
2025年10月4日、自民党新総裁に選出された高市早苗氏(写真・JMPA)
与野党が入り乱れた末の10月21日、高市早苗新内閣が発足した。ただ、高市首相が総裁選時から意欲を見せ、5人ほどと予想されていた女性閣僚の登用は、2人という結果となった。取材した大手紙政治部記者の解説。
「総裁選の高市さん陣営で、推薦人集めに奔走した松島みどりさんと、陣営キャプテンに就いていた小野田紀美さん、ほかに片山さつきさんは確実とされていました。また、元外相の上川陽子さんらの名前があがっていました。過去の内閣での女性閣僚は、第2次岸田文雄第2次改造内閣の5人が最多です。高市さんは組閣に当たり、『みなさんが驚かれる顔ぶれになる』とも話していたので、“6人説”までささやかれました。結局、本人のほか片山さんと小野田さんに落ち着いたわけですが、女性議員は参院に多いので『参院枠』も制約になったようです」
今回の組閣について、「党役員も含め、旧茂木派への偏重が目立つ」という意見も、党内からは一部ささやかれているという。とはいえ全般的には、自民党議員にはおおむね好評だというのだ。
決選投票で小泉進次郎氏に勝利したとはいえ、国会議員票では149票対145票。議員のほぼ半分が高市首相を支持していなかった状況で、高市首相が「挙党一致」を叫んでも、かけ声だけになりかねない。じつは組閣には、総裁を争った小泉氏を支えた、石破茂前首相への高市首相なりの配慮があると、自民党関係者は語る。
「たとえば、赤沢亮生経済産業相です。経済再生担当相として『トランプ交渉』で名をあげたとはいえ、彼は石破前首相の側近中の側近です。本人も閣内に残る気はなかったようですが、“格上げ”での経産相就任といえるでしょう」(自民党関係者)
公明党の連立離脱によって空いたポストも注目された。公明党議員からの登用が長く既定路線だった国土交通相のポストが、16年ぶりに自民党からの起用となった。
「じつはここは、内閣府特命担当相になった黄川田仁志さんで間違いないといわれていたんです。黄川田さんは、高市首相の立候補会見で司会を務め“最側近”として知られるようになりましたが、土木工学で修士号(米メリーランド大)を持ち、後に大阪大学大学院工学研究科の博士後期課程に学んだ、土木の専門家でもあるんです。それが土壇場で、岸田元首相の側近である金子泰之(やすし)さんになった。これは、岸田元首相や林芳正総務相に影響力を持ち、いまも“道路族のドン”とされる、古賀誠自民党元幹事長との対決を避けるためだと噂されていますよ」(同前)
つまり国交相ポストには、高市首相から岸田元首相、林総務相らへの“目くばせ”が感じられるというのだ。タカ派といわれる高市首相だが、挙党一致体制のために“飲み込んだ”ものも多くあったのだろうか。だが、その“しわ寄せ”は、黄川田氏が受けているようだ。
高市首相は、政策協定を結んで与党になった日本維新の会には、内閣府特命担当相を含む3ポストを用意していたとされる。結果として、維新とは閣外協力の形になったことで、宙に浮いたポストのすべてを担うことになったのが、黄川田内閣府特命担当相だったともいえる。前出の政治部記者が言う。
「黄川田さんはこども政策、地方創生など9つの内閣府特命担当相になります。おそらく、過去最多の兼任相です。管掌部局のほとんどは中央合同庁舎8号館にあるので、官僚らは『8号館担当相』と早くもあだ名をつけました。同じ側近でも、小野田さんが任命された経済安全保障担当相は、高市さんが自ら関与するはず。黄川田さんはそれだけ高市さんの信頼が厚いということですが、おそらく、高市さんがあまり詳しくない分野ばかり担わされている感もあり、気の毒な感じはありますね」
早くも各者の思惑が透けて見える内閣だが、挙党一致は達成できるだろうか。