
痴漢の疑いをかけられ警察に取り囲まれたAさん
「この人、痴漢です!」
満員のホームに響き渡るつんざくような女性の声――。その後はAさんにとって「人生が終わった」と感じるほど屈辱の時間だったという。
「自宅に帰ることができると涙が出てきました。“あの日” から1週間はうまく眠れなくて、僕の生活は変わってしまいました」
こう語るのは、横浜市在住で都内に勤務する40代の男性・Aさんだ。Aさんは痴漢冤罪の被害に遭い、目下 “反撃” を企てているという。電車通勤をする男性なら誰しも恐怖を抱いている痴漢冤罪。その被害の実態を本誌に独占告白した。
事件が起きたのは10月29日、横浜駅のことだという。
「午前9時ごろ、JR線の通勤客で一杯の満員電車に乗り込みました。すると、先に乗っていたショートカットでオフィスカジュアル姿の40代の女性が突然ひじで殴打してきたんですよ。蓮舫議員とか高市早苗首相に似ていましたね。
彼女のひじ撃ちは僕の右ひじに当たりました。乗客が増えて、さらに車内がぎゅうぎゅうになったことにイライラしたのか、何なのかわかりません。
とにかく僕は驚きと苛立ちを覚えたので、その女性とは1m以上は空けて立つようにして、乗り換えのために横浜駅で降りました」(Aさん)
これだけであれば、ちょっとした車内トラブル。だが、降車時に事件は起きた。
「ドア付近にいた女性とすれ違う際、僕の靴が女性の靴に軽く触れたそうなんです。そのときは気がつかなかったほどですが。それで思いっきり女性が睨んでくるですよ。さすがに僕もイラッとして、『さっきからひじ打ちをしてきたり何ですか?』と尋ねたのですが、女性は反論してこない。
仕方がないのでその場を立ち去ろうとすると、『この人痴漢です!痴漢が逃げました』と叫び出したんです。まさか自分のことだと思わず『誰に何を言っているんだろう?』という気持ちでした」
これを聞いた乗客の男子大学生がAさんの右肩を掴み、女性が左肩を掴んで、駅員に連行されたという。
「駅員が4、5名くらいわっと集まって改札の前で押さえられました。僕は暴れていもいないし、逃げようともしていないのに、後ろから無理やり羽交い締めのようにしてきた駅員もいました。
その場で何度も『痴漢していない』と訴えても聞く耳を持たず、しばらくして駆けつけてきた警察も、最初から僕を犯人だと決めつけるような態度でした」
起訴された場合、日本の刑事裁判の有罪率は99.9%――。このまま逮捕、勾留されれば “終わり” かもしれない。絶望するAさんだったが、しばらくして “朗報” が届いた。
「多くの警察官が到着し、“大事” になったことに怖気づいたのかもしれません。僕と離れた場所で警察から調べを受けた女性は『本当は痴漢されていない』と、“ウソをついた” ことを認めたそうなんですよ。
安堵とともに怒りの気持ちが湧いてきましたね。しかも、僕の人生が終わりかけたのに警察は『痴漢じゃなくて、蹴ったっていう話だね』と、まるで嘘をついた女性の味方をするような発言までするんですよ。蹴ってすらいませんからね。最初から犯人扱いして、強引に腕を引っ張った駅員も許せないです」
だが、“嘘つき女” はもちろん、駅員からも謝罪はないという。後日、JR東日本に謝罪を求めたものの、「正当な対応だった」と謝罪を拒否されているという。
「警察から解放されるまで50分ほどでしょうか。まさに地獄の時間でした。その足で病院に行くと、女性からのひじ打ちと駅員に強引に押さえつけられた影響で『外傷性頚部症候群、右肘部打撲傷』で全治10日間と診断されました。体は10日間で治っても、精神的なダメージは一生つきまとうと思います」
警察や駅員とのやり取りの一部を録画していたAさんは、自身の “無実” を訴えるため、SNSにその様子を投稿した。
「ただ、知人からはむしろ曲解して『お前、痴漢したらしいな』と連絡がありましたよ。ショックです。そして、あのときの駅を行きかう人たちから “痴漢男” として蔑むような目で見られた光景は一生引きずると思います。
いまは、JRの駅員2名に対して傷害罪で被害届を提出しており、女性に対しては侮辱罪など複数の罪状で告訴状を提出し、受理されたという状況です。刑事事件として進展すれば、民事でも提訴するつもりです。理不尽に痴漢冤罪に巻き込まれたまま、泣き寝入りだけは絶対にしたくないですからね」
本誌がJR東日本に問い合わせたところ、「横浜駅構内での事象について、警察に被害届が受理された事実は把握しており、当社としましては捜査機関による捜査に全面的に協力していく所存です。つきましては、そのような状況下ですので当社からのコメントは差し控えさせていただきます」と事件が起きたことは認めた。
電車を利用する人にとって、誰にでも起こり得る痴漢冤罪。数多くの相談を受けてきたというベリーベスト法律事務所の齊田貴士弁護士は、今回のケースを「珍しい」と語る。
「痴漢冤罪が起きる原因として多いのは、数十万円~数百万円の示談金を目当てに、意図的に嘘をつくケースや、実際に被害に遭ったものの犯人を間違えていたり、偶発的な接触を痴漢だと誤認してしまったというケースが多い印象です。
車内トラブルのはてに嘘をつくというケースは少ないでしょう。痴漢事件は目撃者が少なく、女性側の証言が信用されやすいことが、冤罪が起こる背景です。最近は防犯カメラの普及や男性側の意識向上で減ってはいますが、完全には防げません」
では、どのように自衛すればいいのか。
「具体的には、女性がいるところに立たない、立つ場合は吊り革をしっかり掴んで手を見えるところに置き、背を向けるといいでしょう。さらに、身なりを整え、清潔感を意識することも冤罪予防に重要だと思います。『この人がするはずがない』という判断材料になります。
万が一疑われてしまった場合は、逃げずに『やっていません』と否認し続けることが大事です。逃げる=やましいことがある、と見なされて不利になります。
捜査には協力しつつ、自分の身を守るため、その状況をスマホで録音・録画して証拠を残すことも有効です。さらに、周囲に助けてくれる人がいれば協力を求め、家族や職場にも正直に『誤解されている』と伝えることが重要です。逮捕されると、最大23日間は出社できなくなるので、後々のトラブル回避にもつながります」
Aさんが提出している被害届や告訴状についてはこう解説する。
「告訴状は警察に『ちゃんと捜査してね』と義務を課すもので、提出すれば必ず調べて、その結果も教えてもらえます。
一方、被害届は『こういうことがありましたよ』と知らせるだけで、警察に捜査の義務は生まれません。今回ですと、駅員の違法性ないし可罰性が認められず、処罰されない可能性が高いでしょう。
女性のほうは、侮辱罪だけの場合は数十万円の罰金刑ですね。ほかの罰金刑のない余罪がつけば数カ月の拘禁刑と執行猶予も加えられる可能性もあります」
最後に、冤罪をかけられたAさんは生活の変化を語った。
「冤罪をかけられた日から、1週間は不眠に悩まされ、仕事も手につかず、上の空でした。今までは週5で出社していましたが、電車に乗る精神的負担が大きくて、週2回の出社でリモートワークを増やしています。
電車に乗らないといけないときは人混みを避けて、女性に対して背を向けるように心がけています。それでもまたあるんじゃないかと怖いです。僕みたいに痴漢冤罪を受ける人がいなくなることを願います」
おぞましい話だ――。
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