と教団の接点を)再調査をしない」と断言した。こうした高市氏の姿勢に対し、国民は疑念の目を向けている。
■富田林家庭教会が祝辞投稿→削除
高市氏が総裁に選出された直後、旧統一教会の富田林家庭教会(大阪府)の公式Xは、教団と関係が深いメディア「世界日報」の公式Xの投稿に対して《高市早苗新総裁おめでとうございます》と返信する形で投稿した。スレッドには教団関係者や信者とみられる複数の祝賀コメントが寄せられたが、同紙の投稿自体、後に削除された。
この件について、筆者は同教会に文書で質問を送付。10月8日、教団の広報部は書面で次のように回答した。
「富田林家庭教会の担当者が、同教会の公式アカウントに個人的な見解を誤って投稿したため、削除したとのことです」
「高市氏が、過去に当法人の教会を訪問した事実はありません」
「当法人は、教団として特定の政治家や政党に対して支持や応援などはいたしません」
■教団関連メディア『世界日報』にたびたび登場
「しんぶん赤旗」(2023年3月19日号)によると、高市氏は1990年代から2001年にかけて「世界日報」から、少なくとも5回、取材(1994年4月24日、1995年1月1日、1996年1月9日、1997年3月17日、2001年1月5・6日)を受けている。2001年1月におこなわれた紙上座談会では、教育や家庭に関する保守的な価値観を語っている。
《義務教育をやっているのに、何でも子どもの自由だ、自主性だ、民主主義だといって、甘やかして教えるべきことも教えないで、やりたい放題にさせるのだったら、税金を使うのはもったいない》
《教育基本法には、地域教育と学校教育についての文言がありますが、これにプラス家庭教育、親としての責務をきちっと入れる必要があります》
《教育勅語には、親孝行、夫婦愛和、勤勉など世界中どこに行っても当たり前の道徳を説いてある》
こうした教育・家庭観は、教団の「家庭中心主義」や「家父長的秩序観」との親和性を指摘されている。
■高市氏はどう答えるか?
記事の内容を踏まえ、筆者は10月10日、高市氏の事務所に文書で取材した。教団と同紙の関係の認識、自身の価値観と教義との共通性について質問したところ、以下の回答を得た。
「当時、私が関わっていた政策立案には関係ないので、(※編集部注:教団の教義や同紙との関係について)調べる必要性を感じませんでした。20年以上前に、当時お世話になっていた(※編集部注:政治評論家の故・)細川隆一郎先生のお誘いでインタビューに応じたことがあり、誠に申し訳なく思っております。以降、旧統一教会とは全く関係を持っていません」
そして驚くべきことに、高市氏は「世界日報の記事も読んでいません」と答えたのだ。実際に同紙によって取材がおこなわれ、記事が掲載されているにもかかわらず、それを読んでいないというのは理解に苦しむところだ。
■奈良の教会に出入り情報も
総裁選と同じ日、教団の問題を20年以上取材してきたジャーナリストの鈴木エイト氏は、Xに《教団施設に出入りしていた人から情報提供があり、奈良の教会で高市氏を何度か見たという》と書き込んだ。投稿は表示回数が100万回を超えるほど、世間から注目された。このことについても高市氏に尋ねたところ、
「(奈良県の世界平和統一家庭連合の教会に行ったことは)ありません」
とのことだった。
教団と関係があるとされるメディアに何度も登場し、教団の価値観と共通する発言をしながら「知らない」ですまされるのか。もし高市氏が新首相に就任すれば、説明責任から逃れられないだろう。
取材/文・深月ユリア