
2025年、総理就任後の高市早苗首相は口角が上がった自然な笑顔に(写真・長谷川 新)
12月17日に閉幕する臨時国会。自民党と日本維新の会の間で、「企業・団体献金規制」と「衆議院の定数削減」をめぐる不協和音が顕著になったことで、両法案が2026年1月の通常国会に“持ち越し”になる可能性が高い。政治担当記者の解説。
「維新がこだわる『定数削減』について、自民党内の反発が強いことがあげられます。もともと、自民の中堅議員すら“ほぼ不可能”とこぼしていた献金規制についても、衆議院政治改革特別委員会で定数削減と並行審議になった時点で、日程的にも今国会の成立は絶望的でした。
維新がこれを飲んだ理由はわかりませんが、わかってやっていたなら、維新側も本音ではやる気がなかったということです。藤田文武共同代表は会見で、『(自民党に)全力で取り組む姿勢が足りない』とすごんで見せていますが、パフォーマンスに過ぎません。自民党も維新がほのめかす連立離脱を“脅し程度”にしか感じていないというのが現状でしょう」
自民党が献金規制に後ろ向きの理由は、全国に3000もあるという政治団体のうち、自民党の地方議員が代表を務めている政治団体では、寄付や政治資金パーティからの資金が“第2の財布”になっていることが大きい。
規制によって党本部や各県連に献金が限定される事態になれば、当然、地方議員の政治団体には資金が回らなくなる。ある自民党議員は本誌の取材に「カネの面倒をみなければ、選挙で動いてくれないだろう。飲める法案ではない」と断言した。
維新も自民党の事情はわかっているだけに、面子だけでも保とうとしたのか、15日の特別委員会後には、採決を求める動議を独自に提出。意見聴取した参考人が退席さえしていない状態での動議提出とあって、委員会は一時、騒然とした。もっとも、“騒ぎ”もそこまで。他議員からも“茶番”といなされて終わる始末だった。
また定数削減についても、じつは5年に1度の国勢調査が2025年にあったばかり。速報値がまとまるのも2026年3月ごろで、かりに今国会で定数削減法案が成立したとしても、区割りの変更など、適用に2年程度はかかる。与党内からすら批判の大合唱が起こるのは確実だった「自動削減条項」までつけて審議を急ぐ理由は何もなかったのだ。
ただ、情けない対応が目立ったのは立憲民主党だった。定数削減が与党協議で「最重要項目」と位置づけた、いわば肝いりの政策だったのは間違いない。当然、与党内の調整がつかないなら内閣不信任案が出てしかるべきだが、野党第1党で単独提出が可能な50議席以上を持つ唯一の政党である立憲民主党は、なぜか14日に、はやばやと提出しないことを決めたのだ。
「補正予算が成立しており、これに賛成した国民民主党と公明党の内閣不信任案への協力は期待薄です。つまり、成立しないので出さないということらしいです。ただ野田佳彦代表は、高市早苗首相とはかつて新進党の同僚議員でもあり、また、松下政経塾では野田代表が塾生としてメンター的な立場だった時期もあります。『(判断するのは)時期尚早』と言っていますが、党内でも、『野田さんは高市さんに親和的すぎる』という不満も出ています。
もっとも、批判を承知で早期に不信任案の不提出を決めたのは、補正予算の成立直前に党内で最高幹部ともいえる議員が集団離党を仕掛けている噂が出ていたこともあります。政党助成金の都合で“年末新党”は師走の年中行事になっていますから、党内議論を避けたのでしょう」(同前)
閣僚経験もある自民党議員は、定数削減について「じつは会期の延長で成立する可能性が、まだ少なからずあった」とも話す。
「高市首相の異常な高支持率で勝機がある自民党と、すでに議員をめぐる金銭疑惑が出始めている維新が、早期の解散総選挙を仕掛けたいのは当然のこと。実効性はともかく、定数削減は、改革派を自任する高市首相にとっても、“身を切る改革”をモットーとする維新にとっても、有権者にアピールしやすい政策ですからね。
とはいえ、物価高対策など、国民生活への対応が不十分なうちに政治的な空白を作ることへの配慮もあります。そこは高市さんと吉村(洋文大阪府知事、日本維新の会代表)さんの腹ひとつでしょう。連立も、ボス同士の交渉で決まった経緯もあります。もし会期延長なら、1月18日に成立になっていたと思いますよ」
結局、交渉は見送られる予定となったわけだが、これが国民のための判断だったのだろうか。
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