
2025年10月4日、自民党新総裁に選出された高市早苗氏(写真・JMPA)
11月7日の衆院予算委員会で、高市首相は「台湾有事」について、日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」の具体例として、
「戦艦を使って、武力の行使をともなうものであれば、存立危機事態になるうるケースだと考える」
と語った。この答弁を聞いた直後、茂木敏充外相は思わず額に手を当てて困った表情をみせたのだが——。
「『存立危機事態』は、2015年の安倍内閣で成立した『安全保障関連法』に明記されたものです。日本と密接な関係にある他国への武力攻撃により、明らかに日本の存立が脅かされる危険がある場合、限定的ですが、集団的自衛権の行使を可能としました。
しかし、『なにをもって日本の存立が脅かされるのか』について、解釈次第では日中関係に大きな影響を及ぼすため、歴代内閣は具体的な言及を避け、あえて曖昧さを残してきたのです、これは、米国政府もほぼ同じ考えで足並みをそろえています。
高市さんの答弁は、『存立危機事態』の要件を、首相として初めて明らかにしたかたちです。しかし、裏を返せば、高市さんが言及した事態でないなら、日本は集団的自衛権を発動しないことにもなり、政府の “手の内” を中国側に示したともいえます」(政治部記者)
批判を受け、高市首相は10日の衆院予算委員会で「最悪のケースを想定した答弁だった」と述べ、今後は「特定のケース」について国会で明言することは慎むとした。そのうえで、発言は撤回しないとも表明している。
高市首相の答弁は現実的な内容であり、一定の評価もある。とはいえ、政府答弁をほぼ独断でおこなったことに、自民党内では不満も広がっているという。高市首相をよく知る自民党議員の一人は、「さもありなんですよ」と、今後を心配する。
「高市さんは、2016年の総務相当時、政治的な公平性を欠く放送を繰り返したテレビ局に対して、電波停止を命じる可能性を明言しました。また、2023年には、行政文書の捏造問題が起き、『(答弁が信用できないなら)質問をしないでほしい』と突き放すなど、問題発言が多いんです。
野党に攻められて守勢に立つと、撤回や弁明に向かうのではなく、むしろ “さらに踏み込んだ” 発言をする癖がある。それだと、質疑が混乱するだけです。
維新の立ち位置がハッキリしない以上、現状、自民党は少数単独政権に近い。こうした癖を直さないと、高市政権は短命に終わる可能性が高くなると思いますね」
高市首相の台湾有事発言については、8日、中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事がX上で《勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇(ちゅうちょ)もなく切ってやるしかない。覚悟ができているのか》と投稿して波紋を呼ぶなど、すでに国際問題化しつつある。
14日にも、『人民日報』が「日本は戦時中の軍国主義を復活させ、歴史の過ちを繰り返そうとしている」と論評しており、騒動が収まる気配はない。
はたしてこの問題は、どこに着地するのだろうか。
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