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稲川会 故・清田次郎総裁が曹洞宗大本山總持寺に墓建立「このままでは暴力団員のたまり場に」宗門内部から批判噴出

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記事投稿日:2025.11.15 20:03 最終更新日:2025.11.15 20:04
出典元: SmartFLASH
著者: 『FLASH』編集部
稲川会 故・清田次郎総裁が曹洞宗大本山總持寺に墓建立「このままでは暴力団員のたまり場に」宗門内部から批判噴出

神奈川県横浜市にある曹洞宗大本山・總持寺(写真・梅基展央)

 

“超一級寺院”に、ヤクザの大物が葬られた――。

 

神奈川県横浜市にある曹洞宗の大本山・總持寺(そうじじ)の周辺でいま、不穏な情報がささやかれている。その大物とは、2025年4月21日に病死した指定暴力団稲川会の清田次郎総裁(享年84)だ。清田総裁の墓が、格式ある總持寺の境内墓所に新たに建てられたというのだ。

 

 總持寺は、福井県にある永平寺と並ぶ曹洞宗の大本山。全国に約1万4000ある曹洞宗寺院のなかで、最高の格式を有する寺院である。境内には数千の墓石が並ぶ大霊園が整備されており、總持寺のブランドに惹かれて墓を求める有名人も多い。たとえば、俳優の石原裕次郎さんや、プロレスラーのアントニオ猪木さんといった“昭和のスター”も、總持寺に眠る面々だ。

 

 そこに、新たに清田総裁が連なったというのである。

 

「稲川会は六代目山口組、住吉会に次ぐ、国内3番めの勢力を持っています。1992年、清田氏は稲川会の二次団体で、最大勢力の山川一家の二代目総長に就任すると、2010年には稲川会の五代目会長となりました。2019年、会長職を内堀和也氏が引き継ぐと、清田氏は六代目総裁に就任しました」(暴力団に詳しいジャーナリスト)

 

 昨今、暴力団員は暴力団排除条例などの影響もあって、さまざまな経済取引を規制されており、車も買えなければ銀行口座も持てない。そんななか、清田総裁が格式ある大本山に墓を建てたことに疑問の声があがっているという。

 

「清田氏は、ただ總持寺内に墓を建てただけではない。亡くなったときに、總持寺から戒名をつけてもらっている。つまり、清田氏の葬儀には總持寺が関わっている。いまお坊さんの世界では、『ヤクザの葬儀に関わってはいけない』ということが不文律となっているため、『曹洞宗の大本山がこんなことをしていたら社会的によくないのでは』と、内部で問題視する声が上がっています」(曹洞宗関係者)

 

 暴力団の世界において、葬儀とは故人を見送る儀礼であると同時に、「義理かけ」と呼ばれる示威行為の場でもある。とくに、後継の組長などが先代の葬儀を華々しく執りおこなうことは、“ニューリーダー”としての顔見せであり、組織固めの重要な手段として認識される。

 

 また、一般人の葬儀の場合と同じく香典収入は非課税で処理できる。よって過去、暴力団の葬儀では巨額の香典がマネーロンダリング的に動いてきたともいわれており、警察は以前から、寺院や葬儀社などに対して「暴力団の葬儀は手がけないように」と要請してきた流れもある。

 

 そんな状況下でなぜいま、總持寺が清田総裁の葬儀に関わることになったのか。

 

「清田氏の出身組織でもあった山川一家は、總持寺から近い神奈川県川崎市に本部を構えています。清田氏は總持寺に親近感を抱いていたらしく、病床にあった2024年末ごろから、總持寺側に『墓を買いたい』と打診していたそうです」(前出のジャーナリスト)

 

 總持寺の内情を知る曹洞宗僧侶が語る。

 

「清田氏からのアプローチに対し、總持寺の現場レベルの僧侶が深く考えずに話を受けてしまい、墓を売って、清田氏の葬儀に関わる流れになったといわれています。總持寺トップの石附周行(いしづきしゅうこう)貫首は、この話をまったく聞いていなかったそうで、總持寺や曹洞宗内部でも、ある時期まで情報が錯綜していました」

 

 しかし、清田総裁が死去すると、總持寺と稲川会の関係は明瞭な形で表に出てくる。

 

 4月26日に川崎市内でおこなわれた清田総裁の葬儀の場では、マスコミの取材も入るなか、「大雄院慈光徹道居士」という清田総裁の戒名を書いた位牌が組員らによって掲げられ、その位牌には「大本山總持寺」の文字も入っていた。

 

「清田氏につけられた戒名は、『院号居士』という非常に格式が高いもの。戒名料として、数百万円かかる場合もあり、墓地の代金も含めると、清田氏サイドから總持寺へ、1000万円近いお金が渡っている可能性があります」(前出・曹洞宗僧侶)

 

 本誌が總持寺の広報担当者に確認すると、「清田さんは2008年ごろから(總持寺の)檀家です。ただ、お墓を建てていなかったので、今回、新しくお墓を建てられました」と認め、以下のように回答した。

 

「清田さんは、あくまでうちの檀家であるので、家族葬としてこぢんまりと葬儀をやりました。葬儀には導師と脇僧の2人の僧侶が出ました。生前に何をやっていたのかは問いませんよ。亡くなったらみな同じでしょう」

 

 実際に、本誌が總持寺境内の清田総裁の墓を確認すると、その近くには山川一家の歴代幹部の霊を弔う供養塔が建立されていた。さらに、つい最近も組織の現役幹部が参拝に来たことを示す、真新しい卒塔婆(そとうば)も立てられていた。これらの存在は、稲川会と總持寺が、以前から定期的に交流があった可能性を示唆している。

 

 あらためて、本誌は總持寺の広報担当者に、石附氏への相談なしに清田総裁の墓地購入を了承したこと、清田総裁の位牌に總持寺の文字が入っていた理由、山川一家の供養塔が建立された経緯、總持寺が暴力団の葬儀に関わったことに対しての見解を問い合わせると、以下の回答があった。

 

「当山の葬儀に関するご質問ですが、個人情報保護の観点から外部のご質問にはお答えしておりません。なお、いわゆる暴排条例を含め法令を遵守し適正な宗教活動を行っているところです」

 

 ある曹洞宗の高僧が、苦言を呈する。

 

「今後、清田氏の法事などのたびに、總持寺が稲川会関係者の“たまり場”と化すようなことになったらどうするのか。昔からの一般の檀家さんが不安に思う可能性もあり、『ヤクザでも檀家なら一緒』というわけにはいかないだろう。總持寺から一般の小さなお寺を清田氏に紹介し、そこでひっそりと葬儀や墓を手配するというやり方もあったと思う。しかし、現状では暴力団員が堂々と大本山に出入りすることが常態化する可能性が出てきてしまった」

 

 あの世で猪木さんらも困惑しているかも。

 

取材/文・小川寛大(雑誌『宗教問題』編集長)

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