
石破茂首相の後継を選ぶ首班指名で、国会が揺れている。
10月20日には、保守系団体が「高市早苗総裁就任記念国民の集い」を開くと告知している。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が呼びかけ人を務め、当日の代表お祝いスピーチは門田隆将氏が登壇するなど、高市氏と関係が深い人々が集まる予定のようだ。だが、高市氏の首相就任がかなうのか、暗雲が垂れ込め始めている。公明党の連立離脱表明を受け、その行方が混とんとしてきたのだ。
野党がバラバラのままなら、高市内閣は自民単独政権として成立することは可能との算段。しかし現在の196議席(衆院・以下同)では、非常に不安定な政権運営となることは間違いなさそうだ。
当然、自民は公明に代わる連立与党の一角を担う政党を、現在の野党のなかから“引き抜く”ことを狙っているとみられる。では、自民と連立する可能性は各党において、どの程度あるのか。永田町の声を政治部記者が明かす。
「野党第1党で148議席を持つ立憲民主党は、あくまで政権交代を狙う構えです。となれば、35議席の日本維新の会と27議席の国民民主党が、自民との連立パートナーとして浮上するのは自明です。
維新は、安全保障問題などで高市さんに考え方が近い。議席数を自民と足せば、過半数までは2議席となるため、もっとも有力な候補と見られています。『高校授業料無償化法案』が立ち上がった2024年には、自公との3党合意で導入を決めており、自民との協力の実績もあります。維新の藤田文武共同代表も、連立には前向きなようです。
懸念点があるとすれば、公明が連立離脱する原因になった『企業団体献金問題』。公明が高市さんに突きつけたのは『規制』ですが、もともと維新は『禁止』を主張していました。公明よりも、さらに一歩踏み込んでいますから、この問題をどう処理するか、自民と維新の連立体制の可否が問われると思います。
ところがこの連立に反発しているのが、自民の関西の各県連です。関西で選挙に強い維新が自民と連立してしまえば、選挙区を同じくする自民系の議員の立つ瀬がありません。すでに内部で紛糾しているとも聞き、連立がまとまるかは不明瞭です」
では、国民民主についてはどうか。玉木雄一郎代表は、15日に自民の高市総裁と会談。さらに野党党首会談に臨んだ後、「依然として隔たりはある」と、立憲との距離感をあらわにしていたが……。
「自民の副総裁である麻生太郎さんは、国民民主を与党に引き入れることで過半数を確保し、さらに次の総選挙の獲得議席によっては、公明を切って“自国体制”で与党を組むことも、総裁選以前から視野に入れていたとされます。
ところが、国民民主最大の支持団体ともいわれる電機連合すら、国民民主の与党入りに大反対しているとも聞こえます。電機連合から出馬している組織内議員を引き上げることや、また、かねてから麻生さんとたびたび会合を持っていた玉木さん、さらに榛葉賀津也幹事長について、首班指名後に処分を下すと匂わせる幹部すらいます。支持母体からの強い反発があるので、与党入りはまずないと思われていますが……」(同前)
とはいえ、維新も国民も当然、首班指名当日には「どちらにつくのか」決断を迫られるのは間違いない。
「決選投票では、残っていない議員の名前を書けば、無効票になります。国民と維新がそれぞれの代表の名前で投票すれば、無効票という名前で報じられることになる。首班指名投票であえて無効票を出すのは、議員として、有権者の付託を無にする行為です。政治倫理的に問題がある、との見方もあるでしょう。さらに、結果的に自民に利する行動だった、と批判の声があがるのは当然です。各党にとって、難しい選択になるはずです」(同前)
自民が連立先を模索するなか、政権交代に向けての動きが活発化しているのが立憲民主だ。立憲と公明は、もともと政策的に親和性が高いこともあり、首班指名投票では1回めから野田代表か斉藤代表のどちらかに票を集めて共闘する動きもあるという。2党で172議席と自民には届かないが、決選投票になれば、他党との連立の兼ね合いで、自民と同数ほどの“戦略的共闘”も考えられる。
一方、自民の一部からは、総裁選のやり直しを求める声もあがっている。自民党議員がこうつぶやいた。
「いっそ臨時国会の冒頭で、石破首相に解散総選挙をしてもらえばすっきりするのですが……。そうなれば公明の不在が大きく影響するでしょう。総選挙になれば、実感としては、自民はおそらく40議席以上は減るはずです。150議席台まで落ちると、現在の立憲と並んできます。しかも今回、自民から離れた公明票は、国民民主や参政党には向かわず、政策的に近い立憲が多くを吸収するはずです。そうなれば、石破内閣が最後の自民党内閣になる可能性だってありますよ」
「与党」不在でもっとも苦しむのは、国民なのだが……。