11月4日午後4時半ごろ、兵庫県加古川市の国道250号の交差点付近で、車約10台が絡む事故が発生。男性1人が死亡、17人が負傷した(写真・共同通信)
全国で自動車による多重衝突事故が相次いでいる。
11月22日、茨城県の常磐道下り線でワゴン車が乗用車に追突、計5台がからむ玉突き事故が発生した。追突された乗用車を運転していた42歳の男性が死亡、同乗していた家族3人も重傷を負った。
以降も、23日に広島県の山陽道上り線で、24日に大阪府の国道170号(大阪外環状線)で、26日には静岡県の国道1号で、同じ日に東京湾アクアライン上り線のトンネル内でも発生するなど、1週間でじつに7件もの多重衝突事故が報道された。
年末を控えたこの時期は、仕事の多忙による疲れなどから多重事故が起きやすくなることが指摘されている。これまで多くの事故を調査してきた交通事故鑑定人の中島博史氏も、「多重衝突事故は夜の帰宅時間帯に、疲労による居眠りや注意力が散漫になってのよそ見などが原因で多くなると推測されます」と言う。
そもそも多重衝突事故は、どのようなメカニズムで発生するのだろうか。
「ひとつは、走行中に起きる場合。ハンドルコントロールを失った車が他車に衝突し、衝突された車がそのはずみで押し出され、さらに他車にぶつかるケースです。走行速度が速いので、横転するなど被害が大きくなる傾向にあります。
もうひとつは、よそ見や居眠りなどで、渋滞の末尾で起きるケースです。普通車同士の衝突では3台くらいしか波及しない事故でも、重量がある大型車両に突っ込まれたら、当たり方によっては10台以上巻き込む大事故になることがあります。
被害の大きさは車の頑丈さとも関わっていて、必ずしも最初に衝突された車の被害が大きいとは限りません。たとえば、トラックがトラックに衝突、衝突されたトラックの前に軽自動車がいて、さらにその前にトラックがいる4台の多重衝突事故の場合、トラックにそれほどの被害がなくても、挟まれた軽自動車は大破することがあります。
最近、室内空間の広いミニバンが人気です。相対的に『室内空間が広いと支柱のない空間が大きくなり、構造強度が低くなる』と心配する方もいますが、大型貨物車に挟まれるような事故になってしまうと、セダンと比べて(車内安全性に)差はないと思います。
衝突で車体が潰れたとき、数センチの差が生死を分けることはあります。セダンなど居室スペースが小さめな車は潰れにくいということはありますが、空間の余裕も少ないため、どちらが安全とは言いづらいのです」(中島氏)
11月13日に埼玉県入間市の圏央道外回りで発生した、軽乗用車に大型トラックが追突、計5台が絡む多重衝突事故は、まさにその典型だ(上写真)。大型トラックに挟まれた軽自動車の男性2人が死亡、ほか男性3人がケガをした。
「圏央道は片側2車線で、道幅は広くありませんが走りやすい高速道路です。今回の事故は、追越し車線で起きていますが、同車線は急いでいる人、焦っている人の比率が高く、走行速度が高めで車間距離が短くなりがちです。
しかも、圏央道は首都高速に流入する車を少なくするため、都心を経由しないで東北自動車道、東名高速道を行き来できるように建設されました。
そのため沿線に物流センターが多く、貨物を積んだ大型車の通行が多いのです。道路の特徴を把握して利用することも予防には大切です」(同)
だが、運転手がどれほど注意していても防げないのが交通事故。中島氏は多重衝突事故に遭うリスクを軽減するため、こうアドバイスする。
「渋滞の末尾につくときは、後続車の様子をよく観察することが大切です。前方で渋滞が発生していたら、まずはハザードランプを点灯させて減速しながら後続車の様子を見ます。
後続車が、渋滞の発生に気づいてハザードランプを点灯させるのを確認できたら末尾につくようにしましょう。
また、トラックの走行が多い時間帯に運転する場合は、できるだけ前後をトラックに挟まれないようにしてください。前方をトラックが走っていると、その先の状況がわかりません。トラックに挟まれたら車線を変更して追い抜かせるなどして、縦列走行を避ける心がけも大切です」
そして気になるのが、多重衝突事故が発生した場合の補償である。事故に関わった車両が多いため、賠償が複雑になることは容易に想像がつく。損害保険会社のベテラン営業マンに聞いた。
「お互いの車が動いていたら過失割合は変わりますが、信号待ちの車に追突したら、100%追突した車の過失になり、全車両の補償を負うことになります。
しかし、被害車両や歩行中に巻き込まれた被害者は、最初に衝突した車両ではなく、自身に追突した車両に補償請求することも可能です。
たとえば、最初に追突した車の運転手が話し合いに応じないなどの理由が考えられます。その場合、補償請求された車両の保険会社が、ご自分の補償分も合わせて衝突した車の保険会社に請求することになります」
まるで “逆玉突き” のようだが、被害者にも加害者にもならないために細心の注意が必要だ。
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