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【AI失業の現場】健康サービスのアドバイザー「クビになって半期で100万円喪失」一方で月250万円の外注費は100万円に

社会・政治 記事投稿日:2026.02.25 19:15 最終更新日:2026.02.25 19:17

【AI失業の現場】健康サービスのアドバイザー「クビになって半期で100万円喪失」一方で月250万円の外注費は100万円に

アドバイザーの座をAIに奪われたという角谷リョウ氏

 

 あらゆる疑問や課題をAIにチャットで尋ね、解決する。この作業は、私たちにとってもはや生活の一部となった。AIは人間にとてつもない利便性をもたらしたが、それは同時に、人間から職を奪っていることをも意味する。特に営業、事務、エンジニアなど、PCを用いるホワイトカラーの業務をAIが代替するスピードは、我々の予想をはるかに上回っている。

 

「自分はAI台頭の被害にもあったけど、そのせいで経営者の立場でスタッフも切った。だから心中も複雑なんですが……」

 

 そう切り出し、自身の周辺で起きている「AI失業」の実態を語るのは、睡眠コーチの角谷リョウ氏だ。角谷氏はもともと神戸市役所の地下鉄新線開発部門に勤務していたが、後にトレーナーに転じ、やがて睡眠改善を専門とするようになった。

 

 2018年には共同で企業を対象に健康プログラムの開発などをおこなうLifreeを創業し、テレビ出演や著書も多い。

 

「たとえば著作でも、プロットを立てたら、リサーチをまかせたり、構成の相談をしたりと、壁打ちの相手になってくれる人がいた。本業のコーチングでも、顧客情報などを整理し、どんなアドバイスをすればいいか、サポートしてもらう外部スタッフを8人抱えていたんです」

 

 こう語る角谷氏が大きな転換点と見なすのが、AI推進法が成立した2025年5月末前後。自身も大手ITベンチャーの総合健康サービスのアドバイザーを委託されたが、3カ月ほどで契約打ち切りになったという。

 

「僕のほかに、そこそこ名を知られた管理栄養士、トレーナーと組んでの仕事でした。このトリオで健康に関する質問に答えるという体裁で、質問者に猫のキャラを立てたんです。僕らがアドバイスすると、“がんばるニャン” と答えるみたいな。

 

 ところが、契約は半年ごとの更新と言われたのに、2カ月かそこらで、キャラクターが教える側に回るからと言われ、僕たちはそっくりお役御免となりました。以降、そのサイトを覗いてみたら、健康について見事に語れるニャンコ教授になっていました(笑)」

 

 クライアントには質疑応答もAIによる自問自答でできてしまうとそれとなく示唆され、角谷氏は愕然とした。通常は角谷氏のようなアドバイザーはサイトの内容にお墨つきを与えるために必要だが、それも不要とクライアントは判断したのだろう。

 

「健康サービスのアドバイザーを受託する前から、管理栄養士とトレーナーとはひと月にいっぺんは会う仕事仲間。互いに去年の春ぐらいからAIを使い始め、アドバイザーの仕事で一緒になった際も、『業務が楽になった』と言い合っていたのが、3週間ほどでそんな目にあったんです」

 

 管理栄養士は兼業も許される某一流大学発ベンチャーに在職しており、そこの仲間内でも、よく「AIに自分たちの職務が取って代わられるかも」と語り合うそうだ。

 

 事務作業の自動化、レシピ作成のサポート、オンライン面談後の記録など、AIでできる作業が次第に増えてきた。そろってアドバイザーの仕事を失った際、彼女は思わず角谷氏にこうこぼしたという。

 

「AIが “次に何を言うべきか” まで考えてくれるんですよ。さらに即レスできるという特技まで持っているので、もうお手上げ」

 

 角谷氏が携わる睡眠の分野は、栄養摂取以上に個人差があり、簡単にはAIで代替できないが、それでも「正直、人生で一番危機感を覚えている」と語る。

 

「そのアドバイザー職を解かれ、僕も半期で約100万円の収入を失ったわけですが、それではと自分の足元を見直し、8人の外部スタッフを3人に減らしました。

 

 その5人の能力が劣るわけではなく、AIを駆使すれば、3人で回せるうえにそれ以上のパフォーマンスが望める、と気づいてしまったからなんです。おかげで、それまで月額250万円ほどかけていた外注費が、100万円にまでコストダウンできた」

 

 角谷氏が指導にあたるのは経営トップが多く、彼らからさまざまなAIに関する情報をもたらされるという。だからこそ、「明日は我が身」との危機感が募るらしい。

 

「空前の人手不足と言われながら、ホワイトカラーの採用は確実に減っているのではないでしょうか。AIへの業務代替を前提に、国内外1万人の人員を削減すると公表したパナソニックのように、上場企業で大規模な人減らしをする例はこれから増えていくと思います。

 

 よく聞くのは、パラリーガル(法律事務職員)の解雇ですね。法令や裁判例のリサーチや法律文書のドラフトを書いたりすることは、みんなAIでできちゃいますから」

 

 角谷氏も経営者である以上、法律事務所に最低限の契約料を払い、案件が発生するごとに費用を負担してきたが、簡単な契約書の作成やリーガルチェックなどはAIのおかげで内製化できたという。

 

 雑多な依頼案件が減れば、法律事務所も収入減となり、AIに頼ってでも人減らしをするほかない。働きながら司法書士や行政書士の資格取得を目指す、門戸さえ閉ざされつつあるのだ。

 

取材/文・鈴木隆祐

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出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

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