社会・政治
トランプ大統領も脱帽「アメリカの母」バーバラ・ブッシュさん逝く
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2018.04.24 07:30 最終更新日:2018.04.24 07:37
「アメリカの母」と異名をとったバーバラ・ブッシュさんが「あの世で待っている」との言葉を残し、冥界に旅立った。享年92。
言わずと知れたジョージ・ブッシュ大統領(41代)の妻であり、同じく大統領(43代)になった息子ジョージ・ブッシュ氏の母親である。去る1月には、結婚生活73周年を祝ったばかりであった。
葬儀にはトランプ大統領は欠席したものの、ファーストレディのメラニア夫人が出席。他にもオバマ前大統領、クリントン元大統領夫妻が顔を揃えた。
際立っていたのは、生涯身辺警備の任に当たっていたシークレット・サービスのエージェントたちが涙していたことである。曰く「これまで警護したVIPの中で最も優しい人だった。我々をいつも家族の一員として扱っていただいた」。
ホームレスや移民の子供たちのための識字教育や市民権の擁護に熱心に取り組んできた。飾らぬ性格で、堂々と「偽物の真珠」を誇らしげに身に着け、テイクアウトのタコスをほおばりながら、愛犬を散歩させるなど、庶民的な雰囲気を醸していた。
そんな元ファーストレディを、24時間体制で守り続けた屈強の男たちが涙ながらに見送るシーンは感動的であった。
夫より1歳年下であったが、体形や立ち居振る舞いから貫禄たっぷりの「姉さん女房」と見られることが多かったバーバラ夫人は、アメリカ国民の間で絶対的な人気を得ていた。
1999年の世論調査では好意的に受け止めている有権者は63%に達し、批判的なアメリカ人はわずか3%に過ぎなかった。
政治的な発言は控えていたが、2016年、フロリダ州知事を務めていた息子ジェブ・ブッシュ氏が大統領選に出馬した際には、選挙資金集めの先頭に立ち、身内から3人目の大統領を生み出すために必死の運動を展開した。「ホワイトハウスを奪還するにはジェブが最適」というのが口癖だった。
残念ながら、その夢はかなわず、共和党候補の座をドナルド・トランプ氏にもっていかれてしまった。よほど悔しかったに違いない。トランプについては「あんな女たらしが国民の支持を得るなんて理解できない」と、珍しく厳しい政治的な発言を吐露したものだ。
後の夫となるジョージ・ブッシュと初めて出会ったときは大学2年生だった。「大学の授業よりジョージに興味がわいた」と告白し、大学を中退、押しかけ女房の座をゲットした。以来、73年間、夫や家族との愛情あふれる家庭生活を続けた。
夫や子供たちに加え、17人の孫、7人のひ孫や愛犬に囲まれ、延命治療を断り、尊厳死を選んだという。トランプ大統領も得意のツイッターで「どう逆立ちしても結婚生活73年にはかなわない」と脱帽の一言。
アメリカでも珍しい幸せな人生だったと思われる。「アメリカの母」のご冥福を祈りたい。(国際政治経済学者 浜田和幸)