
赤沢亮正経産相(写真・長谷川 新)
第2次高市内閣でわが国の経済政策の司令塔を務める赤沢亮正経済産業相。原子力経済被害担当、GX実行推進担当、産業競争力担当、内閣府特命担当(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)の各大臣を兼務し、3月30日、新たに「重要物資安定確保担当大臣」の肩書きも加わった。緊迫するイラン情勢を受け、ホルムズ海峡封鎖による供給不足が懸念される石油関連製品の流通状況を把握するため、高市首相が任命したという。
「赤沢大臣の名前が世間に知れ渡ったのは、2025年の『日米関税交渉』です。
当時、石破茂内閣で経済再生担当相だった赤沢大臣はベッセント財務相、ラトニック商務長官との交渉を担いました。
『アポなし』で毎週のように渡米。その回数は10回にもなり国民から健康を心配する声があがったほどです。赤沢大臣は記者団に『羽田空港離陸時点で日程が確定していないことがほとんどだが、押しかけて会えなかったことはない』と胸を張っていました。
本人によると、アメリカ側から『タフネゴシエーター(強力な交渉人)』と呼ばれたそうです。日米関税交渉はトランプ政権を相手に、自動車関税の引き下げ、最大5500億ドル(約80兆円)の対米投資など着地点を見出しました」(政治担当記者)
石破前首相の「側近中の側近」を自任する赤沢大臣は、どんな人物なのか。
「東京大学法学部在学中、母方の祖父で自治大臣を務めた赤沢正道氏の養子になりました。
卒業後、運輸省(現・国土交通省)に入省。20年間の官僚生活を経て、2005年の衆院選で鳥取2区から出馬、初当選しています。ちなみに石破前首相の選挙区は鳥取1区です。
赤沢さんは選挙が強いことで知られています。民主党政権が誕生した2009年の衆院選で自民党は惨敗しましたが、赤沢さんは626票という超僅差で民主党候補に勝利、当選しました。日頃から夫人が地元をまわり、選挙になると赤沢さんと一緒に街頭に立って支持を訴えたことなどが奏功したようです。
ただ、親分の石破さんは過去の離党などの経緯もあり、党内では長く非主流派でした。そのため、赤沢さん本人も認めていますが『ずっと冷や飯食いだった』のです」(自民党関係者)
それでも、政治家として研鑽を積んできたと赤沢氏。その政治手腕を高く評価する声は多く、長い官僚生活の経験も強みになっているようだ。政治ジャーナリスト・青山和弘氏はこう話す。
「赤沢さんは石破さんの側近ですから、これまで自民党総裁選などで対峙してきた高市政権になれば人事で干されるのは仕方がないところでした。
赤沢さんもそう思っていたはずですが、ラトニック商務長官に深く食い込んでいることなどから、高市首相は重要閣僚として処遇しました。赤沢さんはそれを恩義に感じているようです。官僚は『自分を認めてくれた上司』のために尽くしますから、赤沢さんも持ち前の『官僚気質』を発揮して仕事をしているのです。
高市首相にとっても、閣内に『動ける大臣が少ない』という事情があります。赤沢さんの兼任のなかには、本来であれば経済安全保障担当相の小野田紀美さんが担当するものもありますが、高市首相にとってはやはり、赤沢さんの方が頼りになるのでしょう」
政治アナリストの伊藤惇夫氏も同様にその“官僚体質”を指摘する。
「日米関税交渉がはじまった当初は交渉力に疑問符もつきましたが、『上司の指示には100%の努力で応える』という官僚特有の習性で乗り切りました。赤沢氏は体の芯まで“官僚”が染み込んでいるんです」
だが、高市首相が“全幅の信頼”を寄せているかというと、そうでもないようだ。
「赤沢氏に『私に恥をかかせないように』と言ったと伝わっていますが、あえて難しい仕事を押し付けている感じですね。うまくいかなかったら赤沢氏のせいにするのでしょう。『忠臣、二君に仕えず』ということで、やはり高市首相は赤沢氏を石破氏側近というふうに見ているのでしょう」(伊藤氏)
記者会見でペットボトルのお茶が素早く出てきたときに『早(はえ)ーし』と笑った様子がネットを中心に話題となると、そのシーンをテレビの情報番組に出演したときに再現するなど、明るい性格でもある赤沢氏。しかし、部下には当たりがきつく、「パワハラ」と指摘されることもあるという。
「有能な上司に“あるある”なんですが、すべての情報が自分の手元に来ていないと不機嫌になるそうで、部下への指示が厳しくなることもあると聞いています。
2024年の自民党総裁選では、石破陣営の選対本部長を岩屋毅さんが務め、赤沢さんはNo.2の事務総長でした。
そのため記者たちは世論調査の結果を岩屋さんに先に報告したんです。それを知った赤沢さんが『なんで岩屋が先なんだ』と激怒したエピソードは有名です」(青山氏)
2024年に「裏金疑惑」で自民党の派閥が次々に解散。石破グループの「水月会」も解散したが、所属議員からは「赤沢さんの強引さが軋轢を生んで、すでに分裂状態だった」という声も聞こえてくる。
エネルギー安全保障を牽引する重要閣僚として原油などの物資確保にまい進する赤沢氏。だが、厳しい性格ゆえ、足元を掬われないよう注視が必要だ。
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