
左から、会談に臨む日本維新の会の藤田文武共同代表、吉村洋文大阪府知事、自民党の高市早苗総裁(写真・長谷川 新)
10月21日に召集される臨時国会での首相指名選挙で、自民党の高市早苗総裁が首相に選出される可能性が高まってきた。
10月16日朝、自民党との連立政権を協議中の日本維新の会は、国会内で両院議員総会を開き、自民党との連立協議を執行部に一任することが議決された。
総会に出席した維新関係者が言う。
「自民党との連立政権に入ることによって、維新は消滅するかもしれない、党がなくなるかもしれないが、それでもいいじゃないかという話も出ました。われわれは政策を掲げてやっている以上、自分たちの保身ではなくて、将来的に党がなくなってもいいという思いを述べた発言もありました。それが本来の政治であると。
われわれが掲げている『社会保険料を下げる改革』と『副首都構想』の2本柱ですが、この政策を実現するために連立を組むという意志が確認されました。併せて、首班指名に高市さんの名前を書く以上は、憲法改正も含めて、大局を見て今までできなかったことをわれわれが入ることによって、後押しするという意見も出ました。もう、皆捨て身の覚悟ですね。維新が今やるべきことはこれ(自民党の連立)しかないという感じです。
反対意見は出なかったですね。党としての方向性は執行部に一任ということに決まりました。『今日16日から政策協議が始まり、それが続くなかで日々情報は更新されるので、その都度皆さんには報告できないかもしれない』という断りがあったうえで、そういったことも含めて一任してほしいということで了承されました。日本の政治が大きく変わる転換点になるのではないでしょうか。まずは、とにかく連立を組んで高市首相を誕生させて、自分たちの政策を実現させることを最優先に考える。選挙をどうするのかということは、後で考えることになりそうです。
これから政策協議を始めるということですから、政策のすり合わせや条件闘争など、いろいろと出てくると思いますので、今週末あたりが大きなヤマ場になるのではないでしょうか」
維新の支援者は自民党との連立入りに賛成しているのだろうか。
この関係者は続ける。
「私が知っている支援者は大賛成だと思います。ただ、いろいろな支援者がいらっしゃいますから、なかには反対の方もいらっしゃると思いますが、あくまで政策実現のためです、と訴え続けていくしかないと思っています」
前日の15日は午後4時から立憲民主党、国民民主党、日本維新の会の3党党首会談が行われ、その日の午後6時から、維新の吉村洋文代表と高市氏が会談し、連立協議について話し合われた。これに驚いたのは国民民主党の玉木雄一郎代表だ。
玉木氏は15日夜、自身のYouTube番組で「びっくりしたのはつい数時間前まで(維新の)藤田(文武)共同代表と、野党の統一候補を目指して、結構藤田さんも真剣に議論していただいたなと思っていたんですけど、なんだそれはもう自民党と連立で握ることが決まっていたのか、みたいな感じで。ちょっとなんか、二枚舌みたいな感じで扱われて、ちょっと我々としては残念だなと正直思いました」などと恨み節を言い放った。さらに「維新が加わるなら、われわれが連立に加わる必要もなくなった」などと自民と維新による連立政権が誕生する際には参加しない意向を示したのだった。
維新関係者が続ける。
「玉木さんは絶対そう言うだろうなと思っていましたが、見事に恨み節を発信していましたね。政治に駆け引きがあるのは当たり前のことです。そうした点からみると、玉木さんは政治センスがないのではないでしょうか。自分は総理になれるものだと思っていたんでしょうかね。決断が遅すぎたと思います」
立憲民主党の野田佳彦代表も自民と維新の連立協議については意外だったようで16日朝の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)に出演し、「まさか3党の党首会談の後に吉村さんが上京されてきて、高市さんとそこまで詰めていくというところまでは、予想していませんでした」などと話した。
政治担当記者が言う。
「玉木代表を統一候補とする協議を立憲、国民、維新で進めてきましたが、吉村−高市会談で一気に実現性がなくなりました。玉木氏と野田氏は梯子を外されたわけで、まさに置いてけぼりにされたと言っていいでしょう。両党はこれまでと同様に野党として踏ん張るしかないと思います」
自民党と維新の連立協議について、自民党のベテラン秘書はこう言う。
「高市首相誕生のためには、維新の政策をある程度は飲むしかないでしょう。ただ、副首都構想については、時間がかかると思いますから、そのことを丁寧に維新側に説明しないといけないでしょうね。とにかく早く首相を決めて、国会を動かさないと海外からの信用もなくなりますよ。高市政権が誕生すれば、自民党は下野することなく、与党でいられるわけですから、首班指名で党内から造反する議員は出ないと思っています」
自民党と維新は政策協議がまとまり次第、両党での連立を組むことを発表するとみられている。