
長年にわたって統一教会と戦い続けてきたジャーナリスト・鈴木エイト氏
3月1日に告示され、8日投開票の金沢市長選挙。2月13日に会見を開き、「優良企業を県内に誘致し、若者の就職先を確保する」「金沢駅前に複合施設を建設する」と打ち出したのは、無所属で出馬を表明した徳野英治氏だ。人口減少を嘆く徳野氏は、「インパクトを与えないと、人口は戻ってこない」と強く訴えたが……。
実は彼には、もうひとつの顔がある。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の元会長という肩書きだ。
「徳野氏が2025年に出馬の意向を示すと、大きく報じられました。一部では『教会からの組織的な支援を得るのではないか』と危機感が示されましたが、徳野氏は『組織的な支援は受けない』として否定しています。
統一教会をめぐっては、長年の自民党議員らとの深いつながりが問題視されてきました。信者からの高額献金問題も明るみになり、2025年に解散命令請求が出され、3月4日に東京高裁が請求の可否を決定することになっています」(社会部記者)
この状況下での、徳野氏の金沢市長選への出馬の背景には、いったい何があるのか。
「統一教会が、解散命令によって法人として存続し得なくなった際の、なにかしらの生き残り戦略としての意味合いもあるのかもしれません」
こう語るのは、統一教会問題を長く取材してきた、ジャーナリストの鈴木エイト氏だ。教団の内部資料などにも精通した鈴木氏ならではの分析とは。
「徳野氏は金沢市出身で、大学も富山大学。だから、徳野氏は出馬に際して『故郷への恩返しをしたい』と言っていますが、ほかの事情もあるでしょう。金沢には、教団の元信者の大学教授がいて、教団のシンパ的な活動をしているので、動きやすいのかもしれません。
北陸はもともと教団の影響が強い地域で、被害相談を受けたことがあります。統一教会の、組織としての地盤が強いのは間違いありません。
徳野氏は、選挙活動は組織の紐つきではないというようなことを言っていますが、実態はまったく違うだろうと見ています。出馬も、教団の思惑が絡んでいると思ったほうがいいでしょう」(鈴木氏・以下同)
鈴木氏がここまで言うのには理由がある。2023年、文部科学省が統一教会に対して、解散命令を東京地裁に請求したときのことだ。
「解散命令請求の1週間後、徳野氏と、関連団体元会長の太田洪量氏が韓鶴子総裁に呼び出され、『あなたたちは、故郷に帰って神氏族メシアの勝利モデルを作ってほしい』と命を下したというのです。これは、全国支部推進部長に送った通信のなかに書かれています。
直接的に選挙に出ろとは言われていないようですが、故郷で何かしらの活動をしろ、というメッセージです。そこで徳野氏が考えたのが、今回の市長選出馬だったのでしょう。全国支部推進部長は、徳野氏の後援会の口座に浄財を振り込んで支援するよう教団内で呼びかけています」
地方議会に教団関係者を増やすことは、統一教会のなかでひとつの計画として存在していたようだ。韓国検察の捜査の過程で発見された統一教会の内部文書・TM報告書にも、記載があったという。
「報告書には、地方から国政に挑戦させるという計画が書かれており、地方議員を誕生させることを、国家復帰(その国を統一教会に染め上げるという計画)の道のりのひとつとして捉えています。
そのため、これからも市長選などに、教団に近しい人間が出馬してくることがあるかもしれません。実際、TM報告書のなかにも、多くの地方議員の名前が出てきているんです。市長レベルの人間の名前もあります」
一方、徳野氏自身は、TM報告書におもな報告者として登場している。彼の報告には多くの国会議員の名前などが記されており、政界と教団の関係を知り尽くしたキーパーソンでもある。
「一部の政治家は、TM報告書の内容や徳野氏の証言を否定していますが、徳野氏はこれに反論できるはず。しかし、これまでにそうした動きは徳野氏に見られていません。
これは、おそらく徳野氏が、政治家と教団との関係をまだ “命綱” として握っているからだろうと思います。自民党が今回の選挙でこれだけの復権を果たしましたが、それに加えて、自身が地方の首長になることで、何かしら政界との関係を維持しようという考えもあるように見えます」
告示日まであと少し。鈴木氏が金沢の有権者に警鐘を鳴らす。
「気をつけたほうがいいですよ、と言いたい。教団関係者が市長になった場合、市政を曲げられてしまう可能性があります。それに、教団の関係者に市長というポストを与えてしまうことで、地方都市から教団の影響力がどんどん拡大してしまう可能性もありますから」
旧統一教会に、解散命令請求後に総裁から徳野氏への指令があったか質問したところ、「韓総裁と德野氏らとの間の個人的なやり取りについて、把握しておりません」との回答があった。TM報告書に記載されたという「地方から国政に挑戦させるという計画」については、「ご指摘のような事実はありません」との回答。これに続けて、「元世界本部長が韓鶴子総裁への報告用に作成したメモのような文書と思われます」と、同報告書への見解を示した。さらに、こう表している。
「極めて信憑性に欠ける“怪文書”であると認識しています」
徳野氏への選挙支援については「当法人が、教団として特定の政治家(立候補者を含む)や政党に対して支援等を行うことはありません」との回答だった。
果たして、有権者の選択は――。
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