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ホルムズ海峡閉鎖で危機迎える“令和のオイルショック”交通・物流、電力に食品、医療まで…日本を襲う深刻影響

社会・政治 記事投稿日:2026.03.21 06:00 最終更新日:2026.03.21 06:00

ホルムズ海峡閉鎖で危機迎える“令和のオイルショック”交通・物流、電力に食品、医療まで…日本を襲う深刻影響

3月19日(現地時間)、日米首脳会談をおこなった高市早苗首相とトランプ米大統領(写真・共同通信)

 

 3月19日(現地時間)、訪米した高市早苗首相がトランプ大統領と首脳会談をおこなった。高市首相は「世界中に平和と繁栄をもたらせるのは、ドナルドだけだと思っています」と発言してトランプ大統領を喜ばせたが、イランによる事実上のホルムズ海峡封鎖は変わらず、中東からの原油輸入がストップしていることで、日本国民の生活は危機に瀕している。

 

 政府は石油の民間備蓄の放出と政府備蓄の放出を決定。3月19日からは、高騰するレギュラーガソリンを1リットル170円に抑えるために補助金も出され、米アラスカ州からの原油調達も視野に入れるが、経済担当記者は「アラスカからの原油輸入は数年先です。さらに、戦争が終結してホルムズ海峡の航行が正常になったとしても、日本に原油が届くまで3週間ほどかかります」と、影響は長期に及ぶと指摘する。

 

「全国各地で供給不安がある。公共交通が止まるようなことがあっては、とんでもないことになる」

 

 3月18日、日本バス協会の清水一郎会長が理事会で、軽油不足でバスが運行できなくなることを危惧する発言をしたと、3月19日付の日本経済新聞が報じている。

 

 同様の声はトラック業界からも聞こえてくる。SNSで物流の現状を発信している「野々市運輸機工株式会社」(石川県金沢市)の代表取締役・吉田章氏は「大手運送会社は、自社の敷地内に軽油の貯蔵タンクを持っていますが、軽油を注文しても『配送がいつになるかわからない』『注文の半分しか届けられない』といわれることが多くなっています。そのため、一般車両と同じように市中のガソリンスタンドで給油することもあるほどです」という。

 

 ヨーロッパ各国は乗用車でもディーゼル車が多く、工業向けにも軽油の需要は旺盛だ。そのため「世界で軽油の取り合い」が始まっているという。

 

 また、トラックやバスなどのディーゼル車から排出されるガスを浄化するために必要な、高品位尿素水の「AdBlue(アドブルー)」の不足も心配されている。

 

 アドブルーは尿素と純水から作られるが、尿素は石炭や液化天然ガス(LNG)から生成されたアンモニアに二酸化炭素を加えることで精製される。LNGの輸入が滞れば、製品化できない恐れがあるのだ。

 

「いまは、ほとんどのトラックがアドブルーを使用していますが、メーカーから『ホルムズ海峡の閉鎖により、尿素原料の供給・価格に影響が出始めている。カタールLNGが生産中止を発表、“尿素ショック”の可能性がある』と知らせがありました。中東産のLNGが止まったことで、世界的に東南アジアやオーストラリア産LNGの争奪戦が始まっているようです。

 

 アドブルーが切れた状態でエンジンを切ると、次にエンジンをかけようとしても、かかりません。ディーラーに対応をお願いすることになり、業務に支障が出ます」(吉田氏)

 

 物流停滞の危機はすぐそこにある。第一生命経済研究所経済調査部の首席エコノミスト・永濱利廣氏も「最悪の事態になれば」と前置きしたうえで「航空機燃料、船舶燃料が逼迫する事態も想定されます」と指摘する。

 

 さらに「中東産原油の輸入が停止することで、もっとも心配されるのは電気です」という。

 

「石炭やLNGを使う火力発電量が十分でなくなれば、電力不足から、2011年の東日本大震災のときのように、計画停電や電車の間引き運転などが必要になるかもしれません」(永濱氏))

 

 嗜好品にも影響が出始めているようだ。

 

 3月12日には、人気のポテトチップス「わさビーフ」を販売する山芳製菓が、同社のウェブサイトに《ホルムズ海峡が封鎖され、弊社が製造工程で使用している重油の調達が極めて困難な状況となっております》として、工場の操業を一時停止、一部製品の供給に遅延または出荷停止が発生する可能性があると発表した。

 

「ポテトを揚げるときの油を温めるために、重油を使っています。ほかのメーカーはガスなども併用しているのですが、同社は重油への依存が高かったようです」(経済担当記者)

 

 報道以降、同社は混乱を極めているようだ。本誌の取材にも「小規模の企業で社員数が少ないため、対応させていただくことが困難な状況となっております」と回答した。

 

 また、ポテトチップスの包装袋には、品質保持のためプラスチックにアルミを塗布した「アルミ蒸着フィルム」が使用されている。日本はアルミの国内消費の約25%を中東からの輸入に頼っている。アルミ不足になると、他社のポテトチップスにも影響が出そうだ。

 

 大手メーカーも「いまのところ影響が出ているとは聞いておりませんが、今後、状況が長引けば可能性は否定できません」(湖池屋)、「現時点では影響が確認できておりませんが、引き続き資源情報の収集をおこなっていきます」(カルビー)と、現状の混乱はないとしつつも、不測の事態を視野に入れている。

 

 同じくアルミを使っている、缶ビールはどうだろうか。キリンビールは「現時点でお伝えできる影響はとくにありませんが、原油価格の上昇は認識しております。原油価格はすべてのサプライチェーンの上流にあたりますので、注視しております」と不安を隠さない。

 

 スーパーマーケットからは「昭和のように、客が鍋を持って豆腐を買いに来ることになるかもしれない」という声が聞こえる。石油由来の容器や包装フィルムが作れなくなるというのだ。

 

 日本豆腐協会の関係者は「いまのところ容器不足の情報はありませんが、中東から原油が運ばれず、国内備蓄を放出している以上は、個人的な見方ですが、容器不足が起きる可能性はあると思います。想像ですが、早ければ1カ月後には不足するのではないでしょうか」とみる。

 

 夏に向けて売り上げを伸ばすペットボトル飲料への影響も深刻だ。ペットボトルには、原油から精製されたナフサを熱分解して作られるエチレンが使われている。

 

 このナフサは60%を輸入に頼り、うち70%が中東産といわれるが、ホルムズ海峡の通行ができなくなってから輸入ができず、大手化学メーカーは減産を余儀なくされ、価格上昇につながっている。

 

「すでに食品メーカーや自動車産業で、生産抑制の影響が出ていますから、今後はペットボトル飲料にも値上げの影響が出る可能性はあります。価格が上がる程度ならまだしも、最悪の事態を想定すれば、(世界各国によるナフサの)買い占めが起きる可能性もゼロではありません」と永濱氏は話す。

 

「過度な不安は小売り現場での混乱を招くため、禁物です」と永濱氏は消費者に注意喚起するが、ナフサが国内流通しなくなり、コンビニからペットボトル飲料が消える日がこないとも限らないのだ。

 

 医療現場への影響も甚大なようだ。いとう王子神谷内科外科クリニックの伊藤博道院長は、こう話す。

 

「3月19日、点滴(バッグ)と注射針をつなぐチューブ『輸液セット』の大手メーカーさんから『近いうちに価格が1.5倍から2倍、上がります。在庫もかなり少なくなっています』というお知らせがありました。

 

 ほかにも、治療時に使うグローブが不足しています。1日に150〜200セットを使いますが、いつも購入に利用しているインターネットサイトでは、すでに買いにくい状況になっています。今後、いつになったら正常に注文できるようになるのか。本当に不安です」

 

 ガソリンだけではなく、電力や食品、医療などあらゆる分野に影響を与えるホルムズ海峡閉鎖。資源が枯渇すれば日本が“飢餓列島”と化す最悪の状況にもなりかねない。“令和のオイルショック”を回避するため、一刻も早い戦争終結が待たれる。

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出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

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