
握手を交わすトランプ大統領とネタニヤフ首相(写真・共同通信)
東西の文化が交差する中東の要衝・イランが突如として火の海になったのは2月28日のことだった。
「アメリカのトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が、ミサイルや爆撃機を使ってイランへの攻撃を開始しました。とくに、首都テヘランに居を構えていた最高指導者・ハメネイ師が自宅を攻撃され亡くなったのは衝撃的です。
トランプ大統領は、一連の攻撃をおこなった理由について、『彼らが先に攻撃しようとしていた』と述べており、予防的な先制攻撃だと主張しています。当然、こうした攻撃は明確な国際法違反ですが、国際社会からの批判に対しアメリカもイスラエルも理屈をこねるどころか“ガン無視”している状況で、多くの批判が集まっています」(全国紙記者)
イラン側も、イスラエルをはじめカタール、ヨルダン、サウジアラビア、オマーン、クウェート、UAEなど中東各地にある米軍基地を主な対象として、ドローンなどを使った反撃をおこなっている。戦火は拡大の一途だが、そもそもなぜ米軍はピンポイントでハメネイ師の自宅を狙えたのか。同師は“暗殺”を恐れて国家幹部にすら居場所を知らせず、地下に潜伏しているとみられていたが――。
中東情勢に詳しい軍事ジャーナリスト・黒井文太郎氏は2つの“情報源”を指摘する。
「そもそも、国家機密に関わることなのではっきりしたことは分からないという前提ですが、ひとつは米国の“AI”でしょうね。衛星写真とか、ドローンの写真とか、あるいは通信の傍受とか、一つ一つはそこまで価値が高くない情報を、AIによってビッグデータとして解析し、標的の情報や行動パターンなどを予測するシステムがあるんです。初歩的なシステムは米国ではCIAが2000年代の対テロ戦争から使っています。ウサマ・ビンラディンを追跡する際にも使われましたね。現在の高度なAIシステムも米軍では約5年前から運用しています」
そしてもう一つは、古典的な“スパイ”だ。
「いわゆるヒューミント(人間を媒介とした諜報活動)と呼ばれる手法ですね。ハメネイ師が殺された直後に遺体の写真も出てきていますから、情報源はハイテクAIだけではなそうです。ハメネイ師の周辺にスパイを送りこむなり、買収するなり、盗聴器を仕掛けるなりしていた可能性が高い。ハメネイ師は監視を逃れるため、携帯電話すら持ち歩かず、大統領ですら連絡がつかないこともありました。そういう人物の行動を把握できたのは、やはりイスラエルによるヒューミント情報が大きかったのでしょう」
国際ジャーナリストの山田敏弘氏もイスラエルの諜報機関が大きな役割を果たしたと分析する。
「イスラエル軍参謀本部にあるスパイ組織『8200部隊』が中心的な役割を果たしたようです。この部隊はハッキングをしたり、電波を傍受したりする部署なのですが、テヘランのハメネイ師が殺害された周辺の監視カメラをすべてハッキングしており、電話や通信の機器がある通信本部もハッキング。周辺の電波は全部、自分たちのコントロール下に置いていたそうです。ハメネイ師本人だけでなく、運転手や秘書、来訪者もすべて確認していたのではないでしょうか」
すでにありとあらゆる情報が筒抜けのハメネイ師に、逃げ場はなかったというわけだ――。
気になるのは今後のイランの出方だ。周辺基地への反撃はできたとしても、当然イラン軍には米国本土を攻撃する能力などない。だが“市民”に紛れてテロを起こすことは可能。山田氏は「日本も対象になりうる」と警鐘を鳴らす。
「テロの可能性は高まっていますね。すでにFBIは米国内でテロの警戒をおこなっています。米国の同盟国やG7などの先進国でテロを起こす可能性もあるでしょう。日本の米国大使館、イスラエル大使館も“対象”になりうる。1991年には筑波大学内で助教授が刺殺される『悪魔の詩』事件も起きているわけですから」
今回の攻撃を引き起こした“張本人”を狙う可能性もある。
「イラン革命防衛隊はトランプ暗殺計画を練っています。実際、2024年には米国内でパキスタン人が5000ドルの対価をもらって暗殺を企てたとして逮捕されています。このパキスタン人は、革命防衛隊の幹部に雇われていたというわけです」
黒井氏も、イランがテロを実行する可能性はあるという。
「イランには革命防衛隊の特殊工作機関、コッズ部隊というものがあります。同部隊は海外で秘密活動、特殊工作をやる専門機関であり、テロやトランプ暗殺を実行することは考えられます。
実際、1980年代や1990年代は世界中で暗躍し、テロを起こしていました。特徴的なのは、破壊工作をおこない正々堂々と“我々がやった”と宣言するタイプのテロではなく、爆弾テロや個別の暗殺を外国人グループにやらせて自分たちは“知らんぷり”するという、ある種“犯罪”に近いタイプのテロが多いということです。ただ、近年は中東の近隣諸国への工作活動に力をいれており、地球の反対側でテロを起こせるようなネットワークがあるかどうかは疑わしいですね。
また、コッズ部隊については、現場が暴走して勝手にテロを起こすというケースがほとんどありません。意外と指揮命令系統がしっかりしています。だからもしテロが起きれば、それはイランの国家的意思によるものということになるでしょう。現在のイランは、国際世論においてトランプの暴走の“被害者”という立場です。その立場を危うくするような行動を早々に取るかどうかは微妙なところですが……」
いずれにせよ、報復の連鎖だけは止めてほしいものだ。
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